瞬きする間も与えないほどに、私たちは攻撃の手を休めなかった。
クラス全員一致で決まった、最終日最終組の対戦が始まって、もう10分は経過した。
肩で息をしながら私とアスランは、いつつくともわからない戦いの結末を思い浮かべていた。
けれど、どの攻撃も、勝利にはいたらない。
当初の予想通り、私は全勝でここまできた。
アスランに勝って、全勝で終らせるんだ。

「あっ・・くぅっ・・。」
アスランの左手を押さえにいった私の右手が、逆にアスランにつかまれる。

しまった・・・っ!

思ったときにはすでに、身体が宙に浮いていた。
しばらくして軽い衝撃が訪れる。
そのままで上を見ると、アスランの顔が私をのぞきこんでいた。
「はぁっ・・はぁ・・はぁっ・・・」
息を整えながら考える。

・・・・・・・・負けた・・・・・・・・?

「そこまで! 勝者アスラン・ザラ。」
うわっと歓声が沸いた。
重たい身体をゆっくり起こすと、ポカンとした顔のアスランとディアッカとラスティが映る。
ニコルとナスティは手をたたき合って喜んでいた。
ナスティ。・・・・アスランにカケてたのね・・・・。(オレは穴ねらいなの!by.ナス)

イザークが鬼のような形相で、ツカツカとやってきた。
! 貴様! 何でアスランごときに負けるんだ!!」
「おいイザーク。」
アスランの声に耳も貸さず、まだ息のあがっている私に、さらにまくしたてる。

が俺に勝って、俺がアスランに勝って、アスランがに勝って!
 これがどういうことか、わかってるのか?! お前はっっ!!」
えぇーと、つまり3人が一敗ずつで、つまり―――・・・。

「3人同点1位。」
タオルを持ってきてくれたナスティが、私の代わりに答える。
「何だよイザーク。お前1位とって不満なワケ?」
今日私がアスランに勝てば、全勝で私が1位だった。
1敗のイザークは2位で、アスランは3位。
でも私が負けたから、3人1敗で同点1位。

「私が負けてイザーク1位じゃん! 何で不満なの?!」
怒られるより感謝してほしいくらいだ。
ところがイザークは一筋縄にいかない。
「うるさい! こんな結果。誰が一番強いのか、わからんじゃないか!!」

つ・ま・り―――・・・。
タナボタの1位よりも、実力のわかる2位のほうが良かったってこと?!
あなどれません、イザーク・ジュール。

「いーじゃんいーじゃん! イザークもアスランもちゃんも、オメデトウ!!」
ラスティが割り込んできて、イザークはなおも何か言いたそうだったけど、そっぽを向くことで堪えてくれた。
「イザークも、いつまでもスネてんなよ。」
「ディアッカ! 何だその言い方は?!」

結局ディアッカが火に油を注いで、またギャーギャーと言い争いが始まった。
ここはかかわらない方が得策、とばかりに、私はアスランの方へ駆けよる。
「やっぱりすごいね、アスランは。」
「追いつくのに、必死だったからな。」
いつか言われたセリフを返されて、私は笑った。

興奮冷めやらぬ中、教官が「整列」と声をかける。
慣れたように列をつくる私たちに、教官は言った。
「総合成績の発表は明日、掲示で行う。
 また、所属部隊も一緒に掲示となるから、全員必ず確認のこと。では終了、解散!」
この言葉で、私たちの訓練はすべて、終了した。



今日はみんなで過ごそうと、イザークとディアッカの部屋におしかけた。
「・・・・どうしよう。私、見る勇気ないかも・・・。」
掲示だなんて、思わなかった。
ひとりひとり、個別に配られるものだと思っていた。
成績も、所属部隊も。

「今さらじたばたしても、どーしようもねぇよ。」
そりゃナスティは“赤”確実だもん。
でもね、私が見れない理由は、そうじゃない。
自分が“赤”を着れるかどうかより、むしろ・・・。

「今日で、最後かもしれないんですね。」
ニコルが、私の気持ちを代弁してくれた。
「こうしてみんなで、一緒にいられるのも。」


掲示されたら、いやでも知ることになる、別々の行き先。
その現実を、できれば知りたくなかった。



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【あとがき】
 なんだかしんみり。