月明かりの、きれいな夜だった。
蒼白いその光は、どこまでも悲しい光に見えた。
「あぁ、かくれた。」
窓際にたたずみ、月を眺めていた私は、魂までも引き込まれていきそうな感覚で。
それが心地よかったのに・・・。
月は半分雲にかくれた。
あそこには、大好きな幼なじみのキラがいる。
「もどれない・・・って、ことかな?」
私の中の“何か”が変わってしまったように。
部屋の奥で、人が動いた気配がした。
アスラン?
声には出さずに、くちびるだけが名前を呼んだ。
「起きてたのか?。・・・・風邪ひくぞ?」
言われた私は、何も身に着けていなかった。
毛布などで身体を包み、それを隠すこともしていなかった。
「もう帰るから、今服着るよ。」
まだボーっとしてるアスランをよそに、私は手早く服を着て、アスランの部屋を出て行った。
普通はきっと。
恋人なら、朝までずっと、一緒にいるんだろうな。
愛し合ってした、行為のあとなら。
でも。
違うから。
私とアスランは違うから。
別に、好き、じゃない。
知った人としては好き。だけど。
恋人の、それとは違う。
愛しては、いない。
ただ、身体を重ねた。
ただ、それだけの行為でしかない。
行き場のない思いを、ぶつけ合っただけ。
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