突然ざわめきが増した。
見れば、今日の主役のひとりであるイザークの登場だった。
相変わらずきっちりと揃えられている銀色の髪に、ハニーブラウンのフロックコート。
普段ならあまりこういった場は得意ではなく、顔をしかめていることが多いイザーク。
だが、今日ばかりは笑顔が見えた。
〔 あたたかな光、キミにあふれて。 〕
− 第四章 −
「イザークー! イザぁークぅー?・・・イザちゃまーっ!」
なかなか気づこうとしないイザークに業を煮やしたナスティが、いつもの調子で声をあげる。
と、イザークもいつもの形相でやって来る。
「だから! イザとは呼ぶなとあれほどっ!」
「まぁーまぁーまぁ。今日くらいは、な? イザーク。」
ディアッカが絶妙なタイミングで間に入り、イザークをなだめた。
まわりの目もあって、めずらしくそこでイザークが落ち着いた。
そのあとはお決まりのように祝福の言葉がかけられて、イザークもまんざらではなさそうだ。
俺は、和やかな空気を同じように感じながらも、心の奥底にはまだ、誤魔化しきれない想いを抱えていた。
互いに想い合い、未来をともにすることができたイザークと。
心から大切だと思える相手との結婚。
おそらく2人は、今日の日を待ちわびたことだろう。
俺だけがまだ、気持ちに決着をつけられていない。
のことは、すっかり諦められたと思っていたはずだったのに・・・・。
「――ラン。・・・おいっ、アスラン!」
イザークの怒鳴り声に、俺はハッと我に返った。
「なんだ? イザーク。」
なぜ怒鳴られているのか理解できないままで、イザークを見る。
ところが俺の言葉に、イザークの眉はますますつり上がるし、キラやナスティは大笑いを始めた。
「相変わらず。すっとぼけてんなぁ、アスラン!」
「あははははっ、あー・・・、はぁ・・・。苦しい・・・・。」
キラにいたっては笑いすぎて目に涙をためている。
なんなんだよ、一体。
「今呼ばれたろ? アスラン。そろそろ準備しろって。」
ディアッカの言葉にあたりをうかがうと、ウェディングスタッフの一人が、ハラハラとした様子で俺を見ていた。
どうやら俺に声をかけたものの、俺はまったく気づかないでいたらしい。
少し感傷に浸りすぎた。
「すまない。じゃあ、また。」
とたんに俺の頭に、先ほど別れたときの不安げにしていたが浮かんだ。
俺は挨拶もそこそこに、その場を離れた。
「おい、アスラン。」
ガーデンの雑踏を離れた俺に、聞きなれたイザークの声がかかった。
「なんだ、イザーク。」
あせる気持ちも手伝って、俺は少しうんざりしたように言葉を返した。
イザークは昔から、俺と顔を合わせるたび勝負事を吹っかけてきた。
俺より年上のクセにぎゃあぎゃあと騒ぐイザークが、俺は確かに苦手だった。
共に戦い、仲間を失い、同じ思いを重ねるようになって初めて、俺はイザークの本質を理解していった。
もちろん、キレやすい部分はいまだに健在だ。
それでもがイザークに惚れたことは、いまではどこか納得している部分が大きいのも事実だった。
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【あとがき】
ほんっとに、未練たらたらだな。アスラン。
そしてヒドイ言われようだ、イザーク。(泣)
イザークとが着ている衣装は、以前エザリア様が用意してくださったものです。