「イザぁ、ディアッカぁ、お昼これからぁ? 一緒に食べようよ。」
「イザとは呼ぶなと、言っただろうがぁ!」
。あんまりイザークを興奮させないでくれ。俺たちの部屋が壊れる。」

入学してから一ヶ月。
何かとイザークはアスランを目の敵にしていて、アスランはうっとうしく言ってたけど、私はイザークを気に入ってた。
あの反応、おもしろすぎ。
それに、あんなキレイな顔でニラまれたって、ちっともこわくない。
ニコルの穏やかなニッコリ笑顔の方が、よっぽどこわい。(はらぐろい)

一ヶ月もたてば、クラスの実力ははっきりしてきて、同じレベルの人間同士で仲間ができていた。
入学当初は家柄で注目されがちだったけど、
私たちはクラスのトップ10にその理由を変えて注目されるようになっていた。
アスランとイザークを一緒に仲間って言ったら嫌がられるかな・・・やっぱり。

「おいディアッカ。お前に借りた本、あんま良くなかったから捨てたぞ。」
「勝手に捨てんなよ!・・・ってか、俺はナスティじゃなくてラスティに貸したはず・・・」
「あいつの物はオレの物。」
「・・・エロ本もかよ・・・。」

ディアッカとナスティの会話は、まるで男同士だな。
2人の会話を笑って聞いていたら、
、下品な会話に首をつっこむな。」と、イザークに言われた。
すかさずナスティが反撃する。

「下品じゃねーぞ、イザーク。やっぱ女は巨乳だろ?!」
「ナスティは自分が大きいから、基準も大きい。」
。てメぇは小さすぎなんだよ。」
「うるさいなァ、筋肉でこれ以上大きくならないんだよ。」

「「で! どっちだと思う? 2人は?!」」

「「・・・・・・・・。」」

私とナスティの質問は、顔を赤らめてそっぽを向くイザークと、口笛を吹くディアッカにムシされた。



アカデミーにきて良かったと思った。
たった独りで大人を相手に訓練させられていたのも、ここではみんなが一緒で。
同じことを同じように学んだ。
悪も正義もなく、すべてが“学ぶこと”だった。
あんなにも孤独に思えていた訓練も、ここでは授業だった。
誰が誰を、どうやって倒すかを競った。
同じことをやっていて、楽しいと感じて。
孤独と不安に押しつぶされていた日々がばかみたいだ。

アカデミーの生活は一年。
今は、この期限を考えないようにしよう。
今は、この期限付きの生活を楽しもう。
その先に待っているのは、“ほんもの”。戦場だから。



ピーーーーッ
パソコンから出る3回目のエラー音にアスランが、またか、と頭をかかえた。
。」
あきれたように私を呼ぶと、画面にサッと目をやる。

「ほとんど進んでないじゃないか。」
私はモビルスーツのOS解析のプログラミング途中。
「あーあ。ここでも当たるとは思わなかったなぁ。」

苦手、となったらとことん苦手。
そのトップ1のプログラミングと、こんな所で再会。
「これってパイロットに必要なの?」
「必要だからあるんだろ。・・・ほら続き。」
あぁ、アスランのあのあきれた顔は久しぶり。


アカデミーでは実技訓練の他に、教養も必修課目だった。
モビルスーツ工学は、モビルアーマーからモビルスーツへ移行するに当たっての合理性からはじまり、
最終的には自分の攻撃パターンに合わせたジン用のOS開発までやらなきゃならなかった。
苦手意識が強いから、早め早めにアスランに教わるようにした。
実技ばっか強くても知識がないんじゃ、いい笑い者だ。

「キラがいたら。」
「え?」
突然私の口から出た懐かしい幼なじみの名前に、アスランが動きをとめた。

「キラがいたらものすごいOS、開発しちゃいそうだよね?」
脳裏に浮かぶキラの面影。
今、ドコにいるんだろう。
開戦してからは、プラントから月や地球へ連絡することが容易でなくなってしまっていた。

「プログラム組むのは、独創的だったからな。アイツ。」
アスランの顔にも懐かしさがにじむ。
「でもキラは、軍なんて入らないよね。」
「そうだな。」

幼き日の私たち。
子供ながらのケンカはよくした。
でもキラが手をあげることは一度もなかった。

『他人を傷つけちゃいけない。』

私とアスランが手の出るケンカを始めると、キラはいつもそう言って泣いて止めた。
他人が傷つくことを、自分のことのように痛がったキラ。
そんなキラは、たとえ戦争という中でも人を傷つけたりしないだろう。


月での思い出に心をはせていると、本日4度目のエラー音が響いた。



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 【あとがき】
  期限付きの学生生活。
  その時間の中にいる間は気づかない、大切な時間。
  読んでくださっているちゃんがもし学生さんなら、何気ない日常を大切に。
  大人になると、味わえない時間ばかりです。
  スーパールーズソックス(え?知らない?)全盛期、より少し前。
  ライナにもあった学生生活。
  思い返すと、かけがえのない宝物です。