「くるぞ! 散開!」
プラント守備隊の先陣に立ち、イザークはさけんだ。
彼らの後ろには、整然と並ぶプラント本体がある。
背水の陣とはまさにこの事かと、イザークは奥歯を噛みしめた。










〔 過去と違う未来 PHASE:47 〕










「プラントに放たれる砲火、ひとつたりとも通すんじゃない!」
自分の部隊へ喝を入れてメビウスを次々に撃破するも、それは到底及ばない。
加えて、地球軍の新型三機に、仲間たちが討たれていく。
イザークのデュエルもまた、黒い機体から執拗に攻撃を受けていた。

「くっそぉっ・・・・・届けぇぇぇっ!!」

懸命にデュエルのバーニアをふかし、その機体を振り払う。
そこへ、ミーティアを装着したフリーダムとジャスティスが舞い降りた。
いくつものミサイルが、プラントへ放たれた核ミサイルを撃ち落していく。

「あいつら・・・・。」
イザークが安堵して息をひとつ吐いたとき、背後から衝撃に襲われた。
あの黒の機体の鉄球が、ついにデュエルに衝撃を与えたのだ。

「ぐっ・・・?!」
形勢を立て直そうとするも、無重力の宇宙空間ですばやくは動けない。
敵の砲口にエネルギーが集中した。

―――やられる?! !!

イザークの頬に冷たい汗が流れたとき、一射のビームがその敵機をなぎ払った。
振り返ったイザークの目に飛びこんできたのは、バスターだった。
「ディアッカ・・・・。」


そのコックピットに座る者の名前を、イザークはよく知っている。
理想論を語り、ザフトを去った友。
けれども、敵ではない。
彼らの行動は、敵ではないのだ。

大がまを構える機体を、ジャスティスが押さえる。
そのむこうでは、イザークが執拗に追い続けたストライクと同型機が、核ミサイルを撃ち落していた。

仲間、ではないが、敵、でもない。
彼らは同志だ。
このくだらない戦争を、本気で終わらせようとしているその志が同じなのだ。

「これで・・・・、いいんだな? 。」
愛しい人の名を呼んで、イザークはなおもデュエルを敵軍の中へ駆った。



プラントを攻撃してくる地球軍を、足つきが討った。
かつて、自分たちが躍起になって落としにかかっていた艦だ。

足つき、アークエンジェル。
フリーダム。
ジャスティス。
ストライク。
バスター。

そんな感慨にふけっていたから、自然と身体が動いた。
ストライク同型機が、大がまを持った連合のモビルスーツに狙われた姿を見て。

シールドを掲げ、ストライク同型機の前に飛び出す。
アンチビームコーティングされたシールドは、難なくそのビームを弾いた。
示し合わせたかのように、バスターが援護射撃を放つ。

イザークは、ニヤリとつりあがる口元を隠すように気合を入れた。
こうしてまた、ディアッカに援護されて戦う自分が誇らしかった。

ビームサーベルをスルリと抜き取り、間合いを詰める。
連続して撃ち込まれるビーム砲に、デュエルのシールドが限界に達した。
イザークは軽く舌打ちをすると、アサルトシュラウドをパージする。

その爆発で目をひきつけておいて、デュエルのバーニアをふかすと、相手の懐に飛び込んだ。
腕をなぎ払い、コックピットにサーベルを突き刺す。
敵機は誘爆を引き起こし、闇に飲まれていった。


「やるねぇ、イザーク。」
「ラスティ?!」
突如として飛びこんできたその軽薄な言動に、イザークの口はかつての友の名を呼んだ。

見慣れぬ機体は躊躇したように動きを止め、けれどすぐに通信回線を開いてきた。
モニターに表示されたのは、イザークが呼んだ名の主の、双子の姉だった。

「オレたちって、声まで似てたんだな。」
「・・・・すまん、ナスティ。」
いるはずのない者の名を呼んでしまったイザーク。
けれど、自分の半身とも言える弟を奪われた姉は、そんなイザークに笑いかけた。

「それならオレの存在が、ラスティが世界に生きた印になるよな?」
―――だからオレは生きる。


つながれたナスティの言葉に、イザークは今度こそこみ上げてくる想いに視界がにじんだ。
自分たちからたくさんのものを奪った戦争が、終わろうとしている。





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【あとがき】
 ヒロインがいませーん。ごめんなさい。
 フリーダム、ジャスティス連係でも倒せなかった連合新型3機。
 そのうち2機を倒したイザークのデュエルは旧型ガンダム。
 やっぱりMS戦闘最強はイザークですね♪