「よう、。ザラ隊、ナスティ・マッケンジーだ。」
〔 過去と違う未来 PHASE:20 〕
海からあがってきたナスティが、ウインクつきで告げた。
ザラ隊、と言ったところでイザークがぴくっと反応したのがわかった。
一時的に、とはいえ、アスランが隊長に任命されたのが当然気にくわないらしい。
「オノゴロは軍の施設とモルゲンレーテ社しかないから、完全な個人管理システムになってる。」
全員にIDカードを配りながら、私は言う。
「このカードで工場の第一エリアまでは入れるけど、あとは急にはどうにもできないよ。」
「は入れないのか?」
アスランに的をつかれてギクッとする。
カガリと話して、キラと話して、私は決めていた。
自分から、足つきの話はしない、と。
「私は入れるけど。・・・・足つきは見なかったな。」
「そうか。」
そして彼らはそれぞれの方向へ散っていった。
私はイザークとディアッカについていった。
アスランについていくと、私のウソがばれてしまいそうで怖かったから。
「結局カワイイ女の子しか見つからないな。」
打ち合わせた場所で落ちあうため、アスランとニコルとナスティを待っていたら、ディアッカがのん気なことを言った。
「貴様の頭の中はそれだけしかないのかっ!?」
当然イザークの雷をくらう。
「いや、ほら。何つーの? ナチュラルも悪くないって・・。」
「何を見ていたんだ、ディアッカ!!」
ディアッカの言葉をさえぎってイザークが叫んだ。
ディアッカがあわてたように話題を逸らす。
「ああ、ほら! あいつら来たぜ?」
「ふん! こんな見せかけだけの平和にだまされてたまるか。」
イザークの言葉に胸が苦しくなった。
ここ数日、オーブに来てから初めて、思い悩んでいることがある。
自分の存在意義。
私は、だまされているだけなの?
見せかけだけの、平和の国にいて。
「。この場所のデータが空白だぞ?」
オノゴロの見取り図に目をやって、アスランが言った。
「オノゴロ島はまだ、衛星からもうかがえない部分が多いんだよ。」
私の言葉に、アスランはディアッカに車を止めるように言った。
「ならこのあたり、怪しいんじゃないか?」
車を降りていくアスランに、私の鼓動が聞こえてしまいそうだ。
ディアッカが車を止めたのは、第三工区のドッグ前、海沿いの側道。
この工区内に、みんなが探している足つきがある。
「、このフェンスって乗り越えたらヤバい?」
「こげるよ、ナスティ。」
ふざけながらもそれぞれが、侵入路を見つけようとしていた。
「は、ここに入ったことはあるんですか?」
「うーん・・・。モルゲンレーテは広いから。」
空が夕日に染まりだす。
私とナスティとニコルは、海へ沈む太陽を見ようと工場に背をむけた。
―――そこへ。
「トリィ・・・・・・。」
聞き覚えのあるロボットの音声が耳に届いた。
振り返る私の目に、オレンジの空を飛ぶ緑のロボット鳥が映る。
「トリィ。」
ロボットの動きとは思えないほど丁寧に、私たちの上を旋回した。
そしてアスランの手にとまる。
「なんだこりゃ。」
イザークがアスランの手の上で首をかしげる鳥を見た。
「へぇ、ロボット鳥だ。」
ニコルも笑いながらその鳥を撫でた。
愛らしいそのロボットの存在に、私以外の誰も気づかない。
アスランの手が震えていることに。
「あぁもう、どこ行っちゃったのかな。・・・トリィ?」
ドッグ内からとび出してきたキラの姿に、胸がチクリと痛んだ。
――――見つかってしまった。
キラとアスランが、出会ってしまった。
どうして見過ごしてくれないんだろう、運命は。
どうして出会ってしまうんだろう、敵として。
キラのほうへむかって、歩いていくアスラン。
驚いて、ただ目を見開くだけのキラ。
キラを、ストライクのパイロットだと知っているアスラン。
キラとここで出会うことは、足つきの存在を裏付けている。
見ていられなくなって、私は目を伏せた。
無二の親友だったはずの二人は、今、フェンスを隔てて敵同士。
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