「はじめ!」
「え? ちょっとウソでしょ?!」
フレッド教官の合図とともに、私に4つのナイフが同時に襲いかかった。
ナイフ戦、最終日。
生き残りバトルの卒業試験。
今日も最初は見学組? なんて甘いこと考えてたのがバカだった。
私にむかってきた4人は、いずれも“赤”が着れるかどうかの瀬戸際に立つクラスメイト。
ナイフ戦で私が早々にやられれば、自分たちが“赤”に近づく。
おそらくはこの4人、事前に打ち合わせていたのだろう。
でもね。
私だって負けるわけにいかない。
絶対に“赤”を着るんだ。
みんなと同じ色を着て、みんなと違う戦場に行くんだ。
離れていてもその色で、みんなを思い出せるように。
休む隙も与えず突き出されるナイフを次々に振り払いながら、私は確実に一人ずつ倒していく。
こんな所で、負けられない。
最後の一人を倒して顔をあげると、イザークと目が合った。
「弱い奴を倒してもつまらん。」
ニヤリと笑って、イザークは私に向き直る。
いつも以上の気迫に、私は一歩後退した。
「逃げるなあぁぁぁっっ!」
ガキンっと音がして、ナイフが交わる。
私の身体も戦闘モードに入った。
「あの2人、婚約者だよな。」
今回はナスティを返り討ちにし、ニコルにやられたディアッカが、あきれたように言った。
「ですね。・・・笑いながらやりあってますけど。」
ニコルはアスランに倒されていた。
「いけーーっ! ーーっ!」
ナスティの声援を受けて、私は一気にイザークに攻め寄った。
「ごめんネ、イザーク♪」
ウインクつきでイザークのナイフを弾き飛ばす。
「ちィっ・・・!」
反動で手がしびれたのか、イザークは右手をさすりながら飛び退いた。
あと、1人。
背後でナイフを構える人の気配がした。
振り向かなくてもわかる。
彼は、幼なじみのアスラン。
でもごめんね。
これだけは、誰にも負けたくないの。
「最初っから最後まで、だーれもには勝てなかったな。」
試合後、ディアッカが言った。
私が強い理由を彼らは知っているのに、誰もそのことを言わなかった。
「ああ見えてアスラン、ずいぶん落ちこんでますよ?」
ニコルが、前を歩くアスランに聞こえないように言った。
「わかってる。あーいう性格だもん、アスランは。」
負けが確定したとき、アスランは笑顔で私に言った。
「やっぱり強いな、は。」
そうして握手をして、ナイフ戦はすべて終了となった。
「けど、これでますます楽しみだぜ? 体術のアスラン対。」
ナスティがとなりで楽しげに言った。
いやな予感。
「ナスティ? まさかそれもカケてるの?」
あらぬ方向をむいて、ニシシっと楽しそうに笑うナスティに、聞かなくても答えが知れた。
他の課目では、せいぜいがんばって10位以内。
筆記が絡むと15位以内がやっと。
だから、体術だって絶対落とせない。
他のみんなは常に5位以内で争ってる均等な能力を持っていた。
私は人より長けている所で、ポイントを稼ぐしかない。
「よーし、やるぞー!!」
卒業試験、最終日。
それは、私たちのアカデミー卒業を意味する。
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【あとがき】
なんだかクライマックスが見えてきたようですよ?
がんばれ、ちゃん!