P04、アストレイダークフレーム。
エリカさんがアスハ家にもサハク家にも秘密裏に開発したこの機体で、私は足つきへむかった。









〔 過去と違う未来 PHASE:23 〕










ダークフレームは、大気圏内での単体飛行を可能としていた。
連合のモビルスーツ開発を請け負っていたモルゲンレーテ。
けど、PS装甲やミラージュコロイドなど、主要な技術は当時伏せられていた。
今回ニコルのブリッツを回収したデータにより、その技術はオーブにも伝わった。

このP04、アストレイダークフレームには、ブリッツの右腕がそのままつけられている。
私が持ち帰った、ニコルの遺体と同じ部分。
私にこの機体を預けたいと言ったエリカさんにはただ驚くばかりだった。

「あなたと、このブリッツの意思を信じるわ。」
と、エリカさんは笑った。

まだ、何をすればいいのかはわからない。
けど、自分が憎しみですべて支配されてしまう前に、キラと話をしなければいけないと思った。



まだ、夜も明けきらない朝方。
小島がいくつも並ぶ海域にさしかかると、レーダーが熱反応を示した。

「でもこれ・・・・・。戦闘反応だ。」
雷鳴と共に降り出した雨に、身体がぞくりと震えた。
それは、初めてデュエルに乗ったときの、あの感覚に似ていた。


最初に目に飛びこんできたのは、小島に不時着した足つき。
かなりの損傷を負っている。

私が乗る機体は、ザフトの認識コードを持っていないため、両軍にとってアンノウン。
うかつには近づけない。

この戦闘が終わったら、足つきに行ってキラと話そう。
連合のクルーにザフトだとバレて、拘束されても構わない。
むしろ拘束されたままで、キラと話をしたほうがいいかもしれない。
目の前にキラがいて、私の両手が自由なら、殺してしまうかもしれないから。

いつもそうだったように、この戦いも消耗戦で終るのだと思っていた。
戦闘空域にはデュエル、バスター、ナスティの機体を確認することができなかった。
潜水母艦へ、補給に戻っているのだろう。

アカデミートップ5を独占した仲間たち。
きちんと訓練を受け、それを自分の能力にしてきたはずだった。
対するキラは、ほとんど一人でそのトップクラスのパイロットを抑えている。
この能力差は尋常でないとしか思えない。

潜んでいる私の機体の上を、連合の戦闘機が通過していった。
胸騒ぎを覚えてあとを追い、飛び込んできたその光景に息を呑む。


何もない小さな小さな島に、モビルスーツが二体。
イージスとストライクが、戦っていた。

「キラッ・・・アスランッ」
私が飛び出すより早く、連合の戦闘機がイージスにミサイルを発射した。
難なくその攻撃を逃れたイージスは、戦闘機にむき直る。
隙を与えずシールドを投げつけ、シールドは無残にもコックピットに突き刺さる。
爆発の閃光で、私のコックピットの中までも照らされた。

そのあとの二つの機体の動きは、戦闘と呼ぶには苦しすぎるものだった。
まるで機体を破壊し合うような行為に、目がくらむ。

本当にあれが、親友同士なのだろうか。
本当にあれが、私の知ってるアスランとキラなのだろうか。

もしかしたら、まったくの他人が乗っているんじゃないかとも思った。
敵同士というより、もっと恐ろしいものを感じた。
戦争と言うより、殺し合いだと思った。


イージスがモビルアーマーに変形して、ストライクに組み付いた。
と同時に、フェイズシフトがダウンする。

終った、と思った。
アスランが投降して、イージスから出てくるものだと。
私は計器をいじり、どうにかあの二人との通信を開こうとした。


――――ところが。


先の閃光よりはるかに強い光が、コックピットに飛び込んできた。
「な・・・に・・・・?」
ついさっきまでそこにあったモビルスーツは、どこにも見当たらない。

あるのはただ、巨大な爆炎。
その中に、かすかに見える二機のモビルスーツ。


おかしい。
これは何だろう・・・・。
何が起きたんだろう。


「アスラン・・・?・・・キラ?」


二機の機体が燃え上がるその姿を、事実と受け入れられずにいた。
ただこんなのは、間違っていると思った。




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【あとがき】
 イザークはさっさとやられて、撤退していました。
 そういえばちゃんは、地上でまともに戦っているイザークを見ていませんね・・・。