「俺はすっかり元気だから、はイザークについててやれよ。」
ディアッカの言葉に、私は存分に甘えさせてもらうことにした。
意識も戻って回復もいちじるしい彼は、療養のため士官室へ移された。
部下思いの私の隊長は、二人が回復次第、パナディーヤに案内すること、を、私の任務にしていた。
〔 過去と違う未来 PHASE:15 〕
「イザーク。」
そっと顔に手を伸ばせば、手に触れるのは新しい包帯。
おでこに手をのせると、熱は昨日より下がってきていた。
「・・・だれ・・・・・だ・・・・?」
聞きなれた声にはっとして手を除けると、うっすらとアイスブルーの瞳がひらいた。
「イザ・・・・・・ッ!」
あとはもう、言葉にならなかった。
自分でもよくわからない言葉をわめきながら、病人のイザークに飛びついた。
このまま、失ってしまうのかと思った。
いつまでも目を覚まさない貴方を。
よかった。
目をあけてくれて、よかった。
生きていてくれて、ありがとう。
「・・・・・・イザとは呼ぶな。」
こんな状況でもいつもと変わらないイザークの小言に、私は泣き笑いになった。
「はい、イザーク。あーん、して?」
「〜〜〜・・・。」
「ん?」
「何をしているんだ、キサマはっ!!」
私はおかゆ片手にイザークに食べさせてあげようと、うきうきはりきっているところだった。
すっかり意識が戻ったイザークは、その後驚くべき早さで回復した。
今は医務室から士官室へ移されたので二人きり。
療養のためと与えられた一人部屋は、きっとディアッカにもいまだかつてないほどの静養を与えているはずだ。
「ねぇ、イザーク。その傷、消えるんじゃない? 消さないの?」
顔の傷の包帯もすっかり取れたイザーク。
けれど痛々しいその傷跡は、顔にくっきり残されていた。
「消すつもりはない。ストライク。ヤツを討つまで。」
握りしめたイザークの拳が、決意の強さをうかがわせた。
―――言えなかった。
コックピットの中に、私の幼なじみがいると。
きっとアスランも、誰にも言えずにいる。
言ったところで、キラがストライクに乗っているのは事実だから。
キラは、イザークを殺そうとしたんだから。
やりきれなくて涙かこぼれた。
「おい、?!」
「ごめん、イザーク。なんでもない。」
「なんでもなくて泣くヤツがあるか!」
ベッドから起きだしてくるイザークをあわてて止めた。
「ごめんなさい! でも・・・・イザークは、生きててくれたから・・・・っ!」
こうして今、私のそばにイザークがいてくれる。
この幸せは奪われなかった。
今はそれを喜びたい。
―――キラのことを忘れて。
「。」
優しく呼ばれた名前に顔をあげる。
そのままベッドへと抱きよせられ、くちづける。
深いキスの中に、いつもと違うイザークを感じた。
「抱いても、いいか?」
ただ抱きしめるだけの意味じゃないのはわかった。
想いも通じ合っていて、しかも婚約者で、断りを入れる理由なんてないのに。
それでもイザークは、私の答えを待っていた。
「?」
イザークの首すじにウデを回して、今度は私からくちづけた。
「いいよ、イザーク。」
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【あとがき】
結局イザークはおかゆ、あのまま食べてくれたのかな?
きっとゆでだこになりながらも食べてくれてた事でしょう。