「アぁスラぁぁぁぁ〜〜ン!! キサマッ! 何をする?!」
「命令は撃破だぞ?!」
予想外の行動に、不意をつかれた形のイザークとディアッカ。
ところがアスランは冷静に答えた。

「このままガモフへ連行する。捕獲できるなら、その方がいい。」
アスランの苦しい胸のうちを理解しているのは、おそらく私ひとり。










〔 過去と違う未来 PHASE:10 〕










私もすぐにジンをイージスへ寄せた。
キラの悲痛な叫びが聞こえる。
「嫌だ! 僕はザフトの艦なんか行かないっ!」
「だまれキラ!・・・このまま来るんだ。でないと・・・。俺はお前を撃たなきゃならなくなるんだぞ?!」

  『そのときは、私が撃ちます。』

ラウに誓ったその言葉。
でも、撃てるわけがない。
だって、キラとアスランは無二の親友。
ずっと一緒に育ってきた、私の幼なじみたち。
その二人が、殺しあえるはずがない。

「“血のバレンタイン”で、俺もも母を失くした。・・・もうこれ以上は・・・。」
アスランの言葉に押し黙るキラ。

突然、イージスに攻撃が加えられた。
メビウス・ゼロ。
私たちザフトでも有名な“エンデュミオンの鷹”ムウ・ラ・フラガ。
さすがのアスランでもこれには耐え切れず、ストライクを放してモビルスーツに変形して応戦する。
自由になったキラのストライクは、足つきへと機体を寄せていく。

「キラ! だめ! 行かないでっ!」
か?! でも、僕は・・・・ッ」
懸命にジンをストライクへと寄せる。
左方向からは、イザークのデュエルが迫った。

キラが、ロックオンされる。
「終わりだな。」
イザークの声が聞こえた。

迷いもなく放たれるグレネードランチャーは、一直線にストライクへと伸びた。
爆音と同時に、爆炎につつまれるストライク。
けれどその爆炎の中から、ビーム砲が放たれた。
足つきを背にして、ランチャー・ストライカーに装備を換装したしたストライクが、そこにいた。
メタリックグレーから、再びトリコロールへと、機体の色を変えて。


完全に形勢は逆転した。
このまま戦えば、今度はこちらがパワー切れになる。
私たちは引くしかなかった。

「キラ。・・・どうして・・・?」
キラは、コーディネーター。
キラは、私たちの幼なじみ。
キラは、利用されていた。
キラがナチュラルの艦を背に、戦う理由がどこにあるの?



ガモフのロッカールームへ入ると、イザークがアスランの胸ぐらをつかんでいた。
「四機でかかったんだぞ?! こんな屈辱があるかっ! どういうつもりだ、アスラン!!」
「とんだ失態だよね。あんたの命令無視のおかげでさ。」
イザークとディアッカの言うことは、もっともだ。
二人にとってコックピットに乗っているのは、ナチュラルのパイロットで。
顔も知らない敵だと思えばこそ。

でも、私にもアスランにも、彼はよく知る幼なじみで。
コーディネーターの、キラ・ヤマトだと知ってる。
私たちが月に残してきた、大切な幼なじみの・・・・・。

「やめてください! イザークもディアッカも!」
ニコルが三人の間に割って入る。
「アスランを今ここで責めたって、何にもならないでしょう?!」

的を得たその言葉に、イザークは何も言い返せない。
そのままアスランをキッといちべつすると、部屋を飛びだしていった。
ディアッカが後を追いかける。
きっとイザークひとりを部屋に帰したら、彼らの部屋は悲惨な現状をみる。
残された私たちは、ただ下を見てうつむいていた。

「アスランとでかかったんだろ? どーしたんだよ?」
「アスランらしくないとは、僕も思います。」
終始足つきにかかっていたナスティとニコルも、アスランが命令違反を犯したことを知っている。
「命令違反で出撃の次はコレかよ。・・・お前、“赤”の自覚あるのか?」

「今は・・・・放っておいてもらいないか?」
アスランのあだで返すような言葉に、ムッとするナスティ。
私はニコルとナスティに、無言で首を振った。
二人はため息をついて、ロッカールームを出て行く。

「アスラン。キラは―――・・・。」
「間違えてるんだ! あいつは!」
それまでうつむいていたアスランが、二人きりになって初めて顔をあげた。


お願い。
自分だけが辛いなんて顔、しないで。




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