「はぁはぁはぁ・・・・」

オレは息をととのえながら辺りを見渡した。

昼下がりの動物園は、観光客や子供連れの親子で賑やかだ。

だが、求めてる姿は見つけることが出来なかった。

 

「はぁはぁ・・・・」

何処に居るんだよ・・・・?

必死に周りを見渡すが、見つける事ができない

 

『僕たち友達だよね?』

何回も思い出す雅史の言葉

 

 遅かったのか?

なんとも言えない不安がオレの冷静さを無くしていた

 

・・・あかり・・・・・

 

オレはもう一度走り出していた

 ・

 ・

 ・

 ・

 

 

 

 

 「戻せない時間」

 

 

「僕たち友達だよね?」

修学旅行の当日、オレが廊下を歩いてると雅史が話しかけてきた

相変わらずとぼけた顔で、変なことを聞きやがる

 

「は? 何言ってんだよ?」

「うん、一寸浩之に頼みたいことがあってね。

     協力してほしいんだけど・・・」
 

珍しく慎重に話す雅史だが、大した用事じゃ無いだろう。

それに雅史は弟みたいなもんだしな。

 

「当たり前だろオレ達は幼稚園以前のつきあいじゃねーか?」

「よかった、やっぱり僕たち友達だね」

「気色わりーこと言ってるんじゃねーよ。それより何だよ、頼みって?」
 

安心した顔を見せる雅史だが、相変わらずポーカーフェイスは変わらない。

 
「実はねあかりちゃんの事だけど・・・」

「あかりがどうかしたのか?」

「あのね、言いずらいけど・・・」

 

雅史は少し周りを気にしてか辺りを見渡した。

人が居ないのを確認して、小声で話しだす。

 

「僕、あかりちゃんに告白しようと思うんだ」
 
「・・・・・・えっ?」

「だから浩之に協力してほしいんだ・・・・」

 

オレは一瞬なにを言われたのか分からなかった。

冗談にさえ聞こえた。

『なに、冗談言ってんだよ!』と、つっこみを入れようとしたが、雅史の

真剣な表情が、それを止めた。

 


 

 まさか、雅史のヤツがあかりを好きになるなんて・・・・

 

オレは、北海道に向かう飛行機の中で考えていた。

窓際に座り目下に広がる雲をボーっと眺めてた。

普通ならみんなと大騒ぎするはずだが、そんな気分にはなれなかった。

 

あかりは心配そうな顔をして「浩之ちゃん、どうしたの?」と聞いてくるが

「別に・・・昨日眠れなかったんだよ」

と言って寝真似をするオレ

志保は「ホントは酔っぱらってるんじゃない? だらしないわね〜」と

ちょっかいを出してくるが、答える気にもならず無視していた。

 

『二人っきりになるチャンスを作ってほしいんだけど』

また雅史の言葉を思い出す。

 

・・・・・そう言えば前にも似たような事があったな

矢島の時だ、あのときは紹介できなかった。

あかりを取られる気がして、無性に腹が立った

 

だが、今回は違う・・・・雅史ならいいかもな・・・・

オレみたいないい加減なヤツじゃないし

サッカーだって続けてる。

結局オレは止めちまったしな

 

オレはしばらくは考え込んでいたが、いつの間にか本当に眠っていた・・・・

 ・

 ・

 ・

 ・

  

やっぱり北海道は寒い、春とはいえまだ冬の冷たい風が残っている。

だが、澄み切った空に広い大地、テレビや写真で見るのとは比較にならない。

思わず日本も捨てたものじゃないと、海外に行ったことも無いくせに感心してしまう。

 

今日の予定も終ってホテルに帰ってきたが、ホテルもなかなか立派だ、広いロビーに

豪華なレストラン、ゲーセンやカラオケもある。さすがにプールは無いが、それに

負けない大きな温泉まである。

部屋は四人部屋でオレと雅史とクラスメートの男子2人だ。

 

 

 

夕食も終わり風呂に入る前、オレたちはホテルの部屋で明日の自由時間の計画を立てていた。もちろん、オレとあかり、志保、雅史のメンバーだ。

あかりは北海道のガイドブックを手にはしゃいでる。

志保は相変わらずだが・・・・

問題の雅史はいつもと変わらない。

ボーと聞いてるだけだ。あれは冗談だったのか?って気さえする。

 

「浩之ちゃん、くま見にいこうよ」

「熊? またかよ・・・

 わりぃが今そんな気分じゃねーよ」

 

オレの意外な答えにあかりは戸惑いを隠せないでいる。

修学旅行前に「円山公園」の動物園に行く約束をしてたからだ。

 

『いっしょに見に行くか』

『・・・うん!』

オレのいい加減な約束を嬉しそうな顔でこたえるあかり

あの時の笑顔を、オレは裏切ろうとしてるのか? 

 

ふと、雅史の言葉が脳裏に浮かんだ

『二人っきりになるチャンスを作ってほしいんだけど』

『・・・・あ、ああ・・・いいぜ・・・』

オレは雅史の意外な言葉に、ついOKを出してしまった。

あかりの誘いを断るのは、雅史の為じゃない。本当に気分が悪いのだ

いや・・・それ以上に、あかりと一緒には居たくなかった。

雅史の気持ちを知ってしまった今、あかりがオレに優しくしてくれるのが

辛く感じていた。

 

「ヒロ! あんた、見に行こうって言ってたじゃない?」

「うるせーな、ちょっと気分が悪いんだよ」

 

志保のよけいな詮索にムッとくるオレ

そして、それを聞いたあかりは心配そうな表情でオレの様子をうかがってくる。

 

「えっ? そうだったの? 大丈夫?」

「・・・・別にたいした事じゃねーよ」

「ゴメンね。気が付かなくて」

「いいって言ってるだろ。おまえら三人で行って来いよ。」

 

「ハァ? ヒロ!なに言ってんの?」

 

オレの言葉にその場にいた全員が驚く、そして予想通り、志保が怒りだした。

いちいち、うるせーってんだ

 

「気分が悪いのはしょうがねーだろ」

「あんた今、大したことじゃないって言ったじゃない?」

「うるせーよ!! ほっとけ!!」

 

思わずオレは怒鳴り出した。

唖然とする志保や雅史。あかりは驚いてビクッと体を動かしていた。

悪いとは思うが、別にどうでもいいとも思っていた。

 

「わりぃ、そんな気分じゃ無いんだ」

「・・・・」

「・・・・」

 

 しん・・・と部屋が静まりかえる。

 

そして、その静けさを雅史がうち消した。

 

「それじゃあ、あかりちゃん 一緒に行こうよ」

「えっ? で、でも・・・」

 

あかりはオレの方を向いて少し困った顔をしてる

オレの様子をうかがってるのだろう。

 

「そうよ、あかり、こんなヤツほっといて修学旅行を楽しまなきゃ」

「でも、浩之ちゃんが心配だし・・・」

「大丈夫よ、本人も大したこと無いって言ってるじゃない」

「でも・・・・」

 

どうしても気になるって表情で困ってるあかり。

オレに助けを求めてるようにも見える。

しかし、オレの言葉があかりの行動を決定させた。

 

「あかり、志保の言うとうりだぜ、行って来いよ」

 

あかりは心残りの様子だが、けっきょくオレの言葉どおり明日は3人で出かけ

ることになった。

 

オレって、何やってんだろ

 


 

消灯までに自由時間があったが、オレは一人で部屋に残っていた。

あかり達はおみやげを買いに行ってる。俺も誘われたがまた断ってしまった。

オレって暗れーな。

 

同室のクラスメートの二人も門限ぎりぎりまで帰らないらしい。

一人でテレビを見ていると、修学旅行に来た気がしない。

つまんねー修学旅行だぜ。

 

1時間ほどテレビを見てると雅史が帰ってきた。

  

 かちゃ・・・・っとドアの開く音がして部屋に入ってくる。

 

手にはお土産の入った紙袋を抱えてる。どうやらお土産は決まったようだ。

 

だが部屋に入った第一声が「浩之も来ればよかったのに」で、オレは無性に

苛立ちを感じていた。

 

「明日は本当に行かないの?」

「・・・・ああ・・・」

 

オレと雅史は湯飲みでお茶を飲んでいる。

ホテルのサービスでポットのお湯をそそいで飲むのだが、ぬるくなって美味し

くない。自然に手が伸びるのは、喉が乾いてるだけじゃなさそうだ。

 

「僕に気を使ってくれたの?」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・そんなんじゃねーよ」

 

雅史は少し嬉しそうな顔をした。

だが、残念そうな顔にも見えた。

 

 ずずっ

オレはお茶を飲んで喉の乾きをいやす。

 

「明日は、あかりちゃんと二人っきりで動物園に行くことになったんだ」

「えっ?」

 

思わず声が出てしまった。

自分の体の動きが止まった事に気が付いた。

志保はどうしたんだよ?

オレの考えが分かるかのように雅史が返事をする。

 

「志保には僕が頼んだんだよ」

「・・・・・」

 

まさかと、思っていたが雅史がそこまで積極的とは考えていなかった。

オレは返事も出来ずに唖然と見つめていた。

 

雅史は困ったような顔をしていたが、急に真剣な顔になると

オレの目を見つめた

  

「あかりちゃんにも言ったよ」

「・・・・・」

「二人っきりで見に行こうって」

「・・・・・」

 

あかりがOKしたのか?

 

自分の落ちつきが、無くなっていくことが分かる。

急に頭の中が真っ白になった気がする。

雅史のヤツなに言ってんだ?

 

 ギュッ

 

湯飲みを持つ腕に力が加わる

雅史に何か聞きたいはずだ・・・・

・・・・なんだっけ?

  

そんな疑問を雅史が思いださせてくれた。

 

「あかりちゃんもOKだって」

「・・・・」

 

あかりがOKしたって?

 

本当か?

あかりもバカじゃない。

修学旅行でオレや志保をほっといて、二人っきりになる誘いには多少の意味が

ある事ぐらい分かるはずだ。

 

ウソじゃねーのか?

そんな気さえする。

 

「本当だよ」

 

だが、雅史の真剣な表情と言葉にオレは否定できなくなった。

 

「あかりちゃんは押しに弱いからね」

「・・・・・」 

 

雅史の言葉に急に我を忘れるオレ

気が付くと雅史をにらみつけていた。

  

「・・・・どういう意味だよ?」

「怒らないでよ。別に無理矢理誘った訳じゃないよ」

 

雅史はオレの感情に気が付いたのか、少し慌ててフォローを入れる。

 

「・・・・・」

「けど、修学旅行は短いしね」

 

『だから、どういう意味だよ』オレがもう一度聞こうとしたが、それより早く

雅史が立ち上がった。

 

「じゃあ、僕お風呂入ってくるね」

「・・・・・」

 

タイミングを外され、なにも言えないオレを後目に部屋から出ていく雅史

 

 ギュッ

 

また、湯飲みを持つ手に力が加わった。

 

「それじゃ、先にいくよ」

「・・・・・」

「・・・・浩之、・・・早くしないと間に合わないよ」

「・・・・・」

 

 かちゃ・・・・バタン

 

雅史が部屋を出た後もオレは冷静になれなかった。

湯飲みを持つ手にさらに力が加わる。

 

なんでこんなに冷静になれないんだ?

オレはあかりのことを・・・どう思ってるんだ?

雅史ならいいじゃないか、オレよりスポーツや勉強も出来る。

オレみたいないい加減なヤツより・・・・

 

『あかりちゃんは押しに弱いからね』

 

 がしゃぁん!!

 

気が付くとオレは、雅史の出ていったドアに向かって湯飲みを投げつけていた。

粉々に砕ける湯飲み。

 

「はぁはぁ」

 

『あかりちゃんは押しに弱いからね』

雅史のヤツ、あかりになにを言ったんだ?

オレがしばらく肩で息をしてると「パタン」と、ドアが開いた。

 

「浩之ちゃんどうしたの? 何か音がしたみたいだけど」

「・・・・・」

「あれ? 何か割れちゃったの?」

「・・・・・」

 

あかりは足下に散らばる湯飲みの破片に驚いて、後ずさった。

そして、そのまましゃがみ込むと破片を拾い始めた。

 

 かちゃ、かちゃ・・・

 

ゆっくりと破片を拾うあかり

 

『あかりちゃんは押しに弱いからね』

あかり・・・・・なにがあったんだ?

 

『二人っきりで見に行こうって』

本当にOKしたのか?

 

あかりはオレの妹じゃないのか?

自分の気持ちが分からない

そして、どうしても聞かずにはいられなかった。

 

「明日、・・・志保は行かないって・・・本当か?」

 

 ぴたっ

 

あかりの手が止まる。

だが、顔は下を向いたままだ。

 

「・・・・うん」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

ゆっくりと時間が流れる

オレはあかりの気持ちが知りたかったが、これ以上は何も聞けなかった。

・・・・・怖いだけかもしれない。

そして、自分の気持ちも分からないままだった。

 

湯飲みを片づけたあかりは、立ち上がるとオレを見つめた。

その目は何かを訴えているようだった。

オレはどうしていいか分からずに目をそらす。

 

「・・・・・」

「・・・・・」

「じゃあまたね」

「・・・・ああ・・・」

 

あかりはゆっくり振り返り、ドアを開けた。

部屋を出る前に振り返り、もう一度オレの目を見つめる。

 

「・・・・」

 

オレは、なにも言わずにあかりを見つめ返す。

 

 にこっ

 

あかりは微笑みながら部屋を出ていったが、オレにはあの微笑みが

いつもの笑みと違うことに気が付いた。

 

 ぱたん・・・

 

ドアが閉じられると部屋に静けさが戻った。

 

オレは小さな部屋がとても広く感じていた。

 ・

 ・

 ・

 ・

  

『・・・じゃあ、行って来るね・・・』

 

次の日、あかりと雅史は動物園に行く準備をしていた。

あかりは、念願の地元のクマを見に行くのに、元気のない挨拶をしてる。

笑顔を作っているがいつもの笑顔じゃない。昨日見た笑顔だ・・・・

 

『帰りは遅くなると思うから』

 

これは雅史。雅史もいつもと違う。

相変わらず何を考えてるか分からないが、緊張してるのか? それとも考え事をしてるのか?

 

『・・・分かった・・・』

 

オレは一言だけ答えると、二人の後ろ姿を見送りながら何かを失った気がしていた。

 ・

 ・

 ・

 ・

 

「次は円山公園前、円山公園前」

 

オレは車掌の声に現実に引き戻された。

今朝の出来事が頭から離れない。

結局オレはあかりを探しに動物園に来ていた。

昨日、雅史があかりを誘った場所だ。

そして、以前にあかりとクマを見ると約束した場所でもある。

 

広い北海道・・・簡単に見つからないのは分かってる。

部屋で待ってれば帰ってくることも分かってる。

 

だが、少しでも早く見つけたかった。

遅ければ間に合わない気がする。

そして、大切なものを失う気がした。

 


 

「はぁはぁはぁ・・・・」

動物園を走り回るが、あかりの姿が見つからない。

 

クマはもちろん像やライオン、レストランやお土産売場全て見回った。

同じ所を何回も探した。しかし、時間だけが過ぎていった。

動物園にはいないかもしれない・・・・だが、他にあてはなかった。

 

『・・・浩之・・・早くしないと間に合わないよ』

 

雅史の言葉がオレをもう一度走らせる。

 ・

 ・

 ・

 ・ 

結局一日中探し回ったが、あかりの姿は見あたらなかった。

門限まで後わずかしか時間がない。

これだけ探しても見つからないのは来ていないか、すでに帰ったか・・・

オレは諦めるしか無かった。

もう間に合わない・・・・・・

 

なんとも言えない疲れがオレを襲った、探す気力が少しずつ無くなっていく。

昨日、あかりの気持ちに答えられたら、こんな事にはならなかったのに。

『おはよう、浩之ちゃん』

『どうしたの?』

いや、昨日一日だけじゃない。

あかりはいつもオレの事を思ってくれた・・・

あかりの大切さを、もっと早く気が付けば・・・

過去をやり直したい・・・・だが・・・・時間は戻せない。

まさか、雅史に気が付かされるとは

『いっしょに帰ろ』

遅かったのか?

無視してきたオレが悪いのか?

 

『・・・浩之・・・早くしないと間に合わないよ』

  

・・・・本当に遅かったのか?

まだ、間に合うんじゃないのか?

 

あかりは今まで待っててくれた。

今だって待ってるかもしれない。

 

いや、そんなことはどうでもいい、オレの気持ちを伝えたい。

まだ自分の気持ちもハッキリしてないが、このまま黙っていられない。

遅くてもいい。いま分かる気持ちだけでも伝えたい!!

 

オレはホテルに向かうために動物園の出口に向かった。

 


 

夕暮れの動物園は人影がまばらだった。

出口には思ったほど人は居ない。思ったより早く帰るらしい。

数人の観光客が帰り道を急いでいた。

 

だが、一人だけその場所から動かない人影を見つけた。

誰かを待っている。

そして、オレに気が付くと優しい笑顔で微笑んだ。

 

「浩之ちゃんずるい」

「・・・えっ・・・・ずるいって・・・」

「一人でクマ見たでしょ、私も見たかったのに」

「・・・・・」

「・・・・・」

 

あかりは笑顔でふてくされてる。

だが、その目が潤んでる。

 

「・・・・雅史は・・・・どうしたんだ?」

 

聞くのが怖かったが、ハッキリさせたかった。

 

 どんな答えが返ってきても

 

あかりはえへっと微笑だ。

その微笑みは、悲しさを隠し切れていない

 

「雅史ちゃんは、来てないよ」

「・・・・・」

「断っちゃった」

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

「だって、浩之ちゃんが『いっしょに見よう』って約束してくれたから」

「・・・・・」

「・・・ずっと・・・待ってたの・・・」

「・・・・・」

 

あかりは堪えきれなくなってオレの胸に飛び込んできた。

オレは出来るかぎり優しく受け止めた。

 

 あかりの暖かさが伝わってくる。

 

 

「待たせて悪かったな」

「・・・・もう・・・・待ちたくない・・・・」

 

オレの胸に顔をうずめるあかり。

優しく頭を撫でながら、後悔していた。

今まで待たせたことを悔やんだ。

そして、あかりの辛い気持ちが分かった気がする。

 

雅史との間に何があったのか知らないが、一つだけ気が付いた。

なぜこんな事が分からなかったのか?

それさえ不思議だ。

 

オレは、やっと・・・・

 

 

 自分の気持ちに・・・・・気が付いた

 

 

  おわり

 


おまけ

次の日、浩之とあかりはもう一度、動物園のくまを見に来ていた。

 

あかり「見てみて、あくびしたよ〜」

 

くま部屋の中では、母熊は寝ているが、それに寄りかかるように寝ていた

小熊が大きなあくびをした。

くま好きのあかりじゃ無くても微笑ましくて顔がほころんでしまう。

 

浩之 「やっぱ、小熊は可愛いな〜」

あかり「えっ? 浩之ちゃんもそう思うんだ?」

浩之 「ったく。オレだって可愛いと思うときぐらいあるぞ」

あかり「えへへっ、ゴメンね。」

    

 何かを思いだし、にやっと笑う浩之

 

浩之 「そう言えば、昨日もあったぞ」

あかり「昨日? 何かあったかな?」

浩之 「ふっふっふっ、あかりの寝顔だ」

あかり「えっ? えっ? いつ見たの?」

浩之 「ははは、移動中のバスで寝てただろ? 写真も撮ってあるぜ」

あかり「ホントに? もう」

 

あかりは、困った顔と恥ずかしい顔が混ざりあった表情でうつむいてしまう。

それを見た浩之が優しく微笑んだ

 

浩之 「あかり・・・・本当に可愛かったぜ」

あかり「・・・・ひろゆきちゃん・・・」

 

 

そして、少し離れた所で二人の様子をうかがってる人影があった。

 

志保 「へぇー 上手くいったようね」

雅史 「見た感じは、何時もと変わらないけどね」

志保 「ちっちっちっ、甘いわよ、この志保ちゃんは何でもお見通しよ」

雅史 「ははは、そうみたいだね」

志保 「でもあんた、浩之を挑発したんだってね〜『あかりは押しに弱いから』とか

    言ったそうじゃない」

雅史 「うん、だってそれぐらい言わないと修学旅行は短いしね」

志保 「ホント〜? ホントは振られちゃって悲しんでんじゃないの〜?」

雅史 「違うよ〜 そりゃあかりちゃんは好きだけど、僕より浩之を望んでるのは

    分かってるしね。それに・・・」

 

  じーーーと、志保を見つめる雅史

 

志保「・・・それに?」

雅史「別になんでもないよー」

志保「あっ、他に好きな人いるんじゃないの?」

雅史「えー 違うよー」

志保「誰々? 教えなさいよ!」

雅史「ホントだって〜」

志保「照れてんじゃ無いわよ! 教えなさ〜い!」

 

  何も見通せてない志保だった・・・・・

 

 

   おわり

 


あとがき

 

どうも、作者の輝行です。

この度は私の作品を読んでいただき誠にありがとう御座いました。

そしてこの様な拙文を掲載してくれた、TASMACさんに心から感謝いたします。

この作品は私が作る初のシリアスです。投稿する作品としてはシリアスな物より

明るい作品とも考えましたが、この作品を選んだ事は少々意味があります。

 

実はこの作品は私がHPを開く前から作りたかった物です。私の目標の一つでした。

しかし自分の文書力の無さに後回しにしていた作品です。

「もう少し上手くなったら作ろう」と思っていましたが、HPでSSを発表するの

は私が思っていた以上に、プレッシャーを感じるものでして何度もHPの閉鎖を考

えてました。特に他人の作品と比べてしまうと情けない思いをしたものです。

 

実は私が一番辛かったのが、TASMACさんのSSと比較したときです。

落ち込んでた上にあまりの違いを見せられて、やる気を無くしてました。

その上メールが愚痴っぽいくなってしまい(その時は本当にすいません。m(__)m)

最悪の状態の時がありました。

 

所が、そんな愚痴にTASMACさんが親切にアドバイスしてくれたのです。

自分も初めは同じような考えを持ったことがあるって教えてくれました。

その時に『TASMACさんでもそんな気持ちを持った事があるのか・・・

ならオレだって上手くなれるかも・・・』と思い、再スタートを始めることが

出来たんです。

 

で、結果ですがとても叶いませんでした。(汗)

でも、自分なりの色は持てた気がします。本当にありがとう御座いました。

今回シリアスを選んだのは、少し自分の文書力を試してみたかったのと、私が

作ったSSの中で一番まとまりがあるストーリーと思ったからです。

 

今では楽しんでます。TASMACさんを初め色々方が応援してくれたおかげです。

インターネットやSS制作に限らず、色々な面で助けられた事になります。

本当にありがとう御座いました。

 

でも、また落ち込んだ時はお願いしますね。(^-^;;;;

 

                              輝行


いいわけ

 

私なりに多少は成長したと思いますが、やり残した事があります。

少し発表しちゃいます。(^^ゞ

1.雅史のフォロー

2.あかりと雅史の間で何があったのか?

 

『雅史のフォロー』ですが、本編中はいやなヤツですね。すいません。

設定はいいヤツですが、表現出来なかったのです。(^^;)

雅史が告白したのは、『あかりを諦める為』です。

彼の目的は『あかりにふられて、けじめを付ける為』なんです。

そして、浩之にあかりの大切さを気づかせて、あかりを幸せにする。

う〜ん、全然違う・・・かろうじておまけでフォローしてます。(^^;)

 

『あかりと雅史の間で何があったのか?』

コレは気になった人が多いのでは?

で、設定ですが雅史は本気で告白しました。(ふられる為)

あかりはそんな雅史をふらないといけなかったのです。

幼なじみの雅史をふる、だが浩之は答えてくれない・・・

ホント可哀想ですね〜

最後のシーンは辛さと、うれしさの両方です。

 

あとがきで説明・・・・(号泣)

こんな作品を載せてくれて本当にありがとう御座いました。

次回作も頑張りたいのでよろしくお願いします。


 どうも、TASMACです。

 輝行さん。素晴らしい作品をありがとうございました。

 ゲーム最後の雅史のシーン、その意味深な言葉から色々なSSが発表されていますが、

今回の輝行さんの話が一番自然なパターンだなと改めて感じさせて頂きました。そう思う

理由として、私があかりに思い入れのある一人だからというのもあるのですが、ある面、

「それぞれのキャラクターにとって、どうなる事が一番幸せなのだろう」という考えが私

の中に常に有り、「戻せない時間」はそれに対して納得出来る答えの一つとなった作品だ

った、というのがあります。浩之が何故そこまで自分の心と葛藤しなければならなかった

のか。その思いが読み手である私に伝わった時点で話に引き込まれ、そのまま一気に読ん

でしまいました。そして期待した結末。嬉しかったですね(^^)。原作に沿った話で感動

させて貰ったのは本当に久しぶりです(^^)。

 あと、輝行さんのあとがきに少し応える形になりますが、文章力の事はそんなに考える

必要は無いと思いますよ。無論、上手なSS書きの方の作品をみればため息が出るのは分

かります。私だって何度ため息が出た事か(^^;)。まあそれは置いといて、それではそうし

た人の作品「だけ」が感銘を受けたり出来るものか?と考えた場合、私は「否」と思って

います。それについては、この作品が既に答え出しているのではないでしょうか(^^)。

そのSSテーマに、どれだけの思い入れをもって作成していったか、その情熱の深さによる

所がやはり一番大きいなと感じさせて頂きました(^^)。

 これはあくまで持論ですが、こうしたSSはそれらに加えて、書いた作品を多くの人に

読んで貰おうとする努力、つまりは自分勝手にならない姿勢があれば、手法は後からいくら

でも付いてきてくれる(勉強も必要ですけどね(^^ゞ)と思っています。それに加えて書き

続ける事。これはTTRPG大好きな私の友人からの受け売りなんですけどね(笑)。

 どうも私がこういう事書くと説教ジジイみたいになってしまいますね(^^;)。まあ、軽く

聞き流してやってください。

 輝行さんの益々の活躍に期待します。本当にありがとうございました(^^)。


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