「任務について、報告は以上です。」
それまで黙って聞いていたラウが、笑った気がした。










〔 過去と違う未来 PHASE:05 〕










「やはりな。オーブも所詮、地球の一国家だった、というわけか。」
口元に怪しげな笑みを浮かべたまま、ラウが独り言のようにつぶやいた。
話がほかに移る前に、私はもうひとつの報告をしなければならない。
罰則は、覚悟のうえだった。

「それから、私の判断でひとり手を下しました。OS開発を担当している、ドクター・カトウです。」
息が切れるのは看取っていない。
けど、確実に動脈をやった。
シェルターから出ることも、出してもらうことも不可能なほど、ウイルスロックをかけた。
・・・・・今頃はもう、死んでいる。

「ほう?」
「死体はシFルターの中に入れました。シェルターはすでにパージしてあります。」
私はラウの顔も見ずに報告すると、頭を下げた。
「勝手な判断をして、申し訳ありません。」


だって、許せなかった。
正確な情報も与えず、自分たちの都合で、関係のない民間人を巻きこんだあの男を。


私の意に反して、ラウは笑いながら言った。
「上出来だ、。たとえ連合がモビルスーツの開発に成功しても、動かせなくば何にもならない。
 君の判断は、正しかったよ。」


――――違う。
私が殺したのは、もっと私的なものだ。
自分の運命や遺伝子。
私は流されて、けれどこの戦いに身を置くことを選んだ。
せめてもともと逃れることが出来る者がいるなら、巻きこみたくない。
それを巻きこもうとした彼を、許せなかっただけ。



ラウの言葉に、私はまた、黙って頭を下げた。
そのままヴェサリウスの隊長室を退出したとたん、私は誰かに飛びつかれていた。
私より背の高い、オレンジの髪の親友。
「ナスティ!」
「会いたかったぜー。元気かぁ? 。」

ナスティの後ろには、懐かしい顔が勢ぞろいしていた。
アスラン、ニコル、ディアッカ、イザーク。
ラスティとミゲル先輩は、肩を組みながらウシシと笑っていた。


「はいどぉぞ、ちゃん。」
レクルームへと場所を移して、ミゲル先輩が私に飲み物を差し出した。
「すいません! 自分でやりますから。」
立ち上がった私の目の前に、なおもズイっとコップを突き出して、
「遠慮すんな? 任務お疲れさん。」
笑って言われたら、断る方が失礼だと思った。
「ありがとうございます。」
素直に受け取った私に、ミゲル先輩はうんうんとうなずいた。

「あと、遅くなったけどこれね? やるよ。」
そう言われて渡された二枚の写真。
アカデミーで撮った日のものだった。
一枚は全員が一般の制服。
一枚は全員が赤の制服。
どことなく幼い顔の私たちと、ミゲル先輩が写っていた。

「写真といえば見たぜ! 。エザリア様プレゼンツ!」
ナスティが極上の笑顔で言った。

なんでっ?!
どうして流出?!

「なっ・・・・・?・・・イザぁくっっ?!」
恥ずかしくて恥ずかしくて、絶対流出元であるイザークを見た。
「俺じゃないっっ!!」
イザークも真っ赤になって答える。

イザークじゃないなら、ダレなのよっ?!

「あ、俺だ。。」
アスランが悪びれもせずに手をあげた。
「ラレールおじさんのところに送られてきたんだよ。それを拝借した。」
「ああああああ・・・・。あすらんっっ!!」

何てことを何てことを何てことを〜〜〜〜・・・!
私の知らない間に!!

はまだマシだろうがっ! 俺なんかコイツら全員からからかわれてっ!!」
――――確かに。
初出しされたときは、イザークひとりが格好のネタにされたんだろうな。
アスランとイザーク、昔以上に険悪になってないといいけど・・・・。

余計な心配をしていたら、アスランがいかにもさわやかに言った。
「いいじゃないか、。すごくかわいかったから、みんなにも見てもらいたかったんだ。」
・・・・・・アスラン?
しばらく会わないうちに、性格変わった?

「イザークが一緒ってーのが余計だけど、はかわいかったぜ?」
グレイトーってね、と言ったディアッカは、イザークにつかみかかられた。
あいかわらず、一言多いんだから。

「最高だよ、ちゃあん。」
「とっても良くお似合いでしたよ、。」
・・・・・・・・・。
ラスティとニコルにまで誉めてもらってるんだから、よしとしよう。




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【あとがき】
 仲間との久々の語らいは、ホッとするひととき。