アカデミー、最後の夜。
さすがにこの日のトレルームはパスした。
私とナスティは同じベッドに潜って、睡魔に襲われるまでつきない話を語り合った。
たぶん、私のほうが先に寝てしまったと思う。
それなのに朝、目を覚ました時、ナスティはすでに“赤”の制服を着ていた。


「おはよう、。」
「おはよ、ナスティ。」

制服も軍服も、女子はスカート・ズボンの両方が選べたけど、私もナスティもズボンを希望していた。
男と同じ扱いで構わない。
そう思っていたけど、訓練中私たち2人は緑色の制服の中に、あわい朱色の制服だった。
この“赤”の制服を手に入れて、アカデミーから初めて同じ扱いを受けた気すらしていた。
実力があったから、同じと認める。と。


「仕度できましたか?」
同じ色の制服を着たニコルが、ドアからひょっこり顔をのぞかせた。
廊下に出ると、アスラン、ラスティが、やはり同じ色の制服を着ていた。

「イザークとディアッカは?」
「今来ますよ。」
言葉通り、ほどなくして2人も合流し、私たちは全員同じ色の制服を着て、会場へ向かった。
途中すれ違う同期の人たちから、痛いほどの視線を浴びながら。



「本当に来てやがる・・・・。」
式典が終わり、外に出たとたん、ナスティが毒づいた。
見ている方向に目をやると、ミゲル先輩が両手をぶんぶん振り回していた。

「おいミゲル! 軍人ってのは、そんなにヒマなのか?!」
ナスティの言葉にも、ミゲル先輩は「まーまー」と言うだけ。
またもや立ち位置を決めるのに忙しかった。

「おうっ、いいぜ。オロール。」
昨日の今日で慣れたもの。
全員が昨日とは違う表情で写っていると思う。
また私、一緒に写っちゃったんだけど、いいのかな?


「それじゃあ。・・・僕はそろそろ行きますね。。」
ニコルが、にっこりと手を差しのべてきた。
「今まで、ありがとうございました。」
「こちらこそ、ニコル。」
一番年下なのに、一番しっかり者のニコル。
「きっとまた会おうね。」
「はい!」
愛らしい返事に、思わずニコルを抱きしめた。

「あー、じゃあ。俺も。」
ディアッカは言うが早いかニコルを引き離し、私を抱きよせた。
「サンキュ。またな。」
頼りになるのに、いつも一言多いディアッカ。
「うん。またね。」
それでも、その一言に救われることも多かった。

ちゃ〜ん。俺も俺も。」
今度は突進してくるように、ラスティが飛びついてきた。
「俺たちの誕生日、また一緒に過ごそう?」
お調子者で何考えてるかわからないけど、優しいラスティ。
「もちろんだよ。」
今度もみんな、一緒にね。

「ナスティ。」
うつむいたままで顔をあげてくれない親友を呼んだ。
近づいて、抱きしめる。
「本当にありがとう。ナスティに、会えてよかった。」
「オレの方こそ。・・・・ありがとな、。」
初めて本音で話し合えた親友。

みんなみんな、大切な仲間。

「あれ? イザークちゃんは抱擁なし?」
ちょー不機嫌な顔をして、腕を組んで立っているだけのイザーク。
ラスティが不思議そうに(おもしろそうに)声をかけた。

「俺はまだ、と一緒なんでな。」
ディアッカが、「ああ!」と声をあげた。
「イザーク。お前、俺たちが抱きしめたから不機嫌なわけ?」
「ディ〜ア〜ッカあぁぁぁぁっっっ!!!!」

彼は最後まで、やっぱり一言多かった。



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【あとがき】
 もうちょっとひっぱります。
 でも、もうちょっとです。(←さみしいらしい)