定刻通りに開始された戦闘。
連合の圧倒的な物量と、初めて見る三機の新型モビルスーツに、終始押され気味で戦闘は続いた。
〔 過去と違う未来 PHASE:37 〕
大気圏での単体飛行ができないバスターは、足つきを援護していた。
ストライクはM−1部隊の支援にまわっている。
単体飛行可能なダークフレームシリーズに乗っている私とナスティは、連合の新型を抑えるのに手一杯だった。
量産機とは違う火力。
パイロットも、ナチュラルの動きとは思えなかった。
キラのナチュラル用OSは、連合にもデータとして伝わってしまっていた。
ストライクダガーには、そのOSのクセが多々見られた。
そのOSのクセが、この三機にはなかった。
背に二つの巨大なビーム砲を持つ機体が、フリーダムを地上から狙っていた。
「キラ!」
鉄球を振り回す変形可能な黒いモビルスーツを振り切って急降下するも、一瞬早く二つのビーム砲が放たれる。
ビームを曲げる特殊なモビルスーツと交戦しながらも、キラはそれをかわした。
自動オールロックオンシステムで、今度はキラが反撃する。
「! 二機でかかるぞ、離れるな!」
「うん!」
ナスティと一緒になってモビルアーマーに変形した機体を狙うも、決定打を撃ちこめずにいた。
「右! 散開!」
ナスティに命じられるがまま機体を動かすと、さっきまで自分のいた場所にビームが通り過ぎた。
やっぱりナスティはすごい。
背中を伝っていく冷や汗に気づかぬフリをして、戦闘を続ける。
「避けろ! キラぁっ!」
危険を知らせるナスティの声に顔をあげる。
フリーダムがカーキ色の機体の巨大な鎌になぎ倒され、バランスを崩していた。
黒い機体の頭部からエネルギー砲が、そのフリーダムへ放たれた。
一瞬の隙をつかれて、フリーダムの回避が遅れた。
「キラ!」
声をあげたとき、フリーダムをかばうように赤の機体が舞い降りた。
「なに・・・?」
機体がシールドを退けると、現れたのはXナンバーと酷似した外見。
「ガンダム・・?」
友軍機? でもこれは・・・・。
突然争いに介入してきた新型に、両軍のモビルスーツが共に動きを止めた。
フリーダムをかばった、という点では友軍と判断していいのだろうが・・・・。
手元のモニターに表示されたデータでは“アンノウン”。
それでも私は、赤の機体を友軍機だと認識した。
“友軍”ではないかもしれないけど・・・・。
心当たりがあった。
新型のモビルスーツに乗っていて、キラを援護する人物に。
それはまだ、本当に小さな希望の種でしかなかったけれど。
二機の新型モビルスーツが、海岸に降り立つ。
連合側は、一時的に撤退していた。
同じ場所に機体を降ろすことを戸惑い、ナスティやディアッカと、少し離れたところに機体を降ろした。
ラダーにつかまり地面に降りると、二人もいぶかしげな顔をして新型の機体を見ていた。
同じようにしてフリーダムからキラが、ラダーを使い降りてくる。
赤い機体からは、それと同じ色のパイロットスーツが降りてきた。
――――やっぱり、そうだったんだね。
「アスラン?」
ディアッカがその名前を呼んだ。
私は胸の奥がくすぐったくなるのを感じた。
やがて二人は歩み寄り、ぎこちなくほほ笑みあう。
見かねたようにカガリが、二人の再会を称えて飛びついた。
モルゲンレーテのドッグの中で、オーブの兵士があわただしく行き交う。
いつ再開されるとも知れない連合の攻撃。
傷ついた機体の改修が、整備班により急ピッチで進められていた。
キラが、アスランが、伸ばせば届く距離に、向かい合って座っていた。
淡々と自分の意思を告げていくキラに、アスランはただ、絶句して呆然としていた。
オーブも、キラも、足つきも、連合やザフトには組しない。
ただ自分が正しいと信じ、護りたいと願うもののためだけに、戦う。
それは理想でしかないと言うアスランに、キラが紡いだ言葉は、その場に居合わせた者たちの“何か”を揺さぶった。
「僕は、君たちの仲間・・・・・友達を殺した・・・・・。」
・・・・・ニコル・・・・・・。
私のとなりに立つナスティが、さっと顔をキラからそむけた。
ぬぐっても消えない記憶と、呼び覚まされる怒りを、必死にこらえている。
「僕も一度、会っていたのにね。ここで。・・・君の後ろにいた、緑色の髪を覚えてる。」
「キラ・・・お前・・・・?」
穏やかな顔をすぐに苦痛にゆがませて、キラが続ける。
「―――でも僕は、彼を知らない。殺したかったわけでもない。」
キラが顔をあげて、ミリアリアを見た。
次の言葉をためらいながらも口にするとき、キラの顔はまた苦痛にゆがんだ。
「君も、僕の友達、トールを殺した・・・・。でも君も、トールのことを知らない。殺したかったわけでもないでしょ?」
キラの言葉に、ミリアリアの顔がゆがんだ。
みるみるうちに目に涙を溜めて、それでも必死にこらえている姿が痛々しい。
しばらくの沈黙のあと、言葉を発したのはやっぱりキラだった。
「だけど僕は、の大切な人を助けた。」
「は?」
さっきまでとはうって変わって、にっこりと笑うキラに戸惑うアスラン。
キラがほほ笑むその先に、私と、ナスティと、ディアッカがいる。
「お前ら・・・っ?!」
ガタンッとお約束のように大きな音をたてて、私たちを見るアスラン。
もしかしなくても、今やっと存在に気づいたらしい。
「そう。キラは助けてくれたの。ナスティも、イザークも。」
「・・・・おい、アスラン。なんて顔してやがる。」
「俺たちゃ、ユーレイじゃねえっつーの!」
にやにやと笑う私たちに物言わず歩み寄り、アスランは私を抱きしめる。
「生きてるんだな?!・・・本当に・・・・。?」
「うん。・・・心配かけて、ゴメンね? アスラン。」
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【あとがき】
MIA三人組登場!
アスランは目の前のキラに精一杯で、周りにまで気を配っていなそう。
原作でもこのときゼッタイ、ディアッカに気づいてないですよねー・・・。