Genesis y:25.9 痛みのある情景
"Associated memories with pain"


シトシトシト ‥‥ シトシトシト ‥‥

「‥‥」
「かさ、忘れたの?」
「‥‥。悪かったわね」
「あれ、綾波も?」
「うん」
「‥‥」
「‥‥」
「‥‥」
「えーと、じゃ、これ、二人で使って?」
「あんたは?」
「僕は、いいよ」
「碇君だめ」
「あんたねー ‥‥。そこまで覚悟があるなら簡単じゃない」
「?」
「はい、うちの鍵。傘、とってきて」
「‥‥ え?」
「そうすれば、みんな濡れないでしょ?」
「‥‥」
「‥‥」
「ボクは、ボクは ‥‥ いらない子供なんだあ ‥‥!!」

パシャパシャパシャ‥‥

「何もパシリさせたくらいでそんな拗ねなくても ‥‥」
「無理ないと思う ‥‥」


シトシトシト ‥‥ シトシトシト ‥‥

「あいつさー、冗談で言えるようになったんだ」
「『いらない子供なんだあ』ってやつ?」
「うん。おいてかれちゃった、な」
「‥‥。大丈夫。すぐ戻ってくるって」
「分かってて話、ずらしてる?」
「うん。それは、私には、見てるしか出来ないから」
「‥‥ ん」

── ある月曜日、学校から帰るころの出来事。


作者コメント。 痛みをともなった言葉が、いつか、ふつうに語れるようになる ── と、いいな。
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