連載コラム・藤子な瞬間


週刊FFMM 112号(2001/10/25)より



▼その12「新・オバケのQ太郎(その2)」

 現実の出来事や日常生活の中でふと「こんな場面がマンガにあったな」と思う事はありませんか。それが「藤子な瞬間」です。ここでは私が体験した「藤子な瞬間」を紹介していきます。第12回は前回に引き続き「新・オバケのQ太郎」です。

 私は中華人民共和国在住ですから、どうしても中国語とつきあわざるを得ません。ですが、中国語というのは(たぶん中国語に限らず外国語は全て)日本語と発音が違うんですよね。特に困るのが日本語だと区別していない音を区別することです。英語にもあるRとLの区別が日本人には難しいということ、日本語の世界で育った方ならわかっていただけますよね。

 で、中国語の中にもこういう「日本人に区別しにくい発音の違いが」大量にあるわけです。

 中国では普通のご飯のことを「ガンファン(干飯・gan1 fan4)」と言うことがあります。で、お粥のことは何と言うのかと聞いてみたところ「シーファン」という答でした。私はこれをずっと「湿飯・shi1 fan4」だと思っていました。硬く炊いたご飯が「干」なんだから、その対になるのは「湿」となるのが自然ですよね。
 ところがこの「シーファン」は、実は「稀飯・xi1 fan4」だったのです。
 「shi」と「xi」は中国語では区別されますが、私(日本人)にはどちらも「シ(ー)」に聞こえます。その上、ちょうど意味が通じる漢字があったが故の勘違いでした。言われてみれば「お粥」というのは「湿ったご飯」でもありますが「米粒の密度が低いご飯」でもありますね。

 この時思い出したのが「新・オバQ」でO次郎が大原一家にオバケ語(日本オバケの幼児語)の講義をする場面です。Oちゃんの「バケラッタ」も日本語で表記するから全部「バケラッタ」ですが、実際には一語一語違っているんでしょうね、「shi」と「xi」みたいに。また1つ、藤子マンガへの理解が深くなった気がします。
 「お前の発音は違う。正しい発音は『○○』だ。お前の発音は『○○』となっている」とお節介な中国人に言われる度に「はじめの『○○』とあとのと、いったいどうちがうんだね」と思ってしまいますね。ま、たぶん中国人が日本語を聞いても似たようなことを思うでしょうからお互い様です。

<『新・オバケのQ太郎』あらすじ>

 大原家に居候するオバケのQ太郎と弟のO次郎。O次郎は幼いため、しゃべれる言葉はほとんど「バケラッタ」のみ。Q太郎はその一言で内容を理解できるが、人間である大原一家には理解できず、何かと不便だった。ある日、どうにか言葉が通じるようにしようと試みるが……。

<収録>

●てんとう虫コミックス全4巻(小学館)
●藤子不二雄ランド全7巻(中央公論社)ほか

 残念ながら現在、新本での入手はほぼ不可能。古本屋で探してください。

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