「アスラン。貴様、今日は父親役だったな。」
イザークの、いつものようにとがった口調。
俺は知らないうちに、顔をしかめていた。
〔 あたたかな光、キミにあふれて。 〕
− 第五章 −
「そんなことを言うために追いかけてきたのか?」
「違うわ、ばかもの!」
「じゃあなんなんだ。」
少しうんざりしながら聞くが、イザークからはなかなか言葉が返ってこない。
一体何の用だとイザークを見ると、イザークは口の端を引きつらせて俺を見ている。
「イザーク?」
名前を呼ぶと、イザークは急に真面目な顔をした。
「本当なら! の父君に言うところだが、それはできないからな。
貴様がその代わりだと言うのなら、貴様に言っておく!」
まくしたてるように一気にしゃべりきったイザークは、まっすぐ俺を見ている。
イザークの表情が今にも殴りかかってきそうなのは、俺の気のせいなのか?
そんなことを思った俺に向かって、イザークは突然頭を下げた。
「・・・・・は?」
その行動が理解できなかった俺は、このとき、とんでもなくマヌケな声をあげていた。
「は、俺がかならず幸せにしてみせる。」
イザークが顔をあげても、俺はまだ驚きを隠せない表情のままだった。
「をもらうぞ。」
イザークの言葉に、俺は何も言えなかった。
イザークが、俺から目線を外して、空を仰いだ。
「貴様がを想っていることは知っている。とアスランの間に何があったのかも、俺は知っている。」
告げられた言葉に、俺は愕然としてイザークを見た。
まさか・・・・。
そんな、ばかな。
「アカデミーのトレルームで、俺がいることも知らずに大声を張り上げた貴様が悪い。」
追い討ちをかけられるように言われて、俺は身体全体にズシンと重たいものを感じた。
呆然として、その場に立ち尽くす。
「は、俺が好きじゃないのか?!」
「ごめん・・・・アスラン。」
「・・・じゃあ、なんであの日、俺と寝たんだ!」
吐き捨てるように俺は言った。
「・・・・・・・・ごめん、アスラン。アスランは好きだよ。でも、恋じゃない。・・・・あのときも。」
の言葉を聞いた俺は、ゆっくりとつかんでいた手を離した。
「・・・・・悪かった。」
小さく告げて、に背を向ける。
「本当にすまない。」
「アスラン。」
「本当はもう、あきらめていたんだ。出生確率がないと言われたときに、のことは。ただ・・・・。」
消えてしまいそうなほど、小さな声で、俺は言った。
「が、他の誰かと一緒になる覚悟が、まだなかった。」
他の誰か。
イザークと一緒になるを、見守る俺の覚悟。
あのときはなかった。
だが、今は?
いいや、それよりも。
イザークは、すべてを知っていて、を受け入れたのか・・・・?
葛藤を続ける俺に構わず、イザークが言った。
「だから、神に誓う前に貴様に誓ってやる。は、俺が幸せにする。かならずだ!」
イザークの言葉で、さっきまでの気持ちとは別に、身体が軽くなった。
イザークは、俺を責めたいわけじゃない。
俺の気持ちを知っているからこそ、告げておきたい言葉だったのだろう。
俺を、安心させるために。
本当に、わかりにくい奴だよ、お前は。
「―――わかった。」
少し自嘲気味に笑った俺に、イザークもいつものように笑っていた。
の今日の姿を見たときのわだかまりが、少しずつ消えていく。
が、イザークと一緒になる未来を、見守っていく覚悟。
悔しいけれど、それはイザークの言葉で確立した。
大丈夫だ。
が幸せになることが、俺の望みだ。
大丈夫だ。
イザークなら、任せられる。
俺はそのまま何も言わず、のいる部屋へと足を急がせた。
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【あとがき】
イザークの言葉に、やっと前へ踏み出せたアスラン。
イザーク、かっこよすぎ。
このアスランとイザークが書きたかったのです!こんな二人が好きー!
イザーク、ちゃんを幸せにしてね。