満身創痍の足つきは、無事にオーブへの航路をとっていた。
傷を負ったナスティも、順調に回復していた。
今日初めて、キラが私について医務室を訪れている。
〔 過去と違う未来 PHASE:31 〕
「お前がストライクのパイロットだぁ?!」
まだ点滴の針が刺さった腕をギリッと握りしめて、ナスティがキラをニラみつけた。
「そうです。」
「・・・そんであの“フリーダム”? で、オレを助けたのも、お前・・・?」
だんだんと言葉に勢いを無くして、ナスティが言った。
「はい。そうです。」
気取らないキラの答えと笑顔に、ナスティはため息をついた。
「殴ったら吹っ飛んでいきそうだな。・・・お前に黒星続きだったのかよ・・・っ」
「ナスティ?!」
今にも起き上がりそうなナスティを、私はぎょっとして止める。
「で? もうお前は地球軍じゃねぇのか。ちっ、勝ち逃げかよ。」
言葉とは違って、その顔に笑顔が浮かんでいた。
ナスティは意識を取り戻してから、私の話で状況を知った。
JOSH−Aのサイクロプス作動までが、ナスティの記憶だった。
キラの素性。
キラに助けられたこと。
ナチュラルの医師に治療されたこと。
足つきの現状。
私が受けた衝撃と同じく、それが急に押し寄せてきたナスティは混乱した。
けれど本来、私なんかより遥かに頭のいいナスティは、自分の中ですっかり気持ちを整理したらしい。
「オーブに着くのか。この艦。」
「うん。もう領域に入ったよ。艦はオノゴロ島に入れてもらえるんだって。」
「・・・・なんか、懐かしい気もするな。」
ナスティがぽつりと言った。
前にオノゴロ島に来たときは、ニコルがまだ一緒だった。
キラがニコルを殺した張本人だと知っても、ナスティは一言もキラを責めなかった。
戦争に殺されたニコル。
憎む者は、他のなにでもない。
自分の置かれた状況と、今まで敵対していた足つきの状況に、ナスティもそう思ってくれたのだと信じた。
「。オレたちはどーすんだ?」
「ナスティはまだ安静が必要だって、軍医さんが言うの。だから私も付き添うよ。」
「でもお前、それじゃ・・・。」
姿を隠すように航行している足つき。
そこからザフトへ連絡を入れることは、足つきを危険にさらすようなもので。
自分たちを救ってくれた艦を、そんな目にあわせる気にならなかった。
ナスティも、同じ気持ちでいてくれたから、私たちはザフトへ連絡をとっていない。
つまり私たちは、JOSH−Aの戦闘時から姿を消してしまっていることになる。
どう考えてみてもサイクロプスに巻きこまれたと、MIAに認定されているだろう。
「いいの。ザフトでどう判断されてたって、私たち、こうして生きてるでしょ?」
それに、ナスティを一人、置いていくなんてできない。
このままの気持ちで、ザフトには戻れない。
「でも。それじゃイザークだって、お前を死んだものって・・・・。」
知らない名前が出て、キラが私を見た。
私は、ナスティとキラを交互に見て笑った。
「イザークは、待っててくれてるよ。」
また拳、打撲しちゃってるかもしれないけど。
ナスティも同じことを考えたのか、ふっと笑った。
まだナスティには安静が必要だから、と軍医さんに部屋を追い出された。
いまだに足つきに乗っていることで落ちつかない気分になる私は、ナスティと会う時間以外はほとんどキラと過ごしていた。
キラは士官室を与えられていたから、くつろぐには最適だった。
アスランが造ってくれたというトリィが、部屋の中を旋回している。
さっきからチラチラ私をうかがっていたキラが、おもむろに立ち上がる。
「キラ?」
声をかけると、ちょっと怒ったような顔をしながら、私のとなりに腰かけた。
「あのさ、。・・・・・“イザーク”って、だれ?」
予想もしてなかった質問に、指に止まらせていたトリィを落としそうになった。
「がMIAになって、一番心配するのはアスランじゃないの? ねぇ、イザークって誰?」
キラの気迫に一瞬たじろいだ。
そっか。
キラ、知ってたんだ。
アスランの気持ち。
キラのアスランを思う気持ちにたじろいで、苦笑いをする。
「キラ、言うから。説明するから!」
だからそんなにすわった目をして私に、にじり寄るのはヤメテ。
「“イザーク・ジュール”は、私の好きな人で、婚約者。」
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【あとがき】
トリィをキラが持っていて、ハロをラクスが持っている。
あれ?私には何もないよ、アスラン。・・・と、は思った。
ライナなら猫型ロボット希望。(作品がチガウ)