夜でも暑い、砂漠の風に吹かれる。
“地球”といったら、私はここしか知らない。
ここから見上げる宇宙は、ただの星空でしかなくて。
あの星々の中で、たくさんの想いが泣いてる。
私も、その想いすべて、宇宙へ残してきたままだ。
〔 過去と違う未来 PHASE:12 〕
自分が特殊部隊を希望したことを後悔したのは初めてだった。
ヘリオポリス崩壊の件を受けて、ラウには評議会よりの出頭命令が下った。
私には、潜入任務終了に伴ない、次の任務先への転属命令が出ていた。
イザークたちガモフには、引き続き足つき追撃の任が任された。
ラウと供に評議会への出頭を命じられたアスランと、転属になった私を乗せたヴェサリウスは、プラントへ戻った。
―――そして私はまた、砂漠にいる。
「何を見ているんだ?」
不意に話しかけられて振り向くと、そこには金髪の少女が立っていた。
「今日は星が綺麗に出ているな。」
屈託なく笑う彼女は、動きやすさ重視のラフな服装をしている。
「カガリ。」
答える私も、人のことは言えない。
ここは“明けの砂漠”の前線基地。
私も軍服ではなく、レジスタンスと同じ服なのだから。
「は私が来る前にもここにいたそうだな。・・・お兄さん、まだ見つからないのか?」
「うん。死んでないことを祈るよ。」
『戦争で別れ別れになった兄を探している。』
それを私の、レジスタンスへ参加した理由にしてある。
情報を得るためにここへ置いてほしいと頼むと、リーダーのザイーブはあっさり承諾してくれた。
明けの砂漠には各町からの有志が集まっていた。
兄らしき人物がいたと聞いた、と言って留守にしても怪しまれなかった。
「大丈夫だ。きっと見つかるよ。」
そう言ってカガリは、またいってしまった。
のん気と言うか、動じないと言うか・・・・。
私の今回の潜入目的は貴女なのだと知ったら、どんな顔をするだろう。
カガリ・ユラ・アスハ。
オーブの獅子、ウズミ・ナラ・アスハの子。
それを隠してここにいる彼女。
カガリの動向を探るのが、私の任務。
・・・・・・・・なのに。
一国の姫が、レジスタンスで何をするのかと思えば。
本当にレジスタンスの一員として行動するのみ。
政治的関わりは一切なくて、私はちょっと拍子抜けしていた。
潜入任務に私を指名して、策を練ったのはバルトフェルド隊長。
でも、まさか本当にレジスタンスに入るためだけにきたとは思わなかっただろう。
(そろそろ指名料とろうかな・・・?)
けれどひとつだけ、カガリがレジスタンスに参加したことで、困ったことが起きた。
金がレジスタンスに流れたのだ。
弾薬も武器も、怪しまれないほどに、だが、確実に増えた。
どうやらザイーブだけは、カガリの素性を知っているらしい。
武器を手にして、力を手にしたと勘違いした一部の者が、ザフトの補給部隊なんかを襲うようになった。
バルトフェルド隊長も、仕方なしにレジスタンスへ攻撃を加えなければならなかった。
レジスタンスの戦力では、正規軍の足元にも及ばないというのに。
バルトフェルド隊長は、ただ火の粉を振り払うだけの戦いしかしていなかった。
仕掛けている地雷の位置も、補給部隊の襲撃作戦も、すべて私の知るところ。
当然、報告されてしまっている。
もともと勝ち目のない戦い。
けれど彼らは、あらがうように戦いを挑み続けている。
力は弱い。
けど心は、私よりも強いのかもしれない。
どれだけ踏みにじられても、彼らは立ち上がった。
その報告をするたびに、隊長の顔は曇った。
「どうやらまた、戦わなくてはいけないらしいな。」
指揮官らしからぬ言葉に、ダコスタ副官はため息をつくしかない。
アルテミスが落ちたと、小型通信機に入電されたのは昨日のこと。
宇宙では、確実に時間が流れている。
またもや取り逃がしてしまった足つきとストライク。
キラはまだ、地球軍で戦いを続けている。
その報告にじれるべきなのか、喜ぶべきなのか。
今の私にはわからない。
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【あとがき】
読んでいて、「あれ?飛ばした?」と思われた方。
大丈夫です、あっています。
ちゃん、地球に降りちゃいました。
問題は宇宙に置き去りです。
そしてまたイザークがデテコナイ・・・・。
イザーク寄り夢小説です!(強調してみたり)