ラスティ・マッケンジー。
私がアカデミーで同室になったナスティ・マッケンジーの、双子の弟。
彼の性格の明るさから、すぐにうちとけた最初の仲間。
『俺たちの誕生日、また一緒に過ごそう?』
『もちろんだよ。』
アカデミー卒業の日。
抱きあって交わした約束が、無残に散っていく。
〔 過去と違う未来 PHASE:08 〕
イザークは言葉にならない声をあげて、格納庫をとび出していった。
ディアッカとニコルが、その後を追いかける。
私もそれに続こうとしたとき、アスランに呼びとめられた。
「。・・・・ちょっといいか?」
イザークも心配だったけど、ディアッカとニコルが一緒だ。
それに。
・・・・・・・アスランのこの表情は、何?
アスランは黙々とデータの吸い出しとOSの書き換えをした。
それでもときどき瞳が揺らいでいる。
「アスラン?」
声をかけると、工員の方のパソコンがピーッと音をたてた。
「すまない。つい、そちらまでいじってしまった。」
アスランは工員に声をかけると、キーボードを押しやり外へ出た。
「も。待たせてすまない。」
「あ・・・・うん。別に平気。」
どうしたの?アスラン。
ラスティを目の前で失って、辛くないわけないけど。
アスランのこの顔は、それともまた別の思いを伝えている。
「ヘリオポリスに潜入したとき、は・・・・。」
アスランが言いかけたとき、格納庫があわただしくなった。
「隊長機、帰投。被弾あり! 防御用ネット用意!」
張りあげられる整備員の声に、私もアスランも耳を疑った。
ラウが被弾?
いったい、何が起きてるの?
考える間も与えられず、私たちはブリーフィングのためブリッジへの集合を命じられていた。
「ミゲルがこれを持ち帰ってくれて助かったよ。おかげで私は笑い者にされずにすむ。」
私たちの見ているモニターの中に、奪取に失敗した最後の一機。
驚異的なスピードで動いていた。
あのOSでこんな動きができるはずない。
じゃあ、どうして・・・・・?
ふと、視界の端にアスランが映った。
全員がモニターを食い入るように見つめる中、ひとりうつむいて何かを考えている。
・・・・やっぱり変だよ、アスラン。
「ミゲル、オロールには、D装備の許可がでている。」
アデス艦長の言葉に、誰もが弾かれたようにラウを見た。
D装備は、要塞攻略戦用の最重装備にあたる。
これを使って攻撃すれば、コロニーが無事で済むはずない。
「捕獲できなければ、機体は戦艦もろとも破壊しろ。・・・あなどるなよ?」
「「はっ」」
二人の先輩は敬礼をすると、そのままブリッジを退出した。
「「隊長!」」
残された赤服の中から二人、ラウを呼びとめる者がいた。
アスランとナスティだった。
目を真っ赤に充血させて、拳を握りしめたナスティが、ラウに食ってかかる。
「オレを出撃させてくれ! ラスティの・・・・。弟の敵をとりたいっ!!」
悲鳴にも近いナスティの言葉に、誰もが目を伏せた。
けれどラウはナスティをいつものように見やり、冷静な言葉をかけた。
「君の気持ちはわかるがね、ナスティ。感情のままに行動することが得策だとは思わんよ。」
冷酷ともとれるその言葉に、ナスティは黙りこむ。
その間を受けて、一度はナスティと同時にラウに声をあげたアスランが続いた。
「隊長。自分を出撃させてください。」
今度は誰もが驚いた。
命令にアスランが意を唱えるなんて、考えもできない。
「君には出撃する機体がない。」
たいして驚いた様子もなく、ナスティ同様、ラウはアスランの意見も却下した。
ブリーフィングが終わり、私たちはアスランを残して、ヴェサリウスからガモフへ戻ってきていた。
ガモフのロッカールームで待機、が、ラウから与えられた命令だった。
いままでヴェサリウスにはアスラン、ラスティ、ミゲル先輩、オロール先輩が、パイロットとして搭乗していた。
ひとり残されたアスランは、何をしているんだろう。
ロッカールームで見られる外部モニターに、出撃していく二機のジンが映る。
ナスティはそれをニラみつけるように見ると、ソファに座りこんで頭をかかえた。
私はそのとなりに座って、ナスティを抱きしめた。
ラスティが死んだことを、実感できないままで。
「おい、何だよあれは。アスラン?!」
ディアッカの声に顔をあげると、アスランの奪取した機体がハッチから飛び出していった。
「命令違反ですよ、アスラン!」
「・・・・何を考えているんだか。」
みんなの声を聞きながら、格納庫でのアスランを思い出していた。
何か言いかけていたアスラン。
そのことと、命令違反の出撃は、つながりのあることだと思った。
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【あとがき】
あのブリーフィングに、本当はアスラン以外の赤服はいないけど。
別の艦に乗ってても、同じ隊ならいてしかるべきか、と。
ラスティは原作沿いだから・・とはいえ、楽しんで書いてきたキャラだけに。
・・・・・・・・・・・・・ツライ。