私たちはみんな、間違ったのかもしれない。
ただこの世界に存在して、愛されたいと願って・・・・。

私を私だと愛してくれる人がいれば、それでいいはずなのに。
それ以上を、どうして望んでしまうんだろう。

かわいそうな人たち。
愛されることを、知らない人たち。

誰かに愛されていれば、間違えることなんてなかったのに。


ねぇ、イザーク。
私は私だと言ってくれて・・・、愛してくれて。

ありがとう。










〔 過去と違う未来 PHASE:49 〕










に呼ばれた気がして、イザークはブリッジのモニターを見た。
あれから連合の黒い機体をも撃破したイザークは、被弾したバスターをかばって、足つきに乗艦していた。
ディアッカと、ナスティと、自分が、この艦にいるのはなんだか滑稽に思えた。

「おいイザーク、は?」
思いを同じくしたのか、ナスティがイザークに声をかけた。
イザークは無言で首を振った。

「あいつは今、国防本部直属で、議長付きの護衛だ。」
「じゃあ―――・・・。」
ナスティの目が、ブリッジのモニターに映るヤキン・ドゥーエに注がれる。
イザークもそれを見てうなずいた。
「ああ。ヤキン・ドゥーエにいる。」


突然中断された、ザフトの戦闘。
あわただしくヤキン・ドゥーエから飛び出してくる戦艦と、脱出艇。
何が起きたのかはうかがい知れないが、明らかなザフトの混乱に胸騒ぎを覚えた。

イザークは目を閉じた。
頭の中に浮かぶのは、愛しいの笑顔。

そのまま唇を噛みしめて、足つきの艦長席へむかう。
「おい、イザーク?」
ディアッカが呼び止め、ブリッジ内が何事かとざわめく。

艦長席には泣きはらした赤い目の女性が、そこにいた。
イザークはその艦長にむかって、頭を下げた。
「デュエルの機体修理をお願いしたい。・・・・頼む。」

イザークのその行動に、ディアッカとナスティは思わず顔を見合わせた。
イザークが人に物を頼む態度で頼みごとをする姿を、彼らも初めて見た。

「あなた・・・・どうして?」
「俺が助けにいかなきゃならない女が、まだあそこにいる。」
イザークのアイスブルーの瞳と、艦長のオレンジの瞳がぶつかる。
張り巡らせていた緊張をフッとほどいて、艦長が言った。

「いいわ。・・整備班、デュエルをストライクのパーツで修理して!」
動揺した面持ちの通信を一方的に切って、イザークに告げる。
「行きなさい。うちのクルーは仕事が早いわよ?」
「艦長?!」

ブリッジのクルーからも、動揺した声があがる。
イザークはあえてそのざわめきを相手にせず、艦長へまた頭を下げた。



格納庫に着くと、すでにデュエルにはストライクのシールドとライフルが装備されていた。
もともと破壊されていた部分が少なかったため、すぐにでも出て行ける。

「ボウズ! あんまりムチャすんなよ!」
いかにも職人気質な足つきのクルーから声がかかる。
ボウズと言われることにはカチンときたが、そんな言葉を自分にかけてくれる足つきのクルーには驚いた。

コックピットに乗りこむと、足つきのハッチが開いた。
管制のモニターが開かれると、自分と同じ年頃の少女が映る。
そのうしろには、見知った顔がふたつ。
ディアッカとナスティだ。

「大分混乱してるぞ、気をつけていけよ?」
が呼んでるぜ?」
「あぁ!」

イザークが飛び出す先を見すえた。
「進路クリアー、発進、どうぞ!」
少女の声が聞こえ、イザークはそれに答える。

「イザーク・ジュールだ。デュエル、出るぞ!」



足つきを飛び立つデュエル。
かつてあれほど討ちたいと願った、ストライクのパーツと共に。

イザークは知らなかった。
足つきの艦長、マリュー・ラミアスの想いを。

恋人と仲間をかばって、死んでしまった愛しい人。
ストライクに乗っていた彼は、もう還らないから・・・・。

あなたは、還ってきなさい。
恋人を守って、還ってきなさい。
こんな想いを遺して生きるのは、私だけでいい。

突き動かした想いが、ムウ・ラ・フラガの死であったことを―――・・・。





   back / next