月の月面都市、コペルニクス。
4歳の頃、プラントからこっちに移ってきて、あれからもう8年が経つ。
「キラーーー! 遅刻しちゃうよ、まだーーー?」
すっかり恒例になった朝のあいさつ。
私はアスランの自転車の後ろに乗って、2人でキラのお迎え。
私が家の前で声を張りあげると、あわててキラが飛び出してくる。
ありゃりゃ、今日はパンを口にくわえたままだ。
「よっぽど起きなかったんだ? 今日は。」
キラが自転車に飛び乗るのを確認して、アスランが自転車を走らせた。
「しょーがないじゃん! 昨日なかなかセーブポイントに着かなかったんだから。」
何がしょーがない、だ。
「やっぱりゲームやってたんじゃん。」
「キラ、ゲームやってて、課題はどーしたんだ?」
そんなアスランの声、キラはすっかり無視してる。
やってるわけないじゃんか、キラが。
マイクロユニット製作、キラが苦手なの知ってるくせに。
「アスランのいじわる〜〜〜。」
キラの代わりにそう言って、脇の下をくすぐった。
「おい、やめろよ! !」
ぐらり、と揺れた自転車。
しまった! 私、いま、アスランと同じ自転車――――!!
ありえないくらいハデに転んで、キラはそんな私たちを指さして笑った。
ものすごく痛かったけど、キラにつられて私も笑った。
「まで笑うな! お前に怪我させたら、俺がラレールおじさんに殺されるじゃないか!」
すっごく本気で怒鳴ってるけど、
「アスランの怒るトコって、それなのー?」
ありえなーい!
と、また大笑いした2人に、今度こそ、の、アスラン・ザラ君の雷が落ちた。
私とアスランは親類じゃない。
けど、私の家は、アスランのザラ家に居住していた。
それは私たちが産まれる前から、当たり前の姿だった。
同じ年に私たちは産まれて、それからずっと一緒にいる。
プラントから月に来て、コペルニクスの学校に入ることになった時も、当然のように2人一緒で。
私のお父様、ラレール・も、アスランのお父様のパトリックおじさまも、
国の仕事でプラントに残ったけど。
私のお母様、レイラ・も、アスランのお母様のレノアおばさまもいてくれたし、
何よりアスランがいれば、さみしいとは思わなかった。
そしてこの、キラ・ヤマト君。
彼の両親はナチュラルで、彼は一世代目コーディネーター。
月の学校に入学したときから、ずっと一緒の幼なじみ。
月、は商業都市のコペルニクスと、あとは軍の施設や、開発者の研究施設があったり、で。
あまり人が定着するような場所ではなかった。
だから、学校も転入・転校がはげしくて、入学したときからずっと一緒なのは、
私たち3人だけだった。
もしかして、
何もかわらずに、ずっと今のままでいられると思っていたのも、
私たち3人だけだったのかな・・・。
back / next