「地球軍の新型機動兵器、あそこから運び出される前に奪取する。」
中立国のコロニーに、戦闘をしかける。
ラウの言葉は、予想を超えていた。
〔 過去と違う未来 PHASE:06 〕
「こんな大掛かりな作戦は初めてだぜ。わくわくするなっ?」
ローラシア級ガモフの艦内で、私は久々にナスティと同室をあてがわれ、その時間をすごしていた。
「ナスティはジンで出撃なんでしょ? 港の方の陽動作戦だって?」
「あぁ。戦艦をやる。」
モビルスーツと共に、ヘリオポリスで開発されている地球郡の新型艦。
どちらも正式に連合の手に渡る前に潰しておく。
ラウの判断は正しいと思う。
・・・相手が、中立国オーブのコロニーでなければ。
ヴェサリウスのアデス艦長は、最後まで評議会に伺いをたてるべきだと言っていた。
ラウはそれを、時間がないと却下した。
「は生身だろ? 気をつけろよ。」
「大丈夫。いつもだから。」
私に与えられたのは、アスランたちモビルスーツ強奪部隊の誘導。
先にコロニー内部へ侵入して、彼らの侵入口のセキュリティーを解除する。
そのまま工場区へむかって、合流。
強奪部隊へ加わることになっていた。
モビルスーツは全部で五機。
搭乗者にはアスラン・イザーク・ディアッカ・ニコル・ラスティが選ばれていた。
さすがに赤服の評価は高い。
「艦にはどーやって戻るんだよ。はおいてけぼりか?」
「乗りこめたら強奪した機体のどれかに同乗させてもらって、ダメならミゲル先輩たちのジンで拾ってもらえって。」
「拾って・・・・って。ネコじゃねーんだから。」
ナスティの言葉に、私は笑った。
数時間後には、戦いの中に身を置くことになる。
考えると不覚にも、身体が震えだしそうだった。
潜入が主だった活動の私は、今まで銃の飛び交う戦場に出たことはほとんどない。
強奪部隊に与えられた弾丸や爆薬の多さに、いったいどれだけの死者が出るのだろうと、
いまさらながら恐ろしく感じた。
コロニー内で、間違いなくモビルスーツも攻撃に加わる。
コロニー自体に何かしら損害が出ることも考えられた。
作戦開始までの時間が、長ければ長いほど、嫌なことばかり考えてしまいそうだった。
だからラウが、行動開始までガモフのナスティの部屋で待機、と言ってくれてホッとした。
アカデミー時代と変わらない時間の流れの中で、私の心は落ちついた。
作戦のため、時刻をぴったり合わせた時計が、私の行動開始時刻にせまっていた。
「もう行かなきゃ。」
「おう。がんばろーな。」
私たちはお互い抱き合って、健闘を祈った。
「「ザフトのために。」」
そして私たちはまた、笑った。
―――― ザフトのために。 ――――
誰が言い出した言葉なのかは知らない。
けれど私たち兵士の間では、頻繁に使われていた。
お守りのような、この言葉。
自分をふるい立たせるような、この言葉。
最初は冗談めいてマネしていただけの言葉は、いつのまにか、祈りの言葉に思えていた。
赤のパイロットスーツに着替えて、シャトルに乗りこもうとする。
視線を感じて顔をあげると、イザークの姿が近くにあった。
つけていたバイザーを上げて、「どうしたの?」と、声をかける。
「は、俺が連れて帰ってやる!・・・・だから、俺のそばにいろ。」
言い終えると、さっさときびすを返していなくなってしまう。
そんなイザークにくすりと笑いながら、私はまたバイザーを下ろした。
あんな態度でも、私を心配してくれているのが良くわかる。
一筋縄にはいかない表現のしかただけど、そんな不器用なイザークが好き。
「いつのまに、こんな好きになっちゃったんだろ。」
ヘリオポリスにむかうシャトルの中で、私はひとり、つぶやいた。
事はすべて、予定通りに運んでいた。
侵入口を確保して、指示されたところにタイマー式の爆弾を仕掛ける。
そして私は工場区へ走った。
ミゲル先輩のジンも加わって、連合との激しい撃ち合いがはじまった。
使い慣れていないマシンガンは、負荷がかかり重たく、なかなか狙いも定まらない。
「、こいっ!!」
ひとつの機体のコックピットで、イザークが叫んでいた。
さしのべられているイザークの手にむかって、私もその機体をめがけた。
飛びこんだコックピットの中は、ひんやりと冷たかった。
その冷たさに、ものすごく嫌な予感を感じていた。
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【あとがき】
戦闘シーン、ハショリすぎだよねー・・・。
白兵戦もMS戦も、専門知識ないから難しすぎます。
ただ書きたかったのは、デュエルのコックピットで手をさしのべてくれるイザーク。
デュエル乗りたいもん。