「2人で何をこそこそと話している?!」
顔をあげるとそこには、仁王立ちした王子様。・・・もとい、イザークがいた。
「あ、イザーク。こんばんは。」
心を許せる相手が増えたので、私はニコニコして答えた。
・・・ら、イザークに一喝されてしまった。
「のん気に笑ってるんじゃない! さっきから、むこうで男どもが騒いでいるぞ。」
「何で?」
「エルスマンのご子息と、のご子女は良い仲なのかと、俺が3人にも聞かれたんだぞ?!」
「で? なんて答えたんだよ?」
ディアッカの問いに、イザークはイラついて答える。
「そんなのは自分で聞きに行けと、言ってやったさ。」
ははーん。
自分たちと話してるときは何も話さなかった私が、こうしてディアッカと話してるのが不思議だったってコトね?
ってことは、2人で話してるところをチロチロ見られてたってことか?!
どんなところなんだ、ココは・・・。
「それより、今日の主役が踊っているぞ? 見てやらんのか?」
「えっ、ナスティが?! 見たーい。」
中へ入ると、あでやかに優雅に踊るナスティがいた。
この世界だけなら、立派に良家のお嬢様だな。
「相手はニコルじゃないか。ちゃっかり選んだな? ナスティのヤツ。」
いつもディアッカのエロ本をとりあげては、
こんな身体はタイプじゃないと捨ててしまうナスティからは、想像もできない姿だけど。
「あ。アスランとラクスも。」
よく見れば、ラスティもイエローのドレスを着たかわいらしい女の子と踊っていた。
外では戦争してるっていうのに、こんな世界もあるんだなぁ。
「も踊ってきたらどうだ? あっちでソワソワしてる男どもがいるぜ?」
「やだ。その前に踊れないし。」
でもよく見たら、ディアッカの言った男の人たちは、今にも私を誘いに来そうな勢いで・・・。
「ねぇ、イザークとディアッカは、どっちが踊るの上手?」
「そりゃイザークだよ。なんたって、エザリア様仕込だから。」
ディアッカの答えを聞いて、覚悟を決めた。
「じゃあ、イザークが私と踊って。」
あんな人種と踊るなんて、まっぴらだ。
それなら相手を見つけて、踊って回避すればいい。
「何で俺がお前と・・・。」
「初めてなんだから、ちゃんとリードしてね?」
イザークの小言は聞かないフリをする。
「答えを間違えちまったぁぁぁ! 否グレイトー!!」
ディアッカの声も、聞こえないことにしよう。
「あっ・・・ごめん。」
またイザークの足を踏んでしまった。
「気にするな、初心者。」
その言い方はないでしょー?
でもシュミレーションでコンビ組んだときなんか、もっとヒドイ言い方だったけ。
「この、のろまがァ!・・・・は、ないよね・・・。」
「何か言ったか?」
「何も言ってません!」
初心者の私には一曲が限界だった。
これで他の人を断る理由ができた、と、イザークにお礼を言って離れようとした。
そこに、
「イザーク。」
と、イザークのお母さまで、評議委員のエザリア・ジュール様が声をかけてきた。
「母上。」
「貴方が女性と踊るなんて、めずらしいわね。・・・こちらは?」
「国防委員長補佐官、ラレール・氏のご子女、・嬢です。」
イザークとそっくりな、一見年齢不詳のエザリア様の前で、思わず緊張してしまう。
「初めまして。・です。」
頭を下げた私に、エザリア様はにっこりとほほ笑んだ。
何かイザークの笑顔を見た気がしてフクザツ。
やっぱりイザークには眉間のシワがよく似合う。
「とても素敵だったわ、。」
「いいえ! 実は踊るのは初めてだったんです。
それで、イザークに・・・いえ! イザーク様に教えていただいて。」
さすがに呼び捨てはマズい! と察知して、あわてて訂正。
けど、エザリア様はたいして気にしていなかった。
「そんなことは問題じゃないのよ、。イザークには困ったもので、
女性と踊ろうものなら顔をツーンとしているのが常なの。
それが、貴女と踊っているときは、とても穏やかな優しい顔をしていたわ!」
「母上、そんなこと・・・。」
おぉ、エザリア様。息子溺愛ぶり発揮。
いいな、イザーク。
お母さま、か。
なんてことをのほほんと考えていたら、とんでもない言葉が発せられた。
「イザーク。このまま決めてしまいなさい! 何なら私がラレールに話をつけてきます!」
は? 決める?(最近こんなんばっか・・・)
「こんなにかわいらしい子が嫁にくれば、母としてこれ以上嬉しいことはない!」
エザリア様、イザークが止めるのにも聞く耳持たず。
「それじゃあ。また後日。」
なんだかものすごいことを言われた気がする。
隣にいるイザークの顔を見ると、真っ赤だった。
「イザーク、今の・・・嫁って?」
「気にしないでいいっ!」
私の言葉を聞きもせず、イザークはスタスタと行ってしまった。
壁際ではディアッカがさっきの男の人たちに囲まれていた。
きっとさっきと逆のことを聞かれてるんだろうな。
何かと大変だ、ココも。
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