私の気持ちは、どうなってるの?
「アスラン痛い。・・・離して。」
「いやだ。」
つかまれた腕を振り払うことは簡単にできる。
だけど、そうして逃げても、何も解決しないのはわかってた。
アスランは好き。
でもそれは、恋じゃない。
「はいいのか?!」
「いいも何も・・・。私はまだ何も聞いてない。」
アスランが取り乱しているのに、逆に私は落ちついていた。
なんだかいつもと逆の立場だね、なんて思えるほど。
「は、俺が好きじゃないのか?!」
「ごめん・・・・アスラン。」
「・・・じゃあ、なんであの日、俺と寝たんだ!」
吐き捨てるようにアスランが言った。
「・・・・・・・・ごめん、アスラン。」
何も生み出さない行為だと、思っていた。
思いの行き場を失くした、なぐさめだと。
「アスランは好きだよ。でも、恋じゃない。・・・・あのときも。」
こんなこと、言いたくなかった。
けど、今のアスランに、ウソをつくこともできなかった。
私の言葉を聞いたアスランは、ゆっくりとつかんでいた手を離してくれた。
「・・・・・悪かった。」
小さく告げて、私に背を向けた。
「本当にすまない。」
「アスラン。」
「本当はもう、あきらめていたんだ。出生確率がないと言われたときに、のことは。ただ・・・・。」
が、他の誰かと一緒になる覚悟が、まだなかった。
顔も見ずにそう言い残して、アスランは部屋を出て行った。
私はまた、その後姿に謝ることしかできないでいた。
「あいつが今日、いやに好戦的だった理由がこれか?」
アスランとは違う声の主に、私はそれこそ心臓がとびだすくらい驚いた。
「いっ・・?!・・イザっ・・・・イザっ・・?!」
「だからイザと呼ぶなと言ってるだろうが。」
いいえ、イザーク。
これは驚きのあまり言葉が出てこないんです。
しかも少なからず当事者なのに、なんでそんなに落ちついてるの?
「イザーク。もしかして、知ってた?」
「あ? 調査のことなら母上から聞いていたが。・・・それ以外は初耳だ。」
はあ・・・そうですか・・・。
「で? 順を追って話してもらおうか?」
初耳、の部分を指していることは、容易に想像できた。
だから私は全部話すことにした。
イザークには少なからず、知る権利がある。
家とザラ家の関係。
その役割、身代わりということ。
自分の遺伝子のこと。
殺人能力が高められ、暗殺者として訓練を受けていたこと。
母2人をユニウス・セブンで亡くし、父2人は核攻撃を事前に知っていたこと。
見殺しにされたと思っていたら、私の母はそれを知って受け入れていたこと。
それが悲しくて、思いの行き場を失くして、アスランと寝たこと。
イザークは、表情ひとつ変えないで聞いていた。
「きっとこれ、全部話せば、エザリア様だって取り消すと思うよ? 婚約。
まぁ、出生確率で却下ってこともありえるけど。」
「それはない。」
イザークがきっぱり否定した。
「ここに来る前に母上から連絡があった。出生確率は90%を超えたそうだぞ。」
それはまたずいぶんと子沢山になりそうな・・・・って、ちがうちがう!
「じゃあそれはおいといて!・・・イザークだって私の話全部聞いて、それでも婚約する気なんてないでしょ?」
身代わりで、暗殺者で、アスランと寝たんだぞ、私は。
当たり前だ、という言葉が返ってくると思ってたのに、イザークは
「それはどうかな。」
ニヤリと笑いながら言った。
「あいにく俺はが気に入ってるんだ。今の話だって、どうってことはない。」
たぶん私は、ものすごくおバカな顔をしている。
「だってイザーク、私はアスランと・・・。」
「あぁ。好きでもないのに寝たってのは気に入らないが、俺が責めることじゃない。
そんなことを気にしていたら、世界は処女と童貞でしか成り立たんだろうが。」
すごいなイザーク。
年はひとつしか違わないのに、なんて大人な意見。
・・・ってことは、婚姻成立?!
いや、それはちょっと待ってよ・・・。
まだそこまでは心の準備が―――・・・。
いつものようにわたわたひとりで焦りだした私に、イザークが言った。
「かと言ってこのまま他力本願で手に入れるのも気に食わないんでな。
アカデミーを出るまでに、を本気で落としてやる。」
・・・ならせめて、私を見てニヤリと笑うのをやめてほしい・・・。
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【あとがき】
その人の過去に何があっても、今を懸命に生きている人なら、
イザークは絶対好きって言ってくれると思います。
ちゃんを認めているからこその、イザークの決断。んもう、大好き!!
こんな所でナンですが、イザークはもちろんちゃんが好きです。
その理由が明かされる日は・・・くるのかな?(おいおい)