発表予定時間より少し早く、私たちは掲示板の前に来ていた。
他の誰かから結果を聞かされるのはごめんだと、ナスティが言ったから。
ユウキ教官の姿がその場所に現れると、場がザワついた。
心臓が早鐘を打っている。
私は自分で自分の身体を抱きしめて、目を閉じた。
極度の緊張に、とても目を開けていられない。

程なくしてワッと歓声に似た声があがる。
結果が公開された。
覚悟を決めて、ゆっくり目を開けた。


 1位 : アスラン・ザラ
 2位 : イザーク・ジュール
 3位 : ニコル・アマルフィ
 4位 : ディアッカ・エルスマン
 5位 : ナスティ・マッケンジー
       ラスティ・マッケンジー


「ナスティとラスティ、同点5位?!」
「・・・・うぜえ。双子なんて、ぜってーうぜえ。」
しかしすごい。
予想はついていたとはいえ、ここまで上位独占しちゃうなんて。

、自分の名前、ちゃんと見とけよ?」
ナスティに言われて、自分のことを忘れていたことに気づいた。
だってこれ、インパクト強すぎ。

「えっと・・・。」
掲示板に向きなおって、私はすぐに自分の名前を見つけた。


 8位 : 


「8位・・・・。“赤”だっ!!」
私はナスティにとびついた。
「よかったな、おめでとさん。・・・・でも・・・・。」

ナスティが何を言おうとしているのかはわかった。
私の名前の横には『軍本部・特殊部隊』と書かれていた。
もちろんそれは、卒業後の配属先。
一方で1位から5位までの名前の横にはすべて『クルーゼ隊』と書かれている。
私だけが別部隊になったことに、ナスティはかける言葉がないらしい。

でもそんなの、予想していたことだった。
まさか本当に当たるとは思わなかったけど、みんなが一緒で私ひとりって。
だから昨日は、見る勇気がなかった。
「ナスティ。私は自分で希望したんだよ? だから、オメデトウでいいからね。」
私が言うと、ナスティは無言で私を抱きしめてくれた。

あとから来たみんなも、結果を見て私たちのそばに来てくれた。
。“赤”おめでとう。」
「アスランこそ、トップおめでとう。私が“赤”になれたのも、OS、アスランが手伝ってくれたからだよ。」
ちゃんだけ別なんてー・・。がっかりだよ。」
「ありがとうラスティ。でも、自分で希望したんだし。」

昨日はあんなに結果を見たくないと思っていたけど、見たら見たで気持ちのふんぎりがついた。
私は、みんなと同じ色の軍服を着て、違う戦場へ行くね。


「おいお前ら、クルーゼ隊所属になった奴らか?」
声のほうを見ると、緑色の軍服を着た金髪の兵士が立っていた。
「はい。そうですけど。」
ニコルが首をかしげながら答えた。
それもそのはず、ここで軍服を着ているのは教官だけ。
なのに目の前に立っているこの人は、教官というには若すぎる。
この一年間、見かけたことすらない人だった。

「俺はクルーゼ隊所属パイロット、ミゲル・アイマンだ。」
クルーゼ隊、の言葉に全員整列し敬礼した。
同じ隊ですでに軍服を着てるってことは、先輩、だ。
「あーあーいいよ。そんなのは。おい、オロール!」

先輩は付き添ってきていた同じ軍服を着た兵士に呼びかけ、カメラを投げ渡した。
え? なんでカメラ?

「今年は数多いからなー。ちゃんと全員いれろよ?」
「あのう、アイマン先輩?」
「ミゲルでいーよ。入隊はまだとはいえ、俺たちゃ同じパイロットだぜ?」
「いえ。でも・・・。」
話しかけたニコルを含めた全員が戸惑う中、ナスティがずいっと前に出た。

「んじゃあ、ミゲル。てめぇ、コレは何のマネだよ。」
うっわーーーーっっ! ナスティ〜〜〜〜・・・・。
その場にいた誰もが頭をかかえた。
いくらなんでもそりゃマズイでしょ。

「何って、写真とるんだよ。俺とお前らで。」
私たちの動揺をよそに、ミゲル先輩はあっけらかんと答えた。
ナスティが呼び捨てにしたのも、あの口調で言ったのも、本当に気にしてないらしい。

「今日の写真は貴重だぜ? 何せお前ら、明日の卒業式は赤の制服だからな。」
悪びれもせず、さっさと立ち位置を決めている。

「あれ? 女のコは2人?」
ナスティと私を交互に見て、ミゲル先輩が言う。
「いえ。私は配属先違いますから。おかまいなく。」

カメラのフレームから外れるように、さっさと身をひるがえす。
場を離れるより先に、私はミゲル先輩につかまえられていた。
「いいよ。一緒に写れよ。」



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【あとがき】
 本編を見ているだけではわからない、一般制服から赤制服への切り替え時期。
 わからないので卒業式だけの特別服にしちゃいました。
 もしかして入学時に試験があって、そこで決まるんでしょうか?
 それとも中間テストとか? ま、いいか。