6.続×3:私の住む町百色市
百色には当面隊員がいなくなる(それはつまり日本人がいなくなるということでもある)ので誰の役にも立たないかもしれないが、この町で生活するための諸々を一応書いておこう。5年後か10年後かにまた誰か来るかもしれないし。まあ、そんなに経ったら街の状況も変わってしまって参考にならないかもしれないけど。 6-1 衣6-1-1 服を買う
汽車站正面に突き当たる向陽路、及び中山一路に服を扱う店が散在している。ここで売られているのは割と高めの物だが、それでも下は50元以下から。 6-1-2 繕う
学校の農業経済科が、食堂の脇で営業している。自分でやってもいい。 6-1-3 クリーニングする
市内にクリーニング屋が何軒かある。 |
写真 東風市場入口。
夜になると、このやや右に、炒粉を食べに行く店が開く。
6-2 食6-2-1 外食6-2-1-1 朝食
百色で朝食と言えば米粉(米で作った麺)と豆漿(豆乳)である。米粉は基本的に塩とトリガラのスープで食べる。普通の日本人の胃袋なら二両(両は重さの単位)でよいだろう(私は三両食べることが多いが)。唐辛子や薬味は自分で好みの量を入れる。 ついでに米粉以外のメニューもいくつか紹介しておく。
「小籠包」は小さな肉まんである。こう言うと「美味しんぼ」という漫画の主人公の山岡氏に叱られるのだが、私が百色で食べた小龍包は「小さな肉まん」以外の何物でもなかった。ということは、山岡氏の言う本当の小籠包ではないらしい。 6-2-1-2 快餐
至る所にある。作り置きのおかずを何種類か選ぶ場合と、材料を指定してその場で炒めてもらう場合とある。両方やっている店も多い。 6-2-1-3 夜市夜になると営業する露店で、簡単な物が食べられる。百色高中周辺、東風市場周辺、中華街、人民公園北側などに集まっていて、店によっては深夜0時過ぎまで営業している。主なメニューを紹介しておこう。なお、料金は普通後払いで、帰るときに老板に渡す。
炒粉:米粉(米の粉で作った麺)の焼きそば。たいてい一皿3元。百色の夜市の定番メニューであり、私のお気に入りである。油たっぷりなので、苦手な人は下記の煮粉にした方がよいだろう。 煮粉:具といっしょに軽く煮込んだ米粉。具はトマト・豚肉・タケノコなど。ほのかに酸味のあるスープになっている。南寧名物の老友粉から唐辛子を抜くとこうなるのかもしれない。たいてい一杯1.5元。 砂鍋粉・砂鍋飯:小さい土鍋で一人前ずつ作る鍋焼き米粉、または雑炊。3・4元から具によって値段が変わる。 瓦堡飯:炊き込みご飯。3・4元から具によって値段が変わる。 6-2-1-4 料理店
立派な店は人民公園の北側に集中している。このあたりの店だと、酒無しで一人当たり20元〜30元くらいかかるだろう。冬には一人16元の自助火鍋(鍋バイキング)をやっている店もあった。 6-2-2 自炊6-2-2-1 市場で買う
野菜・卵・肉(豚・鶏・アヒル・牛)・魚(鯉・鮒・鯰・泥鰌)といった普通の食材なら東風市場で一通り揃う。市場の中で売っている包子など(1つ5角)をかじりながら、野菜を見て回るのも面白い。私は焼き包子(具は主にニラ)が気に入っている。右江寄りに隣接して、生きた鶏・アヒルを売っている部分、米や豆などを売っている部分もある。 6-2-2-2 スーパーで買う
……といっても、百色のスーパーでは野菜や肉を売っていないので、買えるのは調味料と冷凍食品とインスタントラーメンと乾麺と飲料くらいである。 6-2-3 学校飯堂(食堂)
ピーク時はとても混んでいて、その時間を過ぎるとさっさと閉めてしまうので、ちょっと不便。 |
写真 東風市場の中。
朝夕は通路にも野菜売りが並び、客でごった返す。
6-3 住自分の住居については特に考える必要もないので、お客様の宿について。といっても場所が場所なので、客なんか滅多に来ないが。この2年間、私のところへ来た外国人(中国人以外)は、調整員1人・同期隊員1人・両親祖父母4人の合計6人である。 6-3-1 供銷大厦
城北路の二つ星ホテル。農業学校へ来た客は例外なくここに泊まっている。学校からはあまり近くないのだが、学校の近くにはいい宿が無いのだからしょうがない。バスターミナルには割と近いので、交通面は悪くない。 6-3-2 百色飯店中山一路、星は取っていないが百色で一番格式があるホテルらしい。私は食事や夜茶で何度か行ったが、宿として使ったことはない。 6-3-3 桂西大酒店中山一路の二つ星ホテル。宿として使ったことはないが、学校の宴会が何度かここで開かれた。宴会といえば酒、というわけで、酒嫌いの私にはロクな思い出がない。このホテルに入っている旅行社が頼りにならなかった(項目「6-4-3-1 飛行機」参照)のも印象を悪くしている。 6-3-4 百色大酒店
中山二路。中国銀行と同じ建物なので時々行くが、宿として使ったことはない。星は取っていないが、建物はきれいだし航空券の取り次ぎもできるし、実質三ツ星クラスではなかろうか。 6-3-5 金都大酒店バスターミナルに併設というか、このホテルにバスターミナルが併設されているというか。2001年秋に改装工事が終わり、ぴかぴかの高級そうなホテルになった。将来、三ツ星くらいを取ろうと狙っているに違いない……と私はにらんでいる。 6-3-6 四川大酒店三ツ星ホテル。学校からも市街からも遠いし、かといって鉄道の駅にもそれほど近くないので、農業学校で生活する分には使い道はなさそう。その名の通り、本場四川料理を出すらしいが。 6-3-7 その他比較的大きな物だけでも「銀都大酒店」「桂安大酒店」「東亜大酒店」「百色賓館」などとまだあるが、中に入ったことがない。私は「銀都の隣の店」とか「桂安の向かいの店」などという、場所の目印にしか使っていない。 |
写真 百色市街。
桂西大酒店前から西方向を望む。地区公安局の入口が見えている。
写真 学校特約牛乳販売店。
中山二路、中国銀行やや東にある、農業学校の牛乳販売店。屋号は「百農乳品」。
6-4 交通6-4-1 市内6-4-1-1 路線バス
1路から9路まであり、いずれも1元均一(車掌が運賃を集めて回るので、1元ちょうどを払えなくてもお釣りがもらえる)。このうち農業学校で暮らしていて使うのは1・3・4路である。といっても、私はあまり使わない。歩くよりはバスの方が速いが、自転車の方がもっと速いからである。 6-4-1-2 タクシー
2kmまで3元、以後1.2元/kmで加算。必ず料金メーターを使うので明朗会計……と思いきや、角の単位の端数を切り上げるか切り捨てるか細かく払うかが運転手によって違う(基本料金の距離内なら端数がないから問題無いが)。 6-4-1-3 三輪車
町中にあふれているので、タクシー以上にすぐ捕まる。特に医学院前には常に数台が客待ちをしている。 6-4-1-4 自転車
なんのかんの言って、これが一番便利。 6-4-1-5 徒歩
街の西にある農業学校から東の中山橋まででも2kmちょっと、片道30分歩けばたいていのところには行ける。 6-4-1-6 学校の自動車
現在学校には、乗用車とワゴン車が1台ずつあり、それぞれの運転手もいる。先約がなければ運転手付きで使わせてもらえるだろう。2001年夏に両親祖父母が百色へ来たときは、ワゴン車を使わせてもらった。私を含めると合計5人になり、タクシーでは1台に乗り切れなかったためである。
6-4-1-7 バイタク南寧にはたくさんいるバイタク(客を後ろに乗せて二人乗りで走るオートバイ)だが、百色には少ない。汽車站や記念碑前で客を待っているだけで流しをしていないし、私が汽車站に着いたときはいつも荷物があるので三輪かタクシーで学校まで帰る。というわけで2年間、乗る機会はなかった。 6-4-2 南寧へ6-4-2-1 快班
快班というのは、出発したら目的地まで客の乗り降りが無く一気に走るバスである。車両の性能も高く、座席も原則としてリクライニングシート。乗客にはパンと水が配られ、車載テレビで映画などを流すことも多い。南寧までの料金は45元。隊員が南寧へ行くときの足はこれが基本だろう。 6-4-2-2 普通班
普通班というのは、出発地から目的地まで常に客が乗り降りできるバスである。車両の性能は低い場合が多く、座席は原則として2階建て。以前は二人×二列×二段の寝台が多かったが、席を一人分ずつ独立させるべしというお達しが出て一人×三列×二段となった。これに伴う定員減を抑えるためか、シートピッチが短くなり、完全には横たわれなくなった。南寧までの料金は25元。 6-4-2-3 鉄道
南寧方向へはあまり便利でない。鉄道の駅が遠いこともあるが、深夜早朝に発車する列車が多く、使いやすい時間帯の本数が少ないのが大きい。料金は列車によって異なるが、いずれにしても座席なら快班のバスより安い。安い列車の硬座(普通車)なら普通班のバスよりも安い。 6-4-3 北京へ6-4-3-1 飛行機
飛行機を利用する場合、原則として南寧機場(空港、簡体字だと「字魁」)へ行く。南寧空港は街から30km以上離れているので、南寧駅前、バスターミナル横の民航售票処発着の民航班車(リムジンバス)を利用する。1時間〜30分に1本で空港までの所要時間約40分、料金は一人15元である。タクシーだと高いが、急ぐ時や3〜4人集まったときなら悪くない。 百色市内で航空券を取り次いでくれるところは何カ所かあるが、その場で発券できるところは見つけていない。南寧で発券して送ってもらう(快班バスで託送)事になるので、受け取れるのは早くても発注の半日後、または翌日になる。 参考までに、今までに利用した業者を列挙しておく。
中山二路、郵便局向かいのポケベル屋:どちらが本業かわからないが、航空券の取り次ぎもしている。2000年末に利用。時刻・料金は南寧・桂林・北海空港発着便の分しかわからず、それも一覧表のコピーがあるだけなので、変更や臨時便への対応は遅れるだろう。 百之旅:中山二路、電信大厦より東、供水大厦傍。2001年夏に利用しようとしたが……。基本的には旅行の企画や主催の会社らしく、航空券や鉄道切符の取り次ぎでは頼りにならない。時刻や料金は上記ポケベル屋と同じで表のコピーがあるだけ。3日通って結局「希望の便は運行休止中らしい」事がわかっただけだった。他の便の有無を調べてくれるわけでもなく、それでいて「ガイドは必要ないか?」という売り込みだけは何度もしてきた。結局ここに頼むのはやめた。手数料は20元と言っていたように思うが、記憶に自信がない。 鉄道旅行社:中山一路、地区公安局向かいの桂西大酒店内。2001年秋に利用しようとしたが……。ここも時刻などは表のコピーのみ。切符は社員が南寧まで出向いて買って来るつもりだったらしいが、私が南寧で受け取れるようにしてもらった。ところが、出発前日になって「航空券は本人でないと買えないので、南寧へ行ってから自分で買ってくれ。金は返す」と言ってきた。代理人でも航空券を買えることは実証済みだが、この時は結局当日南寧に行ってから自分で民航窓口で買った。手数料は100元だったか50元だったか、とにかく高かったが、それも含めて全額返って来たので良しとしよう。旅行社は骨折り損だったわけで気の毒だが、まあ、二度と利用すまい。 百色大酒店:中山二路、中国銀行と同じビル。2002年1月に利用。時刻などが一覧表のコピーなのはここも同じ。しかし「その場で」電話で南寧に問い合わせてくれるなど、比較的頼りになるという印象を受けた。航空券は注文の翌日に取りに行った。手数料20元。 北京・南寧の飛行機の切符自体はいつも余裕があるようだ。最初の上京時こそ南寧の隊員に頼んで2週間前に確保した私だが、その後はいつも2〜3日前や前日で買えている。
北京を含めて飛行機でどこかへ行くには、南寧空港より路線網が充実している昆明から飛ぶという手もある。昆明空港は市街に近いし、昆明市内には多数の航空券取次店が価格競争をしている。が、私はこれを実行する機会がなかった。帰路に昆明を使う機会は2回あったが。 6-4-3-2 鉄道
南寧から北京へ行く列車は毎日1本。2002年2月現在のダイヤでは、11時に南寧を発車して約30時間後の翌日17時少し前に北京西駅に到着する。運賃は硬臥(開放三段寝台)で約500元と、飛行機の30%程度の安さ。 6-4-4 昆明へ
広西自治区の北西隣の雲南省の首府、昆明へ行く機会もあるだろう。昆明は南寧より航空路線が充実しているし、また雲南省自体に多くの観光地がある。 6-4-5 地区内の他県などへ田林・田陽・田東・平果の各県へは鉄道でも行けるが、これらの各県も含めてバスの方が便利だと思う。汽車站からは普通班の他、各県行きの快班のバスも出ている。 |
写真 快班のバス。床下のトランクに荷物を入れる。
写真 普通班のバス。屋根の上は水タンク。
写真 工事と事故で通行止め。
2002年1月19日。この日の夕方の飛行機で北京へ飛ぶべく南寧へ向かっている途中、平果県の手前で事故による通行止めに会う。工事で片側交互通行の所で無理な追い越しをしようとしたバスが横転したらしい。
6-5 その他6-5-1 銀行口座
中山二路の中国銀行へ行く。以前は大きく遠回りをしないと行けなかったが、学校の裏門から出た所の近くに道が通って近くなった(2002年2月現在、まだ自動車は通れない)。
また、私は元で貯金してキャッシュカードで引き出せる口座も作った。中国銀行の営業時間は日本の銀行より長くて便利ではあるが、ATMが使えた方がもっと便利である。この口座に元を入れておけば他の土地でも引き出せるので、持ち歩く現金を減らせるのもありがたい。全国どこでもというわけではないし、他都市での引き出しには手数料がかかるが。 6-5-2 医療機関
この町にある比較的大きな総合病院として、百色地区人民医院と右江民族医学院附属医院がある。農業学校からの距離はどちらも同じくらい。 いずれにしても受付で受付料を払ってから診察を受けるのだが、診察する医師のランクによってこの料金が違う。全く、金が全ての世の中だ。が、医学院勤務の知り合いに紹介を頼むと、受付を飛ばして最高ランクの医師に会えたりする。ということは金だけが全てではなく、コネもまた重要なわけだ。ここはそういう国である。まあ、金もコネも重要でない国よりは、この国の方が普通なんだろう。善し悪しはともかく。 6-5-3 郵便
中山一路と二路に、それぞれ郵便局がある。比較的近い中山二路の郵便局を主に使うことになる。医学院の中にも郵便局があるようだが使ったことがない。 6-5-4 電信電話の加入、インターネットの加入申込、及び料金の支払いなどは、中山二路の電信局でできる。料金は銀行でも振り込めるらしいが、私はいつも電信局まで行っている。
インターネットについては、加入申込をしなくても使えるサービスがある。電話番号「96163」にユーザー名「guest」、パスワード「guest」で接続するだけだ。電子メールのアカウントはもらえないが、それはインターネット上に無料で使えるサービスもあるので問題にはならないだろう。 6-5-5 写真の現像
中山一路にある「中国郵政」の写真屋へ行こう。ネガを切り分けてネガ保存用のビニール袋に入れてくれるのは、私が知る限りここだけである。他の店では、ネガはただ丸められただけの裸の状態で返ってくる。良くてもフィルムケースに入れるだけだ。これだと長い一本のフィルムのままで、しかも巻き癖がつくので、焼き増しの指定や写真の順番確認に不便。 人にあげる写真はラミネート加工をするのが一般的のようだ。中国語では過塑と言われる。写真屋で多少の追加料金を払えばやってくれる。 6-5-6 観光
百色の観光の目玉は「百色起義」関連の物である。「百色起義」は、元中国の最高実力者で現在に続く改革開放政策を進めた 6-5-6 散髪
美容室も理髪店も、町のあちこちにある。路上で営業している人は少なくなったが。 |
写真 中山一路郵電局付近から記念碑を見る。
写真 記念碑から百色市街を見る。
農業学校は遠くてよくわからないが。
6-6 続:百色の言葉
「r」−>「y」
「和」と「跟」
「不客気」と「不用謝」
白話(広東語) |
まさか越えることはないと思っていた4号報告書の分量(付録を除く)を、文字数で7%ほど上回った5号報告書、これにて完結であります。この長文を全部読んだ方、本当にお疲れ様でした。残念ながら次の隊員報告書はありませんが、縁があったらどこかでまたお目にかかるかもしれません。
2002年3月7日
マンゴーの花咲く百色より。
写真 2001年11月。
寮の前で布団を着て獅子座流星群を見上げる学生たち。