軍の士官学校であるアカデミーは、全寮制の一年教育。
一年、というのは長くも感じるけど、学校を卒業したら即戦場、な訳だし、そう考えると短くも感じる。

入学する時に、自分が入隊したらどこに配属されたいか、でカリキュラムも変わってくる。
私は迷わずアスランと同じパイロットを希望した。
CICや整備なんかは、女の子の志願者も多いけど、毎年パイロット志望には1人か2人しかいない。
教官からはダメ押しの確認まで受けたけど、まさか暗殺者として、一通り訓練してます、とは言えなかった。

それに私が頭で考えるタイプじゃないってのは、月で教わってたプログラミングの課題で証明済みだし。
何より、体術とナイフ戦は実績アリだし。
もちろんアスランは、あんまりいい顔しなかったけど。



今年のアカデミー新入生はちょっとすごい。
というウワサが、入学してまもなく、あっという間に伝わった。
すごい、の理由は家柄。

「オレにしたら、何がすごいんじゃあ?ってトコだけどォ?」
ウワサ、がめぐる中、同室のナスティがあっけらかんと言った。
“オレ”と言っているけど、立派な女の子。
本名、ナスティ・マッケンジー。
アカデミーの同期には双子の弟、ラスティ・マッケンジーがいる。

ナスティの場合、成長過程はほとんどラスティの影響大、だったらしく、女らしいのは外見だけ。
黙っていればオレンジのロングヘアーに白いハダが浮き立って、すごく美人なのに。
オマケにナイスバディなのに。
今もベッドの上で、ドカっとあぐらをかいている。
男らしさ全開。
そういうナスティだって、父は評議会議員。
ウワサの家柄のひとつに入るんだけど、本人はまったく気にしてなかった。

「そうですよね。軍に入ったら個人レベルの話になるんですから、メイワクですよ。」
かわいらしい顔の口をとがらせて、ニコル・アマルフィが言う。
「自分売り込めてラッキー、ぐらいに思っとけよ。」
ラスティがいつもの調子でニコルをこずいた。
ニコルにムッと見やれても、そ知らぬ顔だ。

「ニコル・アマルフィにイザーク・ジュール、ディアッカ・エルスマン、アスラン・ザラ。
 見事にそろったもんだよな、最高評議会議員のおぼっちゃんが。」
「ラスティもナスティも。ですよ。」
「ナスティはおぼっちゃんじゃないよ。・・・たぶん。」

私が言うと、たちまちナスティに跳びかかられて押し倒される。
! たぶんって何だよ?」
「いやー、その辺が“たぶん”」
笑いながら言ったら首を絞められた。
だってそのウワサの中に入ってるようなもんだろ? 国防委員長補佐官の、むすこ?」
今度は私がラスティの首を絞める番だった。


『パイロットってのは戦場においても目立つポジションであるがゆえに、
 毎年アカデミーも一癖二癖ある者ばかりだが、今年も例外なく“クセ者”ばかりだ。』
と、レイ・ユウキ教官が言った。
それは決してウワサのことを言ったわけでなく、個人の性格や実力を言ったこと。

初日の体術の訓練の日。
ナスティはランダムに組まされたはずなのに、弟のラスティと当たり、永遠姉弟ゲンカを続けた。
私は、わずか5秒で相手をのした。
アスランはイザークと当たって、その日から目の敵にされるようになり、
ニコルはニッコリと笑いながら相手を投げ飛ばした。
ディアッカは「グゥレイトぉ!」と叫びながら(どうやら口癖らしい)相手がひるんだ所で足を引っ掛けた。
ウワサの人物の中で唯一黒星をつけられたイザークは、陰口をたたいた輩3人を同時に叩き潰した。

、手加減しろと言ったのに。」
アスランがあらぬ心配をして試合のあと声をかけてきたけど、私としては十分手加減したつもりだった。
それぐらい、年の近い者は相手にならなかった。


アカデミーに入ってから、初めてラウの軍歴を聞いた。
“血のバレンタイン”のあと、宇宙ステーション“世界樹”での戦闘において、
ジン一機でモビルアーマー37機、戦艦6隻を撃沈させた。
その功績により、ネビュラ勲章を授与されていた。
モビルスーツでの功績かもしれないが、身体あっての操作になるわけで、
体術の弱い奴がモビルスーツをこうまで駆れるとは思わない。
あらためてすごい人が訓練の相手だったのだと知った。

そしてそのラウをナイフ戦では負かせた自分が、こんなところで負けるはずがなかった。



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 【あとがき】
  やっとアカデミーに入学しました。
  でもイザークセリフなし。あわわわ・・・。
  そしてオリキャラ登場です。スイマセン。
  動かしやすいキャラなので、これからも出続けます。きっと。