No.85

               新しいタイプ


トランプ大統領に係る公私にわたる利益相反の問題について、
この欄でも取り上げた(No.6869)。

その際、連邦政府の公務員についての利益相反を一般的に規律する法にも触れたが、
今回の大統領についての利益相反問題が、
外国にある不動産や彼の有するブランド(商標)に関するという新種が多いのに対し、
対応する法律の不在方が指摘されている。

はっきりしているのは、
大統領と言えども、連邦政府の公務員一般と同じく収賄罪には当りうるし、
またインサイダー取引なども法律により禁じられている点である。

しかし、連邦政府の公務員一般を縛る連邦の利益相反法は、大統領には適用がない
[1]

たとえば、ゴルフ場の所有は、
連邦法(税、環境、労働などの)によって影響を受けるから、
連邦政府の公務員一般がゴルフ場を所有することには、この面からの問題が生ずるが、
大統領にはそれがない。

現行の連邦の利益相反法は、
大統領を対象に含めない1つの理由には、
「議会は、大統領の決定を制約できない」という三権分立の原則がある。

1989年に、そうした法律の制定に向けた大統領諮問委員会が設けられたことがあるが、
上記の理由から、諮問委員会は、その制定をあきらめた経緯がある。

この種の法律のもう1つの既存の問題は、そこにあるのが20世紀型の古いタイプの、
株や証券を対象とした利益相反の禁止しか謳っていないことである。
そこで、それらの財産を「盲らトラスト」
(blind trust)にして、問題を回避するという方法が採られる。

しかし、トランプ氏が得ている利益の大きな部分は、
彼が彼の名前を売ったり、貸したり(使用させたり)することで得ている。

ではどうする?
解決策はあるのか。

ある人は、「何もしなくてよい…大統領が自らを正しく律すれば済む」と言う。
また別の人
(Brookings Institution)
一番いいのは、憲法の報酬規定に、それらの問題を含めて読み込むことだという
[2]

年明けの議会では、民主党がこの解釈に立って、攻めるという。


** 注釈 **

[1] 18 U.S.C.§208は、合衆国政府のofficer or employeeを対象として、「金銭上の利益を得ることを禁止する」という言葉であり、
  大統領は憲法上、officer or employeeのいずれにもあたらないのでは、とされている。
[2] そうした解釈をするのは、Brookings Institutionのアイゼン(Norm Eisen)氏だという。
  憲法の言葉“Emolument”(T,9(8))は、18世紀にはもっと広く使われていた言葉で、今では“gifts”が用いられる。



                               2017年1月24日