西南海観光鉄道
私説・乗工社盛衰記

・空白(04/03/07補訂)
 ナローゲージから話題が外れますが、乗工社は80年代半ば、旧国鉄や私鉄の大半が採用している1067mmゲージの車両(ここでは便宜上、日本型標準車両と呼びます)を縮尺1/87、12mmゲージ(本稿ではHOn3 1/2と呼びます)で製品化する路線に参入します。それまで国内では、日本型標準車両は1/80、16.5mmゲージで模型化されていましたが、欧米で標準的な縮尺の1/87(欧米の実物の線路幅は1435mm、模型のゲージは16.5mmが主流)に合わせようというものです。スケール論議にはさまざまな立場があり、ここでは深入りしませんし、優劣をつけるつもりはありません。HOn3 1/2は、とれいん誌が83年4月号(通巻100号)で提唱した「HO1067」規格と同じもので、この提唱に賛同する模型メーカー6社が同月号に掲載した連合広告に乗工社も名を連ねています(HOn3 1/2の規格については、乗工社は後にHOjと称します)。また、少し時期が戻りますが、79年ごろから、メーターゲージといわれる欧州の線路幅1mの車両を模型化したFERRO SUISSE社向けのHOm(12mmゲージ)製品の製造、輸出にも乗り出し、その細密性が海外で高く評価されたようです。

 ところで、TMS誌では81年9月号から乗工社の広告がなくなり、90年8月号まで掲載されていません。この間、TMS誌では乗工社の動向は把握できなくなります。ただ、83、84両年の9月号には、鉄道模型ショーの模様を伝える速報記事で乗工社の出展ブースが写真付きで紹介され、HOn3 1/2 の製品をかいま見ることができました。さらに、完全に確認したわけではありませんが、とれいん誌やレイルマガジンでも広告が見られなくなっています。雑誌上での広告は姿を消しましたが、説明書の記載から1985年の製品と思われる日本型軽便車両のキット(頸城ニフ、下回りも自社製)や、同じく89年製と思われる近鉄ナロー電車モ240)の存在を確認しています。TMS誌を含め、小売店の広告では、乗工社のナロー製品の在庫を示す記載も数多く見られ、少数ながら日本型軽便車両の供給があったようです。

 とれいん誌90年1月号で、編集部が各メーカーに90年代の製品展開についてアンケートした結果が掲載されています。乗工社も回答しており、新製品の紹介もあります(製品リスト参照)が、業務の主力が輸出製品に移ったことを明言しています。HOn3 1/2には言及すらありません。回答の抜粋は以下の通りです。

 主たる製品のウェイトは9mmナローからHOm、Omの輸出製品に移りましたが、ナローゲージ一筋であることには変わりありません

 当社は現在輸出製品の製作が主業務のため、軽便ファンの皆様にはいろいろとご不便をおかけしていますが、可能な限り製品のフォローに努めておりますのでご了承下さい


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