百色からの旅行記1


小龍13号(2000年冬号)掲載



「広州深[土川]5泊6日の旅」

− 11-3 古田真也 −

 11月10日から15日にかけて、広州と深[土川]([ ]の中は一つの文字です)へ行ってきました。

・出発前

 中国人は深[土川]などの経済特区に入るのに地元公安発行の許可証が必要らしいですが、私は外国人だからパスポートと居留証があればいいはず・・・なのに校長は信じてくれず、公安へ手続きに行けと言います。自治区科技庁に問い合わせたりした上、結局公安にも行くことに。公安は公安であちこちに問い合わせた挙げ句に「パスポートがあれば大丈夫」という結論。なんだ、やっぱり手続きなんか要らなかったんじゃないか。

・11月10日

 百色駅で広州までの切符(硬臥・下段)が無事に買えて良かった。中国鉄路も10月21日のダイヤ改正から切符販売がオンライン化されたようです。
 列車は予定より10分ほど遅れて0940ごろ発車。車内はほぼ満席、下段は出入りがしやすく景色も見やすい反面、上・中段の客に座られるという面もあるのだな。間もなく乗務員が来て、切符と寝台の番号札を交換。さらにしばらくして今度はケーサツが来た。私は居留証とパスポートを見せただけで済んだが、向かいのオッチャンは荷物を開かれ、ボディチェックまでされ、旅行の目的もしつこく聞かれていた。この列車(昆明−>広州)は麻薬を警戒しないといけないルートなのかもしれんなぁ。外見が怪しく見えると損だ。
 昼食は食堂車へ。チト高め。ご飯はおかわり自由らしいので「もう一杯」と言ったところ「そこにあるから自分でよそえ」と言われた。そう言った当人は客用の席で茶を飲みながら他の乗務員とだべっているのである。さすが中国。食堂車の「米飯」は、中国で普段口にしているのと比べてもおいしくなかった。
 車内放送で「次はOO号車のXXさんのYY」とのアナウンスに続いて歌が流されていた。放送室の前にはテープを持った客が並んでいたし、どうやら頼めば希望の曲を流してくれるらしい。コミッククリエイション(註1)みたいだなぁ。よし、次に乗るときは何か持ってこよう。やっぱり列車だから「銀河鉄道999(註2)」あたりかな。「心の旅」「いい日旅立ち」「三都物語」でもいいかもしれない。

・11日

 6時前に番号札と交換で切符が返ってきて、0616定刻に広州駅着。駅の周りをぶらぶらと、市場を見たり朝食をとったりしつつうろつく。道ばたのニーチャンから「是不是找工作的?」と声をかけられたが、仕事を探しに出てきたように見えたんだろか。2回、それぞれ別のニーチャンから同じことを言われたのは、つまりそーゆーことなんだろか。
 深[土川]行きの速い列車(約1時間)は高いので「帰りに乗ればいいや」と考え、のろくて安い列車で約3時間かけて深[土川]に着いたのは昼過ぎだった。この日は週末で香港人が多数来ており、宿はかなり予算オーバーを余儀なくされた。
 夜、部屋に「陪(派だったかも)小姐要不要?」と電話がかかってきた。「不要」と答えたが、電話を切ってから後悔。断る前に何をする小姐なのか極力具体的に、また費用がどれくらいなのかを聞いてみるべきだったかもしれない。

・12日

 8時頃、近くの市場を見に行き、ついでに朝食。10時過ぎ、友人との待ち合わせ場所である駅前の五つ星ホテルに向かう。11時頃にホテルのカウンターから呼ばれ電話にでると、香港から来る途中で通関に手間取り遅れるとのこと。ロビーを待ち合わせに使うだけで一銭も払わない客(客と言えないかも)にも丁寧に電話を取り次ぐとは、高級ホテルってすごいね。日本から香港経由でやって来た彼ら9人(うち一人は香港在住)は12時頃にやっと到着。
 時間が時間なので昼食をとる予定の彭年酒店へ直行。みなで高級中華を食う。食後は同ホテルの展望ラウンジへ行き、深[土川]の町を眺めつつお話。話題は香港で見つけたドラえもんグッズのや、日本各地を巡業している「藤子・F・不二雄の世界展」のことなど。そう、ここに集まった(私を入れて)10人の男たちは「藤子不二雄マニア仲間(註3)」なのである。私はここで日本から持ってきてもらった単行本3冊(「藤子・F・不二雄SF短編集PERFECT版」1・4巻、藤子不二雄Aの「ホアー!!小池さん」2巻)を受け取った。これで今回の旅の最大の目的は達成。この日の昼食とラウンジの支払いは合計で一人当たり約300元。香港在住のE氏は新聞記者で広告を出すホテルなどに顔が広く、これはかなりの優待価格であるらしいが・・・それでも高いなぁ。普段の1食の約100倍である。百色だと、割といい料理屋でも10人で食事して「全員で」300元くらいだと思うが。
 17時ごろ、香港へと帰っていく彼らを見送り、私は深[土川]にもう一泊。

・13日

 深[土川]・広州東間を唯一1時間未満で走る列車(0800発)に乗るため、速いだけに高い切符を買い、ヨーロッパの高速鉄道を思わせるデザインの「新時速」に乗り込む。動力集中(註4)なのも欧米風。シートはリクライニングこそしないが、テーブルがあるし座り心地も悪くない。車内誌があるのも良い。線路も良いらしく、スピード(註5)を出しても揺れは少ない。広州東には定刻通りに0855着。この高速列車に乗ったことで旅の第二の目的を達成する。
 ここからは地下鉄に乗ることにするが、切符の自販機は硬貨しか使えないので有人の窓口へ。そこで行き先を告げて金を出すと、料金分の1元玉をくれた。これを使って自販機で切符を買えと・・・?な〜んか変。椅子が金属製で硬かった地下鉄を烈士陵園で降り、日本総領事館のある花園大厦まで歩く。多少迷って約1時間かかった。
 電話をしてから訪れるつもりだったが、電話番号が間違っていたためやむを得ずいきなり領事館へ行き、在外選挙人名簿登録の手続き。領事館の方は親切だったけど、書類は書く項目が多くて少々面倒。これで旅の第三の目的を達成する。
 その後は再び歩いて地下鉄駅の方へ。烈士陵園駅横にナムコのゲームセンターがあったので入ってみる。確かにナムコのゲーム(リッジレーサーなど)が主だが、他社のゲームもあるぞ。タイトーの「POWER EXCAVATOR(ショベルカーシュミレーター)」はあったけど、さすがに「電車でGO!(註6)」は置いてなかったなぁ。
 すぐ横に JUSCO があったので入ってみる。店員の制服まで確かにジャスコだが、店員の数がやたら多い(ほとんどは「ただいるだけ」)ところが中国である。
 広州駅行きのバスがあれば乗ろうと思うが、なかなか見つからずに歩いていると、通りかかった料理屋の店先にワニが、アルマジロが。さすが広東料理の本場。しかし1斤100元以上とは、どんな人が食べるんだろ。などと考えているうちにとうとう駅まで歩いてしまった(えらい疲れたぞ)。駅には17時頃たどり着く。周りにあるバスターミナルを見て回り、省汽車[立占]で南寧行き発見。1820発という夜行寝台バスは15分ほど遅れて出発し、その後も広州市内をあちこち走り回って客を集めた上でようやく広西を目指して走り出しました。

・14日

 6時南寧着。客引きを無視しつつ百色行きのバス時刻と料金を調査。市内にある他のバスターミナルでも百色行きを調査した後、しぁしゃん邸に押し掛ける。昼食後は南寧の電脳街をうろつく。科学実験器具の店などもあっておもしろい街だった。夜は しぁしゃん邸に泊めてもらう。しぁしゃん ありがとう。

・15日

 朝食後、出勤する しぁしゃん に見送られて出発。民族文物苑など見物してからバスで百色へ。快班のバスは僅か4時間ほどで百色に着きました。

 最近発売された藤子単行本のうち特に欲しかった物は手に入ったし、様々な乗り物にも乗れたし、藤子・乗り物好きとしてはなかなかに充実した旅でした。

−註釈−

  • 註1:コミッククリエイション 本文に戻る
    • 東京で開催される同人誌即売会。その世界で最大を誇る「コミックマーケット」に比べればはるかに小規模で、その分細かいサービスがある。参加者がCDを持ち込むと、それを会場BGMに流してくれるのもその一つ。
  • 註2:銀河鉄道999 本文に戻る
    • アニメ「銀河鉄道999」の始めの歌。「汽車は〜闇をぬ〜けて〜、ひか〜りのう〜みへ〜」という、あの歌である。
  • 註3:藤子不二雄マニア仲間 本文に戻る
    • 中国人に「どういう友達なんだ」と聞かれても、うまく説明できなかった。
  • 註4:動力集中式 本文に戻る
    • 動力を持たない客車を機関車で引っ張って(または押して)走る列車。対して日本の新幹線は客が乗る車両にモーターも積んでいるので動力分散式。
  • 註5:スピード 本文に戻る
    • 最高速度は200km/hとか。開業当初の東海道新幹線と同じかな。
  • 註6:電車でGO! 本文に戻る
    • ゲームセンターに置かれるアーケード版の他、プレイステーション版やWindows版も作られたゲーム。列車の運転士となり、速度制限を守りつつ、ダイヤ通りに正確に(早くても遅くてもいけない)運転し、駅の停止位置に正確に止めるというゲーム。

同じ旅行記を中国と縁のない方向けに書いたものもあります。
藤子不二雄メールマガジン掲載版