デュエルのシヴァが、組み合ったキラのモビルスーツに火を噴いた。
キラのモビルスーツは、わずかに頭部を動かしただけでそれをかわす。
「何ィ?!」
焦りを含んだイザークの声は、私のコックピットにも届いていた。
キラのモビルスーツが、ビームサーベルに手をかける。
ぶぅん、と鈍い音をたてて、光のすじが一直線にデュエルのコックピットへ伸びる。
イザークへ、むかう。
イザークが・・・・・死ぬ?
〔 過去と違う未来 PHASE:28 〕
「いやあぁぁぁぁっっ!! キラやめてえぇぇぇぇぇっっっ!!」
私の大切な人を、これ以上殺さないで!
私の、一番大切な人を、殺さないで!
二つの機体へダークフレームを駆る。
間に合うはずがない、と、わかっていても。
キラのビームサーベルは、確実にデュエルのコックピットを狙えるはずだった。
けど私が見たものは、不自然にそれていく光の刃だった。
コックピットではなく、デュエルの両足をなぎ払って、キラは叫んだ。
「早く脱出しろ! もうやめるんだっ!」
バランスを失って落ちていくデュエルを、下空に飛ぶディンへ蹴り落とす。
「あいつ・・・・・・。なぜ・・・・?」
つぶやいたイザークと、私の心は同じだった。
そして同時に、ぞくり、と嫌なものが身体をかけ上がってきた。
キラは言った。
アラスカ基地が、サイクロプスを作動させて、自爆する、と―――。
「ナスティ! 撤退してっ!」
なおも足つきに斬りかかろうとしていたナスティに通信を入れる。
「はぁ? 補給は受けたばっかだろ?」
ナスティも、キラの言葉を信じてはいなかった。
「いいから早く!」
機体をひるがえしてバーニアをふかせた瞬間、アラスカ基地内で高エネルギー放射を確認した。
サイクロプス、作動。
うしろを振り返る余裕はなかった。
性能の高いダークフレームでさえ、空域からの離脱を恐ろしく長く感じた。
すでに離脱しているイザークは無事だろう。
でも、ナスティは?
ナスティは、どこ?!
アラスカ沖で展開する友軍艦まで来て、我に返る。
性能ではどうしても、ディンのほうが劣ってしまっている。
まだたいして役に立たないレーダーの中に、ナスティのコードを探した。
――――――ない。
サイクロプスの影響で、たった一機の熱紋を探すのは、不可能に近かった。
あきらめずに、ナスティとの通信回線を開く。
「ナスティ! ナスティ?! どこにいるの?!」
返事をして。
返事をして。
お願い!!
「ナスティってばっ!」
何度目かの絶叫のあとに、激しいノイズが割りこんだ。
「こち・・・・・・・。・・・・・の声・・・・・・・・・・。」
声は、ほとんど聞こえないのも同じだった。
でも、ナスティの声ではなかった。
それは、男の声だったから。
通信と共に送られてきたデータの場所に、私は迷わず機体を飛ばした。
あの声を、私はよく知っている。
コックピットの中で、ナスティのディンと、そのとなりにそびえるモビルスーツを確認した。
乱暴に機体を寄せて、ハッチを飛び出す。
ラダーにつかまっている時間さえも、いらだたしい。
ナスティはすでに、コックピットの外に運び出されていた。
抱きかかえるように身体を添わせていた彼が、私を見た。
「〜〜〜〜キラあっ!」
キラは生きていた。
その目が慈悲深く私を見て、ほほ笑み返していた。
「大丈夫。彼女も、大丈夫だよ。」
キラの腕の中で、ナスティはぐったりと意識を失っていた。
失ってしまったのかと思ったナスティと、失ってしまったと思っていたキラ。
二人とも、生きて目の前にいる。
あまりの安心感に、私はへなへなとその場にしゃがみこんだ。
「ごめんね、。君とも話がしたいんだけど、その前に、僕・・・・。」
キラが顔をあげて目をむけた方向には、足つきがあった。
そしてその周りには、こちらをうかがうように見る、クルーの姿も。
「の友達も、も、絶対悪いようにはさせないから、少し僕に付き合ってもらえる?」
そのすぐ先に、さっきまで命を奪い合おうとした人たちがいる。
そんな危険な状況にも、私はキラにうなずいていた。
イザークを殺さなかったキラ。
敵を殺さなかったキラ。
またひとつ、私の知らない顔をしたキラが、そこにいた。
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