「それで? どーすんの? イザーク。」
眉間にいつも以上のしわを寄せて歩くイザークをうかがいながら、ディアッカが聞いた。
「いいかディアッカ! 絶対!誰にも!言うんじゃない!」
はいはい、とばかりに両手を上げるディアッカ。
「“誰にも”は、含めて?」
言うなり、ギロリとニラまれる。
どうして自分はこう一言多いのか、ディアッカは恨めしく思った。
「殺すぞ貴様ぁ! いいか!誰にも、だ!・・・何もなければ、何事もなく終るんだからな!」
「・・・・で? お前はそれでいいワケ?」
さっきの反省はどこへやら、またもや一言多いのは、カンの鋭さもあるのだろう。
「・・・・・・うるさい・・・・・・ッ!」
言葉は同じなのに、いつも以上に元気のない物言いに、ディアッカは「あーあ」と天を仰いだ。
どっちに転んでも、自分の部屋の甚大な被害は、避けられそうにない。
「そうですか。・・・なんだか今から入隊先が決まるというのも、おかしな気がしますね。」
「本当にいいのぉ? ちゃん。」
今日の放課後は、ニコルとラスティが部屋に来ていた。
「希望したってだけで、決定じゃないけどね。」
成績が悪ければ、特殊部隊なんて行けっこない。
「大丈夫ですよ、なら。・・・・実技は。」
ニコルぅぅぅぅ・・・。
どーせ体力だけのおバカさんですよ、私は。
「。ニコルの言うことは聞き流せよなぁー。」
笑われたところに、部屋にノックの音がした。
ドアを開けると、そこにアスランがいた。
「アスラーン! いらっしゃい。ニコルとラスティも来てるんだ。」
満面の笑みでアスランを迎え入れたのに、アスランはどこか上の空で、ぎこちなく笑っていた。
「あぁ。・・・いや、。」
「何? アスラン。」
全員興味深くアスランを見ていた。
視線を気にしつつ、アスランはため息をつく。
何か・・・・いつも以上にナーバス?
「どうしたの? アスラン。」
「ラレールおじさんから、・・・・その、連絡とか、あったか?」
「お父さまから? 別にないけど。」
「そうか。・・・・いや、ないならいいんだ。」
アスランの態度にラスティとナスティは顔を合わせて「?」と言っていた。
「アスランも一緒にどうですか? おいしいチョコレートを母が送ってくれたんです。」
「あぁ。もらうよ。」
ニコルの話題転換に、ほっとしたように私を通り過ぎるアスラン。
いったい、何を言いたかったんだろう。
疑問に思いつつも、その後のおしゃべりと本当においしかったチョコレートの効果で、次第に忘れていった。
その日の夜。
いつものように
トレルームへ行ったのに、イザークの姿はなかった。
別に約束している訳じゃないんだから、そんなことだってあるのに。
おかしいな?
なんだろう、この気持ちは。
ひとりで無言でトレーニングするのって、つまらない。
イザーク?
イザークがいないから?
怒鳴られたいのか? イザークに。
「そんなバカな。」
ひとり突っ込み。それじゃ私はMじゃないか・・・。
部屋に戻っても、その日はなかなか寝つけなかった。
何度目かの寝返りをうったときに、となりのベッドから声がした。
「今日は一緒じゃなかったのかよ。」
私はびっくりして飛び起きた。
でも相手は、平然とベッドの中からこっちを見ていた。
「ナスティ! どうして?」
「知ってたよ。イザークが毎晩送ってきてたことも。」
「あの、でも別に、2人でトレーニングしてただけだよ?」
今日、不覚にもトレーニング中考えていたことを思い出して、声が少しうわずってる。
けど、ナスティはそんなこと気にもせず笑って言う。
「知ってるよ。お子ちゃまに何かできるとは思ってねーよ。」
何かって・・・・何?!
しかもお子ちゃま、は、どっちのこと?!
「特別好きってワケじゃないにしても、気にはなってんだろ?」
ナスティの言葉に「うーん」と考えこんで、気がついたら朝だった。
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【あとがき】
まだまだそんなモンです、イザーク。
がんばれ!イザーク!
戦え!イザーク・ジュール!!