ジェネシスの破壊力に、誰もが言葉を失っていた。
敵味方なく、ただジェネシスの威力に呆然とする中、おじさまの声だけが宙域に響き渡る。
〔 過去と違う未来 PHASE:46 〕
艦隊の半数以上を失って、撤退していく地球軍。
それをまるで楽しむかのようにいちべつし、おじさまはジェネシスの二射目準備を指示した。
握りしめた私の掌に、汗が浮かぶ。
どうしたらいいんだろう。
どうしたら・・・・・っ!
「ムダだよ。」
ゾクッとするほど冷たい声をかけられ顔をあげると、見慣れたラウの仮面が映る。
「君が何を言っても、その言葉はもはや届かない。」
「ラウ・・・・・・・・・?」
名を呼べば、あざけるように笑うその姿に、嫌悪感を抱いた。
「優秀な君の遺伝子は、どうすればこれが止まるのかを知っているようだが?」
身体の中に這い上がってくる、黒い感情。
ラウの言葉に愕然としながら、おじさまを見た。
殺す・・・・・?
おじさまを?
湧き上がった悪しき思いを打ち消すように、懸命にかぶりを振った。
どうしてラウは、こんなことを言うのだろう。
ラウは、何を望んでいるのだろう・・・・?
「地球軍、進撃を開始しました!」
オペレーターの声が、ジェネシスのミラーブロック換装を進めていた司令室に緊張をもたらす。
「あとわずかだ。持ちこたえさせろ!」
おじさまが怒鳴りつけると、それまで私をあざけるように身をかがめていたラウが、おもむろに背を伸ばした。
「では、私も出ましょう。」
この男の意図が、私にはまるでわからなかった。
「クルーゼ。エターナルを討てなかった貴様の責任においても、ヤツらにプラントを撃たせるな!」
おじさまの返答を待たずに退出しようと歩を進めていたラウが、振り返る。
「・・・・アスランを、討つことになってもよろしいので?」
その口元にはまた、あざけるような笑みが浮かんでいた。
おじさまの顔が硬直し、動揺したかに見えた。
けど。
「かまわん!」
言い放ったおじさまに、ラウはいっそうの笑みを漏らし退室した。
「おじさま!?」
その言葉の意味することの重さに、私はいよいよおじさまに噛みついた。
「本気ですか?! 本気でアスランを―――?!」
けれどおじさまは、私の声に振り向きもせずに立ち上がった。
「目標点入力、月面プトテマイオス・クレーター、地球軍基地!」
「おじさまっ!」
私のかける声を振り払うかのように指示された、ジェネシスの二射目。
おじさまにすがりつく間もなく、放たれる光。
突如として月にあがる、巨大なキノコ雲。
月が・・・・!
あそこには、幼い日の私がいる。
キラがいて、アスランがいて、母たちがいる。
ただ幼く、幸せだった頃の私。
戦争なんて、遺伝子なんて・・・・、知らなかった私。
今の攻撃で、コペルニクスだって少なからず影響を受けただろう。
「ミラーブロック換装急げ。」
たたみかけるように告げられた言葉に、司令室がざわめきを増した。
モニターの中では、足つきと同型艦の地球軍艦が、ジェネシスからプラント本体へ転進していく。
プラントの前面にはプラント守備隊が配備され、その中にはイザークのデュエルも確認できる。
月基地を失い、増援も補給も断たれた残存部隊に、できることなんてなかった。
彼らの艦も、新型のモビルスーツも、次々に撃ち落されていった。
地球軍を一掃したのち、ジャスティスとストライク同型機がこちらに向かってくる。
みんな、あそこで戦っている。
ナスティ、アスラン、ディアッカ、キラ、イザーク・・・・。
じゃあ、私がここでできることは何?
言葉はもはや通じずに、今またジェネシスの三射目を指示しようとしている、おじさまを止める方法は?
着慣れた赤の軍服。
その内ポケットには、使い慣れているナイフがある。
私はそのナイフの柄に、そっと手をかけた。
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【あとがき】
ドミニオン爆散。ムウさん爆死。
・・・・ドコヘ・・・・?
イザーク大活躍は書きますよー。