『フィギュア 17』 #7 の感想


粗筋
マギュアは全て倒した。DD やヒカルは帰らなくてはならない。 だが、つばさの記憶から自分達のことを消すと告げられたヒカルは、 DD に学芸会の日まで待って欲しいと頼んだ ──
概観
もちろん、このネタは何時かどこかで必ず使われる。物語の構造上、必然的にそうなる。 また、この時点で使われた以上、ラストでマギュア再出現もほぼ自明のことになる。 だが、そんな予定調和の構造を吹き飛ばしてなおあまりある出来でした。
... つーか、これはもはや翔の脚本の勝利としか言いようが。
面白かった。 シンプルなネタ一つのワンアイディアストーリーだが、 脚本の膨らませ方はそのへんの創作系同人屋より遥かに上手い。 起部での双子の状況説明、承部の感情の盛り上げ、転のネタから結への流れ。

双子のお姫様にまつわるこのネタがあったから脚本やると言い出したのか、 双子のお姫様が描きたかったからこのネタをひねりだしたのか、 そのあたりの翔の描写が微妙に不鮮明だが、しゃーないかな。ヒカルの描写でそれどころではなかったろうし。

小学生が書いたとは思えんが、感情のベースが「別れ」にあるあたり、 (恋愛感情にないという意味で) ちゃんと小学生の脚本になっている ... まあ、こっちはタイミング的な偶然かもしんないが。

脚本における翔自身の位置
翔 = ヒカル姫、つばさ = つばさ姫、なんでしょうな。 ヒカル姫に助言する立場の王子が居るというあたりが謙虚だが、これはたぶん翔本人の勇気のメタファ。 単純に ヒカル姫 = ヒカル、王子 = 翔とみなすと現実でヒカルと翔の間に会話が少ない (翔ってつばさしか目に入ってねぇ ...) のと矛盾するし。
しかし、さすがにこれは周囲にバレないか ...? いや、既にバレてるのか?

翔の双子に対するイメージ、見方
つばさ = 魔法をかけられた者、ヒカル = その魔法を解く者(解いた者) ... 呆れるほど真っ直な評価。

翔がつばさを個別認識したのがヒカルの転校してくる前なのか後なのか ── という問題があるのだが、こういう脚本を書くということは「後」になるのかな。 この脚本をヒカルに対する敬意とみて、「前」という解釈もあり?
付記: 2 話見返してたら、ヒカルの転校してくる前にすでに認識していた描写があった。 9 話でも同様のことが示唆されているので確定っすね。

萩原がつばさにちょっかいだしてるのは 1 話からで、こっちは分かりやすいんだけども。 ともかく翔とヒカルの会話が少なすぎて材料がない〜

声優さん
前は棒読みの上手さだけで感動していたと思うが、棒読みが次第に上達するとこまで演技できてる ... すげえ。
俳優さん
にしても、この脚本を演技しきる小学 4 年生 ... いや、「CCさくら」劇場版 2 の劇中劇も小学生とは思えんかったけど、あっちは化け物ぞろいだから。 こっちは普段が小学生に見えるだけに。
ヒカルとつばさの練習
すげー細かいレベルの突っ込みだが。突っ込みっつうか言いがかりだが ...

自宅での練習のさい、ヒカルがベッドにはらばいになって、つばさが座り込んでの読み。 ヒカルの声は腹部が圧迫される分だけくぐもるはずだが、立って喋ってるがごとく明瞭に読み上げていた。 ヒカルがベッドに肘ついての読み上げならともかく、腕をベッドの下に落してる状態では呼吸足らんだろうに、 人間じゃないから良いのか?

ヒカル
ヒカルが人間でないということは表面上はほとんど忘れられて双子としての描写に徹してた。 もちろん、何気に「ヒカルはそのうち居なくなる者である」 としたうえでつばさに悪影響を残さないような配慮が見られるが、表だっては出てこない。

DD が人間モードと宇宙人モードを切替えるのにあわせて、ヒカルもモードが切り替わる。 この切り替わりがつばさの前に出た時に嫌味に感じない。

双子なら、精神レベルはほとんど同じだ。どちらかが精神的に圧倒的な上位に立つことはない。 で、7 話あたりになるとヒカルの優位性はかなり目立たなくなってくる ... ということはつまりヒカルの知的水準は 2 話から下がる一方なんじゃないかという結論になる気もするが それは置いとくとして。

ヒカルと DD の交渉は、ヒカルのつばさに対する優位性を(久しぶりに)表に出す。 一言で言えば、ヒカルはつばさのレベルに合わせている、ということになる。

この嫌味、涙ふきとって家ん中に入るところなどで微かに感じるが、 構造上、嫌味があるはずだという見方をしてるからまだしも、素直に観ると感知限界外かもしれない ... なぜかと思うに、ヒカルがつばさの心理をコントロールしていないからかな。 疑われる寸前まで行ってるが、だからといって弁解がつばさの思考に方向性を与えてない。 「ちょっとね」「なんでもないよ」etc. もっとはっきり言い切ることができた。 「DD の見送りに」「感きわまって」 etc.

ヒカルは本当につばさを大事にしてるんだねぇ ... まあ、それにしてはつばさに圧力かけすぎなんだが。

つばさ
ED 直前を除き、どっからみても脇役その一 :-) 自分のことだけで手一杯というわけでもあるまいに ... 手一杯なのか?
てんまる
てんまるの相手はずっとつばさだったんだが ... ここでヒカルの相手させるかい。

後から来たヒカルにてんまるが(つばさよりは)慣れてないのは当然のことだったが、 てんまるがなつくほどヒカルはこの地に馴染んだ ... 初見ではそこまで読めんかった。 双子であることを当然視しちゃってたからなぁ。

バス時刻表
1 時間に 1 本、ラッシュ時間帯に 3 本/時。
ふっ、5 本/日しかないトコに住んでたぜ。東京とは思えんだろう、わはは、ではなくて、 いかに補助金頼みっつうても本数意外に多いな。 バスがないと車持ってない奴は移動不可能になるからしょうがないのかもしれないが。 なるほどこれでは自治体への負担は大きかろう。
ED への流れ
別に研究室シーン要らんと思うぞ ... つばさの背で ED に入ったほうが綺麗。

2 話とかもそーだが、物語の本筋は双子のほうであってマギュア退治ではないんだから、 わざわざマギュア絡みのネタをでっちあげて ED に入る必要はない。 そーゆーのは次回予告に組み込めば十分だ。

今回、この一言
「ま、まって、...
つばさ姫を連れていかないでっ!」
直前の魔法使いの「わっはっはっは」も棒読みながら超絶に上手い悪役笑い。 おもわず本気になったヒカルに綺麗に繋がることよ。
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