太陽の光に朝を感じる。
プラントとは違う、本物の太陽。
でもニセモノも本物も、どちらも同じと思うのは、私がプラント生まれだからだろうか。










〔 過去と違う未来 PHASE:16 〕









イザークは痩せているのに、ウデの筋肉はすごいな。
ウデ枕をしてもらいながら、そんなことを考えていた。
「起きたのか?」
ぶっきらぼうに声がかかり顔をあげると、傷を負ってもなお、綺麗な顔が目の前にあった。

「おはよう、イザーク。」
「あぁ。」
私はまた、イザークを見て笑った。

「ねぇ、もう少しこのままでも平気?」
「あ?」
「私、イザークに聞きたいことがあるんだけど。」
「なんだ?」
実はずっとずっと気になっていたことがある。
アカデミー時代にさかのぼってしまうほど、昔から。

「イザークは、いつ私のことを“気に入った”の?」
私がアスランと身体だけの関係をもっていたと知っても、婚約を取り下げなかったイザーク。
軍に入る直前、イザークの家で初めて“好きだ”と言われた。
けど私にはいつも突然で、私の何をどう想ってくれているのか、まったく知らないままだった。

「今さら何を言っている。」
案の定イザークはベッドから起き上がり、自分の服を整えだした。
昨日まであんなに病人だったのに、それがウソのように回復している様子だ。
そのことには安堵しつつ、答えてくれないイザークをじっと見た。

「おい。いつまでそうしてニラんでいるつもりだ?」
さすがに凝視され続けて気分が悪いのか、イザークが言った。
「答えてくれるまで。」

こんな穏やかな日が、これから先あるとは言えない。
二人が元気になったなら、パナディーヤにむかうのだ。
そこではまた“足つき”。アークエンジェルとの戦闘がまっている。
そしたらまた、こんな話題は出てこなくなる。

その後も無言でじぃーっとイザークの動きを追い続ける私に、イザークはとうとう観念した。
「もうわかった。話すからいいかげんにしろ!」
頭をコツンと拳でたたかれて、服を全部渡される。
「その前に、ちゃんと服を着ろ。」

勝った!
くだらないことに喜んで、私も服を整えた。


「まぁ、なんだ。そういうところだ。」
襟元のホックをとめた途端、唐突に言われた。
「はい? 何が?」
私が聞き返すと、真っ赤になって顔をそむけるイザーク。
「だから! が聞いてきたのだろう?!」
もしかして、“気に入った”の理由?

「俺はこんな性格だからな。怒鳴れば逃げていくような女に興味はない。」
ディアッカから聞いたことがある。
今までにも何度か、エザリア様はイザークに婚約相手をつくろうとしたことがあると。
でもイザークはいつも門前払いで、成立に至ったことはないと。
だけだ。俺に対してちゃんと向き合って話をした女は。」



初めてイザークと話をしたとき。
それはアカデミーの入学式だった。

パイロット候補生で振り分けられたクラス割り。
その中に私とナスティ。
女子が二人いたことで、イザークが言った。
「部屋を間違えていないか? ここはパイロットになる者が来る部屋だ。」
当然私はムッとして答えた。
「じゃあ、貴方こそ部屋を間違えてるみたいよ?」

そのあとは取っ組み合いの大ゲンカになる寸前で、ディアッカとアスランが止めに入った。
最後に私が言ったセリフは、
「女であることを差別しないで!」だった。
イザークはそれ以降、私たちと対等に接し続けた。



「じゃあ―――・・・・・え? 最初っから?!」
「ディアッカの部屋はどこだ? ヤツを誘って朝食にするぞ。」
「ええ?! ちょっと待ってよ、イザーク!」

まるっきり何事もなかったように装っているイザーク。
だけど右手首の軍服のホックを止め忘れているのを、私はしっかり見ていた。
しかも顔が赤いんだから、隠しようがないのに。


穏やかな日がくれた、穏やかな時間に感謝しつつ、私はくすくす笑った。




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【あとがき】
 本編『穏やかな日に』と時間軸をあわせつつ、
 イザークとちゃんバージョン、『穏やかな日に』と思いながら書きました。
 次はいつ、イザークと穏やかな日をすごせるんだろ・・・。