、入るよ。」
声がして入ってきたのは、俺たちの幼なじみのキラだった。










〔 あたたかな光、キミにあふれて。 〕
      − 第二章 −










見慣れないが、それでもキラがスーツを着こなしている姿は、俺たちがもうあの頃とは違うのだと思わせる。
俺にとったらもキラも、どこか頼りなげなところは変わっていないのだが。

『やっぱり俺がしっかりしないと。』
小さい頃から、この2人と話をするたびにそう思っていた。


「キラ! 地球からわざわざ来てくれてありがとう!」
が嬉しそうに声をあげた。
キラはの姿を、ポカンとながめていたと思ったら、
「うん。、とっても綺麗だね。」
にっこりと笑いながら、さらりと言った。

「・・・・。ありがとう。」
は少し照れくさそうに、頬を赤く染めた。

俺はずっこけてしまいそうな自分をぐっとこらえて、キラをちらりと見やった。
いつからそんな天然キラーになったんだよ、キラ。

「アスランもそう思うでしょ?」
キラはまるで何でもないことのように、あっさりと俺に返した。
「あ・・・あぁ。そうだな。」

俺はまだ、うまく言葉を返すことができなかった。
それどころかに、その姿の感想を伝えてもいない。

のその姿は、俺が願っても得ることのできなかったもの。
自分の意思とは関係ない、遺伝子に阻まれてしまった姿だった。

その姿をしたは、俺ではない相手と、今日式を挙げる。
とっくにあきらめたはずの想いが、ウエディングドレスを着たを前にわきあがる。


「失礼します。新婦さまの親族の方は、こちらですか?」
ノックがされて、ウエディングスタッフの一人が顔をのぞかせた。
「はい。俺です。」
「そろそろゲストの方々がお揃いですが・・・。」
「すいません。今行きます。」

スタッフに答えてからもう一度を見ると、不安げな顔をのぞかせていた。
俺はの不安に気づかぬフリで、明るく言った。
「じゃあ、俺は少し行ってくる。」

「アスラン。」
俺の名前を呼んだは、ますます心細いような顔を見せた。

「やっと緊張してきたのか? 大丈夫。すぐ戻るさ。」
「うん・・・・。」
「では、あとをお願いします。」
最後に介添えの女性に言葉をかけて、俺は部屋を出た。



ひとつ、ゆっくりため息をつく。
『今行く』と言ったのだから、すぐにでもガーデンに向かわなければならないとわかっている。
わかっているのに、足が動かない。

そうしてしばらく立ち尽くしていると、キラが部屋から出てきた。
「あれ? アスラン。」
ドアを完全に閉めてから、俺に声をかけてくる。
その声に後押しされるように、俺はようやくガーデンに歩き出した。

「大丈夫?」
キラの手が俺の肩にのせられて、キラの心配そうな声がした。

「何がだ?」
俺はキラを振り向くこともしなかった。
その答えにムッとしたのか、少し怒ったようなキラが俺の前に立ちはだかった。

「アスランがを好きだって、僕は知ってるからね。」
キラの言葉に、俺は肩の力が抜けていくのがわかった。
俺の表情からそれを読みとったらしいキラが、今度は笑って言った。

「僕にくらい、弱音はいていいよ。」
「俺が?!」
「そう。ムリしなくていいって、アスラン。」

めずらしく立場が逆転したことで、なんだかキラは嬉しそうだった。
俺はワザとらしく「うーん」と考えてから、キラの頭をパチンと小突いた。
「キラに心配してもらうほどじゃないさ。気持ちの整理はできてるよ。」

俺の答えにも、キラは不満そうに口をとがらせた。
「本当に?」
「あぁ。ただ・・・・。」

それっきり黙ってしまった俺を、キラがまた心配そうにのぞきこむ。
「ただ?」
「今日のがあまりにも綺麗なんだ。・・・・仕方ないだろう?」


昔から心を許していたキラにだったからこそ、言えた言葉だった。





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【あとがき】
 キラ、心の声。
 「ふーん。こんなアスラン、めったに見れないよね。ほらほら、言っちゃいなよ。
  どうせなら泣いてくれてもいいんだよ?トリィに内蔵した隠しカメラで撮っておくから。」
  ってな、ブラックキラくんが思い浮かんだりして。
  でもこのシリーズのキラくんはホワイトなので。これはなし。