「そんなことより、いつまでこの騒ぎは続けるんだ? 他に行くところがあるんだろう?」
アスランの言葉に私はきょとんとして、ナスティとラスティは一気に酔いが醒めた顔をした。
何で?
今日は2人の誕生日でしょ?



つれてこられた先は、墓地だった。
「悪ィな。今日は一日バカ騒ぎしなくちゃ、ココに来る気になんねーんだ。」
ラスティが作り笑いをして言った。
私以外はみんなわかったような顔をしている。
ナスティが、そんな私に気がついた。

「オレたちの誕生日は、母親の命日なんだよ。」

―――― え? ――――。

「出産のときに出血多量で、オレたち産んですぐに・・・。」
「ナスティ!」
いつもの顔をつくりながら、ひとすじ涙を流したナスティを、私は精一杯抱きしめた。

「医師はナチュラルだった。コーディネーターなら、簡単に死なないいって、輸血を急がなかったんだと。」
何よ、それ。
出産のリスクは同じじゃないの?!
それでも医者かと、怒りがこみあげる。
これが戦争の根源かもしれない。


何でアスランが知っていたのかはわかんないけど、月で育った私以外はみんな知っていた。
みんなは小さい頃から、社交界での交流があったから。

ただ楽しいだけの誕生日じゃないんだね、ナスティ。
この世に生まれてきたのを祝う大切な日なのに、そんな悲しい思い出も一緒なんだね。
さすがにいつもの調子じゃいかないよね、ラスティ。
作り笑いなんて似合わないよ。


私たちは静かに黙祷した。
目を閉じると、自分の母の顔が重なった。
お母さまの命日は、まだこない。
一年という日々を、私は母の墓の前でどう振り返れるだろうか。
お墓はあるけど、当然その亡骸はそこにはない。
じゃあ、母の心は?
・・・・どこにいるんだろう。



「悪かったな、。こんなことにつき合わせて。」
「いいんだよ、ナスティ。それに楽しかったし。・・・って、違くって!」
とっても不謹慎なことを言ってしまったと思って、わたわたと慌てる私に、
「そうなんだよ。そのビミョーさが、オレたちの誕生日なワケ!」
ラスティが、すっかりいつもの調子で言ってくれた。


ラスティとナスティが、今日みたいな大切な日に、私たちを一緒に入れてくれて嬉しかった。
みんなになら、私の遺伝子のことも話せる気がする。
どうせ女は一人だろうと思っていたパイロット候補生。
ナスティのような親友を得られたこと、本当に感謝してる。


「お詫びに、今度の休暇はもっとバカ騒ぎしようゼ!」
「お詫びじゃなくていいけど。・・・いいね! 何しよっか。」
「次の休暇はラクス嬢の訪問か? アスランは。」
ディアッカの言葉にうなずくアスラン。
間髪いれずにニコルの穏やかな声がアスランを直撃した。

「やめてあげて下さいね? またハロを持っていくのは。」
「いや、あれは!・・・彼女が気に入った、と言うから・・・。」
「限度があるだろうが! 限度がっ!!」

これからしばらくの間は、アスラン=ハロでからかわれること間違いなし。


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