タイ旅行記その4:精霊の棲む島

11月2日(火) 
 ホテルをチェックアウトし、ピーピー島へ出発。窓を開けたら、あらら、また雨。
 七時半にホテルまで迎えの車が来る。バンに十一人の乗客を詰め込んでプーケット港まで約四十分。客は全員西洋人。
 八時半にクルーザーに乗り込む。定員百五十人ほどの船。やはりほとんど西洋人。わずかに東洋人が混じる。日本語もどこかで聞こえた。
 八時四十五分出発。いつの間にか雨もあがり、晴れてきた。波も穏やかそうだ。

 十時半ころ、島に近づく。えらく断崖絶壁だ。こんなところに人が住めるのか?と思ったら、こちらはピーピー・レ島。燕の巣を採集する漁民くらいしか住んでいない島だ。ここでボートに乗り換えるシュノーケルツアーの客があり、そこから改めてピーピー・ドン島へ。
ピピ島 十一時到着。桟橋にはホテルの名前を掲げた客引きがたむろしている。そのうち知っている名前、プリンセスリゾートに値段を聞く。1200バーツからとのこと。結局、そこに頼む。
ピピプリンセスリゾート レセプションで再確認したのだが、一人客の場合は最低が1700バーツだった。まあいいか。そこに頼もう。各戸独立しているバンガロータイプ。エアコンも冷蔵庫もテレビもある。浴槽だけがない。繁華街にも近い。なにより、綺麗なプライベートビーチがある。隣のチャーリーゲストハウスとも共用のようだ。こちらの方が安いから、こっちがいいかも。
 欠点は水の出がわるいこと。島だからしょうがないのか。部屋の注意書きにも、水は無駄遣いしないように、と書いている。

 リンさんという陽気な案内人がつく。三十歳独身。ガイドからボーイからポーターから何でもこなす。ハートヤオ出身の仏教徒だそうな。この島はイスラム教徒が多いらしい。
 夕方は近くの繁華街をうろつく。といっても五分もあれば端から端まで移動できる。道も細い土の道路。伊豆あたりの場末の商店街といったところか。土産物屋、レストラン、屋台などが並ぶ。夕食はそこのシーフードレストラン。カジキ、蛤、ムール貝を大蒜とレモンでホイル焼きにしてもらう。味はいうことなし。海老のテンプラというのも頼んだが、これはフリッターであった。

今日の収支
 残金 12800バーツ
 ホテル代(七泊+飲み物+電話) 5650バーツ
 ビール(船内) 50バーツ
 夕食 320バーツ
 ホテルバー 120バーツ
 残金 6500バーツのはずだが4800バーツ
 おかしいな。残金の計算が2000バーツほど足りない。スマイルインの支払金額を間違えたか? いずれにせよ、これではピピ島滞在中の代金に足りないな。

11月3日(水)
 ホテルでピピ島シュノーケリングツアーに申し込み、参加。
 九時にロビーに集合し、弁当を渡される。そのまま桟橋へ。参加者は二十人ほど。覚悟していたことだが、全員欧米人。カップルが多い。日本人単独参加とは、変な奴だと思われたろうなあ。タイ人のスタッフには「コンニチワ」などと言われて遊ばれていたしなあ。

バイキングケイブ まずバイキングケイブに行く。ピピ・レ島という隣の島の横腹に、鍾乳洞の洞窟があり、そこに昔は海賊が住んでいたとか。本当かどうか知らないが、彼らが描いた壁画があった。ラスコー洞窟のごとき絵。今は燕が巣を作っていて、中華料理の食材として採取されている。

 次はシュノーケリング。このためにわざわざ、デジカメの防水プロテクタを持ってきたのだ。いよいよ役立てるときが来た。
 で、使ってみたのだが、ちょっと使い勝手が悪い。プロテクタをするとファインダーを覗けず、液晶モニタで視野を確認するのだが、これが水中では暗い。なにが写っているのかわからない。結局、当てずっぽで適当にシャッターを切るしかない。後で確認したら、まるで違うものが写っていたもの多数。
 で、液晶を使用するので、やたら電池の消耗が激しいんだよね。半日ほどかかって、だいたい百枚撮ったところで電池がなくなった。
 あと、パワーセーブで一定時間使用しないと電源が切れてしまうのだが、これが回復しないことがあるのだ。どのボタンを押してもオンにならない。結局、陸上に上がって、プロテクタを開け、一度デジカメのカバーを閉めてから開け、やっとオンになる。どういうことなのだろうか。

サンゴ阪神魚

熱帯魚クマノミ

 砂浜なので透明度はさほど良くないが、魚の豊富さはプーケットと同じくらい多い。枝サンゴやテーブルサンゴ、キャベツサンゴの間を、黄色と黒の縦縞の魚が多数泳ぐ。なんだか親愛感の沸く魚だ。向こうもそう思ったのか、餌と勘違いしたのか、こちらの身体に噛み付いてくる。けっこう痛い。その他にもクマノミ、ベラ、ハコフグ、ヒメジ、または名を知らぬ色とりどりの魚たちが泳いでいる。ダイビングでなくても、シュノーケリングで楽しめるところがピピ島のいいところかな。
 最後に寄ったビーチで、小さな茶色のオナガザルが二匹遊んでいた。

 ここまでは良かったのだが、もう帰るというときになって物凄いスコールがやってきた。船の進行とあいまって、雨粒がマシンガンのように我々に降りかかる。たちまちびしょぬれになる。しかも桟橋が混んでいて船が立ち往生。逃げ道がない。
 ようやく桟橋につき、ホテルまで逃げ帰る。全身びしょ濡れ。シャワーを浴びる必要すらない。ううむ、雨ガッパは必需品であったか。

 晩は雨が降っているのでホテルのレストランへ。やはり町中より若干高い。カジキマグロの切り身が倍近くするのだ。ええい、いっそのことがんがん頼んで、タイレストラン夢の一千バーツ突破を目論んでやるか。ということでシーフードバーベキュー、ビールを頼みまくり、プリンセス風チキンとかいう料理も頼む。こらこら、大皿に持ってくる奴があるか。これは、半羽使っているな。ううむ、しかし、結局は810バーツに終わった。やはりタイで千バーツ突破は容易なことではない。

 部屋に戻るとなんだか身体が揺れているよう。酒の酔いだけではない。考えてみれば、プーケットで海上実習を始めた、10月29日から毎日船に乗っているのだ。明後日はまたクラビー行きの船に乗らねばならぬ。せめて明日は、土の上でおとなしくしていよう。
 プーケット行きのバスの中でも、このホテルのロビーでも感じたのだが、ここの欧米人は煙草を吸う割合が普通より高いような気がする。禁煙が進んでいるのはアメリカ人だけで、ヨーロッパ人はさほど禁煙していないのか、それとも貧乏白人の中では喫煙者が多いという俗説が正しいのか。

今日の収支
 残金 4800バーツ
 ツアー参加料 500バーツ
 夕食 810バーツ
 残金 3500バーツ

11月4日(木)
 昨晩から雨が降り続いている。十時頃になってようやく止むが、肌寒くて泳ぐ気にはなれない。午前中は両替かたがた街をうろつくとしよう。
ピピ島最大の繁華街 とはいってもなにせ五分もすれば通り切ってしまう繁華街だから、潰す時間はたかがしれている。土産物屋で値切ったりしてもいいが、荷物を増やしたくないし。それにここの売り物は、貝細工や真珠、ビーズと安物アクセサリーくらいなものだ。熱海や原宿の露店を覗いているようなもので、興味がない。

 まずレセプションでバンコク行きのジョイントチケットを入手。やっと電車に乗れる。全部で865バーツ。これの手続きに時間がかかり、ホテルを出て銀行に行ったらもう昼休みだった。再開は一時から。やれやれ。おまけにまた雨が降ってきた。急遽バンガローに戻ることにする。50バーツでサンドイッチを購入し、ビールで昼飯に。
 二時頃また出発。銀行へ。あらら、長蛇の列。この島唯一の銀行で、レートがいいかららしい。なるほど、現金二万円が7168バーツ。両替屋より100バーツほどいいかな。

 後は何もすることがない。ぶらぶらと歩いていて、タイ式マッサージの呼び込みに会う。なるほど、これもいいか。一時間で200バーツ、オイルマッサージだと300バーツだとのことで、オイルを所望した。
 香油を身体に塗り、足からゆっくりとマッサージ。あくまでソフトに。何だかクレオパトラになった気分だ、などと陳腐な感想を抱きながら眠りに吸い込まれかかると、突如足指をぐいっと押され、ぼきぼきと音をたてた。
 マッサージの主調はあくまでソフトなタッチだが、時にこういうハードなのもある。最後にもサーフボードの体勢に固められて背中と腕を責められたり、首と片腕を固められて腰をぐいっと捩じられたり。でも、気持ちがよかった。って俺はマゾか。

 土産物には興味がないが、ちょっと相場を見てみようか、などとふらりと土産物屋に入り、たちまちいくつも売りつけられる。私は商人の絶好のカモだ。キーホルダー四つで100バーツ。貝細工2つで100バーツ。螺鈿のアクセサリー200バーツ。貝細工は可愛いんだけど、これ、多分日本までに破損するだろうなあ。

 どうでもいいけど、このプリンセスリゾート、面積が広大すぎて、レセプションとバンガローの間の道を、必ず道に迷っていた。そういう客って、ひょっとして私だけ?

 夕食はシーフード。ウチワエビを頼んだが、これが一匹200バーツと、値段は高いがそれなりに美味い。味噌のところがとろりとしてバターソースによく合う。カニミソをもっと流動的にした感じ。尾の身をこれにひたして食べるとよろしい。意外な実力者だ。赤貝はスチームかグリルか、と聞かれ、グリルを選んだが、これは失敗。半分以上が焼き過ぎで焦げてしまっていた。

今日の収支
 残金 3500バーツ
 両替 二万円(現金)を7168バーツ
 バンコク行きジョイントチケット 865バーツ
 昼食 サンドウィッチ 110バーツ
 マッサージ 300バーツ
 土産物 400バーツ
 ビール、つまみ 55バーツ
 アルカリ乾電池(八本) 180バーツ
 夕食 470バーツ
 残金 8200バーツ


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