パナディーヤの官舎に戻ると、なんだかとても慌ただしかった。
〔 過去と違う未来 PHASE:17 〕
どうやらついさっき街中でブルーコスモスのテロがあったらしく、パルトフェルド隊長が狙われたという。
だから自分でコーヒー豆買いに行くのやめましょうよって言ったのに。
イザークとディアッカを部屋に案内して、私は報告のため隊長の部屋にむかっていた。
廊下を右に曲がりかけて、前から来る人物を目で捉えるなり、あわててきびすを返した。
頭からケバブソースをかぶった少女が、アイシャに連れて行かれる。
彼女は紛れもない、カガリ・ユラ・アスハ。
今こんなザフトの軍服を着ている私を、見られていい人物ではない。
私はそこから立ち去った。
報告が遅れても、これが理由なら許されるはずだ。
部屋で報告書を整理しようと意気込んだところに、隊長から通信が入った。
至急部屋に来るように、と言われて走ってむかう。
カガリはおそらく、帰ったのだろう。
こんなところにどうしてカガリがいたのかと、私は逆に隊長に聞く気でいた。
「・です。命令により出頭いたしました。」
「入りたまえ。」
てっきり隊長がひとりでいると思って入室した部屋には、驚いた顔で振り向く二人の見知った人物がいた。
「・・・・・・?」
「なんでがそんなモノを着ている?!」
キラ。
カガリ。
バルトフェルド隊長、どうして・・・・?
「おや? 彼女とだけでなく、はストライクのパイロットとも知り合いかい?」
ひょうひょうと言うバルトフェルド隊長。
どうしてキラを知っているのだろうか。
どうしてキラが、ストライクに乗っていると。
「キラが地球軍の軍服を着て現れたと思ったら、今度はがザフトの軍服かよ?! どうなってるんだ、これは!」
うろたえるカガリに、隊長が言った。
「キミも本来は“平和の国”にいるべき子だろう?」
キラはどういう意味かと首を傾げたが、カガリは言葉に詰まった。
「と、いう訳で。キミの潜入任務は今日をもって終了だ。ご苦労だったね。」
隊長のセリフに言葉を失うカガリ。
私を見る目が、信じられないと言っていた。
どうしてキラとカガリがここにいるのか、とか最初に感じた疑問は吹っ飛んでいた。
今は早く、ここから出て行きたい。
けど、命令として入室した私に、勝手な退出が許されるはずもない。
「私は信じない! がザフト・・・・敵なんて・・・・・。」
カガリの言葉が、だんだん小さくなる。
キラはただ、だまって私を見ているだけだった。
「そう。キミたちも敵同士だよ。なら討つかね? 友人と知ってもなお、敵であれば滅ぼすのかね?」
友人と、知ってもなお・・・・・。
私とカガリ。
私とキラ。
キラとアスラン。
「どちらかが滅びるまで戦うというのかね? プラントは。―――キミたちは。戦争はそうしなければ終らないのかね?」
戦争の終りかた。
そんなこと、考えたこともなかった。
ただプラントを護る、と、そのことを信じて人を殺めた。
プラントを護る。
コーディネーターを護る。
それはつまり、ナチュラルを、滅ぼす―――・・・?
三人が押し黙っていると、バルトフェルド隊長がひとり、口をひらいた。
「帰りたまえ。今日は話しができて楽しかった。・・・・良かったかどうかはわからんが、ね。」
そして付け足すようにカガリに言った。
「をうらまないでくれ。彼女はボクの命令で動いていたにすぎない。」
無言で部屋をあとにする二人。
うつむいたまま、顔をあげることもできない私。
「。二人を送って行きたまえ。報告はその後で構わんよ。」
バルトフェルド隊長は、私に何をさせたがっているのだろう。
ドレスからさらに服を着替えるため、カガリは再びアイシャに連れられた。
キラと、二人きりになる。
以前戦闘で、スピーカー越しに言葉は交わしている。
けれどこうして向き合って、顔を見るのは、月を離れたあの日以来。
「・・・・・久しぶりだね、。君の軍服の色、ほかの人と違うんだね。」
キラには勝ち取ったこの“赤”の軍服も、何の意味も持たない。
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【あとがき】
もしキラが軍服着てれば、ちゃんだって思ったと思う。
『キラの軍服、ほかの人と色が違うね』って。