Jim Croce(1943 - 1973)
Alabama Rain
Careful Man
Dreamin' Again
ジム クロウチのことは以前にも書いたことがあるが、詩はごく一部しか紹介しなかった。ジムの歌は二種類にわけられる。ひとつは気の弱い男が恋の思い出にふけるもの。めそめそした泣きごとのようなもので、本当にあった恋なのかどうかも疑わしい。もうひとつは、ならず者やら荒っぽいトラックの運転手への賛歌。なれるはずもないトリックスターにあこがれた歌だ。
しかしジムの歌には不思議な魅力がある。恋人にふられた悲しみを歌っても、どこか広びろとした大地を思わせるものがある。そして暖かい。荒野を走る大型トラックを、大海原を往く船にみたててあこがれたというジム。閉塞感を感じさせないのはそのためかもしれない。
失恋した男が雨に濡れてという、文字通り湿めっぽい歌のはずだが、とてもそうは聞こえない。Mid-July, Country Sunday, Dusty haze、そしてAlabama Rainの語感が魔法をかけているのだ。そして、Lazy, days, July, country, Sunday, dusty,highwayと繰り返されるyの音が効果をあげている。マグノリアの花、柳の葉ずれ、降りしきる雨のなんとやさしいことか。
恋が破綻したのはたがいに幼なかったためかもしれない。でも、未熟だからといって恋することをとめられようか。僕たちは誰しも、なにかひとつには決めつけられない人生を生きている。ジムの詩が共感を呼ぶのは、こんなところにあるのかもしれない。
Lazy days in mid-July
Country Sunday mornin's
Dusty haze on summer highways
Sweet magnolia callin'
七月のけだるい日々
田舎町の日曜の朝
砂ぼこり舞うハイウエイ
マグノリアの花が揺れる
Chorus:
But now and then I find myself
Thinkin' of the days
That (when) we were walking in
The Alabama rain
これからずっと
僕は忘れることはないだろう
君と一緒に歩いた日々
アラバマのやさしい雨の中を
Drive-in movies, Friday nights
Drinkin' beer and laughin'
Somehow things were always right
I just don't know what happened
金曜の夜には映画を見たね
ビールを手にとても楽しかった
なにもかもが素晴しく思えた
だけど僕は何もわかっていなかったんだ
Chorus
これからずっと
僕は忘れることはないだろう
君と一緒に歩いたことを
アラバマのやさしい雨に濡れて
We were only kids
But then I've never heard it said
That kids can't fall in love
And feel the same
I can still remember the first time
I told you "I love you"
僕たちは子供のように無邪気だった
だけど子供だって
恋におちることはあるのだ
二人の心が重なることだって
今もあの時のことが目に浮かぶ
愛していると初めて言ったあの日
On a dusty mid-July
Country summer's evenin's
Weepin' willows sang its lullaby
And shared our secret
乾いた風の七月
田舎町の夏の宵
柳の葉ずれは子守歌のように
僕たちの秘密を見守っていた
Chorus
Walking in the Alabama rain
これからずっと
僕は忘れることはないだろう
君と一緒に歩いたことを
アラバマのやさしい雨の中を
アラバマのやさしい雨に濡れて
Alabama Rain 訳詩 庄野 健
一転して、Careful Manはならず者の歌だ。Trouble with a capital "T" このひたいのTの字が見えないのかといったところだろうか。悪事のために生まれてきたような強い男。彼がcarefulなのはドジを踏まないためだ。ジムがあこがれつづけたトリックスターの姿だが、本当のジムは夢の中でさえ銃など撃ったことはなかったに違いない。鳴かず飛ばずの長い下積みを送ったジム。Carefulで、wiserで、そしてolderだったら、そんな暮らしにはさっさと見切りをつけていただろう。
I don't gamble, I don't fight
I don't be hangin' in the bars at night
Yeah I used to be a fighter but
Now I am a wiser man
俺は賭けごとなんかしない、喧嘩もしない
皆が眠っている間につるされないように
そうとも、以前の俺は喧嘩早かったさ
でも今はまっとうな人間さ
I don't drink much, I don't smoke
I don't be hardly mess around with no dope
Yeah I used to be a problem but
Now I am a careful man
俺は飲んだくれたりしない、煙草も吸わない
もちろんヤクにも手をださない
そうとも、以前の俺はヤクザだったさ
でも今はきちんとした人間さ
Chorus:
But if you used to want to see a commotion
You shoulda seen the man that I used to be
I was trouble in perpetual motion
Trouble with a capital "T"
Stayin' out late, havin' fun
And shot off every single shot in my gun
Yeah I used to be a lover but
Now I'm an older man
もしもお望みなら
俺がどんな男だったか教えてやろう
やることなすこと、みんなトラブルの種
そうとも金箔つきのトラブルメーカーさ
ゴロをまいて因念をつけて
一杯やるたびにガンをぶっぱなす
そうとも、おれは血の気の多い男だったさ
でも今は落着いた人間さ
Chorus
But if you used to want to see a commotion
You shoulda seen the man that I used to be
I was trouble in perpetual motion
Trouble with a capital "T"
Stayin' out late, havin' fun
And shot off every single shot in my gun
Yeah I used to be a terror but
Now I am a tired man
Yeah I used to be a terror but
Now I am a tired man
もしもお望みなら
俺がどんな男だったか教えてやろう
やることなすこと、みんなトラブルの種
そうとも金箔つきのトラブルメーカーさ
ゴロをまいて因念をつけて
一杯やるたびにガンをぶっぱなす
そうとも、俺は喧嘩早い男だったさ
でももう、そんなことはやめた
そうとも、俺はヤクザな男だったさ
でももう足を洗ったのさ
Careful Man 訳詩 庄野 健
これはもうどうしようもない歌だ。去ってしまった恋人を夢見て思いにふける男。目覚めれば、やはり夢だった。ジム以外が歌ったとしたら、とても聞けたものではあるまい。ところが、こういう歌がちっともめそめそした感じにならず、透明感すらうかがえる。Lyin' by my sideと韻を踏むように同音が続くところなど、明るささえ感じる。同音を重ねて訳すことはできないので、キミガ ボクノ ソバニ イテと、音数を揃え、それぞれに濁音を配するようにしてみた。他にもよく見ると脚韻らしきところもあってリズミカルな効果をあげている。ジムは不思議な男だ。
Don't you know I had a dream last night
That you were here with me
Lyin' by my side so soft and warm
And we talked a while
And shared a smile
And then we shared the dawn
But when I woke up
Oh my dream it was gone
ゆうべ、こんな夢を見たなんて
君は思いもしないだろうね
君が僕のそばにいた
横になった君はやさしくて暖かだった
おしゃべりをして
微笑みあって
一緒に朝を迎えた
でも目が覚めてみると
みんな夢だった
Don't you know I had a dream last night
And you were here with me
Lyin' by my side so soft and warm
And you said you'd thought it over
You said you were coming home
But when I woke up
Oh my dream it was gone
ゆうべ、こんな夢を見たなんて
君は思いもしないだろうね
君が僕のそばにいた
横になった君はやさしくて暖かだった
君は言った、過ぎたことはいいのよと
あなたのもとへ帰るわと
でも目が覚めてみると
みんな夢だった
I'm not the same
Can you blame me
Is it hard to understand
I can't forget
You can't change me
I am not that kind of man
僕が変ってしまったことを
責めないでおくれ
わかってはもらえないだろうか
僕は忘れられないんだ
君には僕を変えられない
僕はそんな男じゃないんだ
Don't you know I had a dream last night
And ev'rything was still
And you were by my side so soft and warm
And I dreamed that we were lovers
In the lemon scented rain
But when I woke up
Oh I found that again, I had been
Dreamin', dreamin' again
I had been dreamin', dreamin' again
ゆうべ、こんな夢を見たなんて
君は思いもしないだろうね
何もかもが昔のままだった
横になった君はやさしくて暖かだった
僕たちは恋人どうしで
やさしい雨はレモンの香りがした
でも目が覚めてみると
やはりそうだった
Dreamin' Again 訳詩 庄野 健
MAR/2004