【不滅の花粉の外壁:000212】

 岩波洋造氏の花粉についての記述を読んでびっくりした。

 「植物の花粉や胞子は細胞の一種と考えてもよいが、ふつうの植物の細胞とちがっている点は、細胞壁の外側がさらに一層の、外壁とよばれるかたい膜につつまれtいることである。この花粉や外壁には二つの大きな特徴がある。その第一の特徴は花粉の種類ごとに個性的な模様がついていて、その模様をしらべると、それが何の植物の花粉かわかることである。第二の特徴は外壁が異常なほど化学的に安定していることである。どのくらい安定しているかというと、たとえば塩酸や硝酸に入れても分解しないし、ガラスや岩石をも溶かすフッ化水素の中に入れていおいても、外壁だけは分解せずにいつまでも残っている。これほど安定した物質は、自然界では他に例がないであろう。

 そのため地表に落下し、土中に埋もれた花粉は、細胞壁から内側の部分は簡単に分解してなくなるが、外壁は一万年、一千万年、ときには一億年たってもそのままの姿で土中に残っている。
この外壁の物質は化学構造もよくわかっていないが、90個の炭素と水素と酸素から成る高分子の物質である」

 ちなみに、花粉をつくる高等植物は、およそ一億年前に現れたばかりということである。ということは、花粉が出来て以来、ずっと残っていることになるではないか。何故それほどに頑丈である必要があるのか。生命の鍵であるかも知れないと思った。考えすぎだろうか。私はこの事実にかなりショックであった。生命とはつねに壊れやすいもの、だからこそ、ひんぱんにDNA複製が必要なのだと思ってきた。花粉の外壁がこれほど丈夫であるということは、多分他の細胞よりも中がしっかりと守られているのであろう。ということは、本当にDNAに次ぐ生命の鍵かもしれない。マジで。雌としてのひがみかもしれないが、花粉は雄にあたるから、自己複製から外れた重要な意味があるかもしれない、と。

 ところでこれは誰にも受け入れられないかもしれないが、私にはどうしても、動物よりも植物のほうが高等に思えてしかたがない。
 自分で食べ物を作れない生き物が高等であるはずがない。
他者を殺してしか生存できない生物は、神の失敗作と考えるか、さもなくば、無機物と有機物は同じ、区別はない、と考えれば納得がゆく。

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