「チッ・・・・・。」
機体を起動させていたイザークが舌打ちした。
おそらくOSのことだろうとは予想がつく。
「細かい部分は帰投してからだな。・・・ディアッカ!」
イザークが通信回線をひらくと、モニターの一部にディアッカとニコルが映しだされた。
「OK、動ける。」
イザークの機体の前で、ディアッカの機体も立ちあがる。
「ニコル?」
私はいまだにキーボードをたたいているニコルへ声をかけた。
「待ってください。もう少し。」
役立たずなOSをいじくっているのだろうか。
こんなことでニコルが手間どるなんて、考えられない。
「OSはオマケみたいなものだよ。あとで直そう?」
私の言葉にニコルのせわしなく動いていた手が止まり、目の前のモニターに機体がまたひとつ立ちあがる。
〔 過去と違う未来 PHASE:07 〕
「アスランとラスティは?・・・・・遅いな。」
ディアッカがドッグの中を見やって、心配そうに言う。
五機あるはずのモビルスーツは、襲撃の騒動でそのうちの三機だけがドッグから出されていた。
残りの二機はまだドッグの中だと判断して、アスランとラスティの班がむかっていた。
「あの二人なら大丈夫さ。」
イザークが私を見て言った。
私も無言でうなずく。
二人のモニターには、私の姿が映っているはずだ。
「ともかくこの三機、先に持ち帰る。クルーゼ隊長にお渡しするまで壊すなよ。」
イザークの言葉に同調するように、奪取した機体は宇宙へ駆けた。
自分の仕事を終えた私。
ボーッとしながら奪取した機体データの吸い出し作業を続けるイザークを見ていた。
「しかし、とんでもないOSだな。こんなんで動かせると思ってるのか?」
どうやら作業はOSの書き換えに移っているらしかった。
私の脳裏には、イザークがあの機体を起動させたときの起動画面がはっきりと焼きついていた。
General
Unilateral
Neuro-Link
Dispersive
Automomic
Maneuver・・・・
「ガンダム・・・・。」
突然つぶやいた私に、イザークが怪訝な顔をした。
「さっきから何をボーっとしている! まだ戦闘中だぞ?!」
イザークのいうとおり。
ヘリオポリスからアスランとラスティはまだ戻ってきていないし。
オロール先輩被弾の知らせを受けて、ラウもシグーで出撃していったばかり。
ウワサではミゲル先輩もまた、機体を失ってエマージェンシーが出ているとか。
「それに、コイツの名称はGAT-X102“デュエル”だ。」
コックピットから飛び出しながら、イザークが言う。
もうOS書き換えちゃったの??
見ればディアッカとニコルもそれぞれ作業を終えて、コックピットをあとにするところだった。
あんなにナチュラルが苦労したと思われるOSも、優秀なコーディネーターにはものの三分。
「俺たち、あとは待機か?」
ディアッカが誰にともなく言ったとき、見慣れない機体が一機、着艦した。
「一機だと?」
となりでイザークが顔をしかめた。
言葉を発する前に私は、無重力を利用してコックピットまで飛ぶ。
ハッチが開いて顔を見せたのは、アスランだった。
「アスラン・・・・?」
初めて見るようなアスランの表情に、私は名前を呼ぶことしかできなかった。
どうしてラスティは、一緒じゃないの?
イザークの機体、デュエルの中で感じたあの冷たさを思い出す。
「貴様ひとりか?! ラスティはっ?!」
イザークが噛みつきそうな勢いで、コックピットに身体をよせる。
私たち二人の後ろで、ディアッカとニコルは息を殺していた。
「・・・・・ラスティは・・・・・。」
アスランはやっとのことでそれだけを口にすると、唇をキュッと噛みしめた。
「なっ・・・・んだと・・・・・・・?」
ギリッとイザークのグローブが音をたてた。
「ラスティ・・・・・・?」
私の声はかすれて、聞きとれないほどに小さかった。
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【あとがき】
ラスティ。・・・・・ラスティ。
原作沿い、というからにはそうなるんだけど。