No.69

          大統領の利益相反(その2)


「トランプ氏が大統領の地位に就くことにより、
大統領と、彼の多方面にわたる大型事業との間に、利益相反が起きないか」

この疑問が暫く前からメディアを賑わしている。

一例として、NPRが問題にしているのが、
前回No.68(12月2日)で採り上げたのとはまた別の
トランプ氏の中国での不動産投資である(11月24日)。


彼が中国での不動産に目を向けた「とっかかり」は2008年で、
広東地区での何億ドルかに上る開発話しであった。
目論見書にサインしている
(これは、相手がその後、降りてしまったため、不発に終わっている)。

その後の2012年には、上海でトランプ氏の会社の出先の責任者(CEO)を任命している。
翌年そのCEOは、中国(国営)電力会社(公社)と
10億ドル規模の電力開発の話しを始めているが、
この件も電力会社が汚職問題に巻き込まれてしまって、立消えになった。

第3に、つい最近「トランプホテル集合体」のCEOエリック・ダンチガー氏は、
香港での業界の会合に姿を現し、その場で地元新聞に、
「この数年で、中国各地に2,30のホテルを建設する」計画について語ったという。

ここでNPRの記者は言う。

「ニューヨークタイムズも報じているね。
トランプ氏は、中国銀行から数億ドル規模の借入をしている…」

と(これは、マンハッタンのビル建設のためだったという)。

こうした国営会社との間での複数の取引話しが重なっている中で、
トランプ氏がアメリカ合衆国大統領と言うことになるとどうなるか。

一方で、彼は中国を「通貨操作国だ!」と大声で断じ、
「大統領になったら、第1日目から中国に対し、中国製品に対し、重い関税を課してやる」
と言っているが、
そうした『中国各地に2,30のホテルを建設する』などという話しに支障が出て来るのではないか…。
反対に、トランプ氏が関税を掛けるのをやめたりすれば、
ホテルの話はスムーズに進むというようなことが出て来るのではないか…」

これは、彼が言っている「アメリカの利益を第一に!」と言う原則を脅かす可能性がある問題だ。
NPRはそう締め括っている。


                                  2016年12月7日