連載コラム・藤子な瞬間


週刊藤子不二雄メールマガジン 117号(2001/11/29)より



▼その13「ボノム =底抜けさん=」

 現実の出来事や日常生活の中でふと「こんな場面がマンガにあったな」と思う「藤子な瞬間」。ここでは私が体験した「藤子な瞬間」を紹介していきます。第13回はF先生の短編から「ボノム =底抜けさん=」です。

 今年の9月11日、アメリカ、ニューヨークなどで起こった事件。そしてそれに対する報復として現在アフガニスタンで行われていること。どちらも多くの悲しみを生み出しています。世界中で多くの方が心を痛めていることでしょう。
 ハイジャックもビルを爆破することも特攻もやってはいけないことです。が、それと同様に他国に爆弾を落とすこともやってはいけない事だと私は考えています。日本では昔からいいますよね、喧嘩両成敗って。どっちが始めたにしても、ケンカをするのは両方が悪いっていうことです。
 私は「戦争は早く終わって欲しい、できれば始まらないで欲しかった」と思っています。このメールマガジンで「藤子漫画で平和になろう!」という企画が始まったのも同様の想いからだと思いますが……。

 そんな今日この頃、頭に浮かぶのが「ボノム =底抜けさん=」です。何をされても決して怒ることがない主人公は作中で言っています。「誰を責めるのもまちがっている。すべてを許すのです。底抜けに許すのです。それだけが世界平和への道なのです。」と。
 私、本当にその通りだと思います。怒ってやり返したら、結局相手も怒らせて仕返しの仕返しを生むのじゃないでしょうか。圧倒的な実力を盾に空から爆弾をばらまかれて、嫌な気分にならない人はいないでしょう。こちらには相手の逆恨みに思えても、相手にとっては恨めしい物は恨めしい物で、そんな恨みをこれ以上増やさないで欲しい。そのためには、自分がまず相手への怒りや恨みを捨てることが早道じゃないかなと。
 え?恨みも何も残らないところまで徹底的に相手を叩くって?うーん、そういう考え方もあるかもしれませんが……それでは『ドラえもん』の「どくさいスイッチ(てんとう虫コミックス15巻収録)」もお勧めしましょう。「気に入らないからってつぎつぎに消していけば、きりのないことになるんだよ。」っと。

<『ボノム =底抜けさん=』あらすじ>

 社内でもお人好しとして有名な仁吉(ひとよし)さん。何をされても怒らないその底抜けのお人好しには、彼なりの信念があった。その信念は「ラッキョー」「オーデン」をお題目とする仁吉教として全世界に広まる……のだろうか。

<収録>

●藤子・F・不二雄SF短編PERFECT版 1巻(小学館)

藤子不二雄メールマガジンバックナンバー
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000009077