ジェネシスの二射目が撃たれ、月の地球軍基地が壊滅した。
宙域の残存戦力も、そのほとんどが戦闘を放棄してた。
連合最後の戦艦が、同型艦の艦首砲により爆散した。
にはまた、わけがわからなかった。
手元のモニターでは、両艦とも連合軍所属とのデータになっていたのだ。
〔 オレンジへのあこがれ −種編・ACT.13− 〕
混乱して操作レバーから手を離してしまったの機体に、突如警告音が鳴った。
意識を戦闘に戻して、はギクリとその身体をこわばらせる。
「連合の・・・新型?!」
レイダーがただムダ弾を撃ち続け、猛然と突っ込んでくる。
宙域にはもう、帰る母艦もない。
おそらくパイロットは、命を捨てている。
は動けなかった。
そのモビルアーマーの動きが、まるで読めない。
「あっ・・・ああぁあっ・・・!!」
恐怖がを包み込む。
それはの身体を硬直させ、まるでを縛りつけているかのようだった。
「っ!」
「・・・ッ!」
悲鳴に近いを呼ぶ声が、通信機越しに聞こえる。
ズガンッ
鈍い音がして機体が揺れた。
「きゃあっ!!」
の固定されていた身体が左右に揺さぶられる。
おそるおそる目をあけるは、自分の機体にまるで損傷がないことを知る。
「な・・・んで・・・?」
「アルっ!!」
つぶやいたと、叫んだハイネの声が重なった。
プスプスと煙をあげるアルの機体。
それを確認したは、目を見開いた。
自分のせいで、アルが傷ついた。
と同時に、たちの近くでパッと閃光が飛んだ。
イザークがレイダーを撃沈したのだ。
「アルっ?!」
より早く、ハイネが自分の機体でアルの機体を支えていた。
「お前な、機体を盾にするよりシールドかかげろよ。」
あきれたようにハイネが言い、アルが苦痛に少し顔をゆがめて笑う。
「余裕がなくてさ。」
どうやら命に関わるケガは負っていないようだった。
「アルっ!なんで・・・っ」
アルの機体のモニターに、の顔が映しだされる。
「泣くなよー、。俺が死んじゃったみたいじゃん?」
「だって・・・っ、アルっ!」
の大きな瞳からは、涙があふれている。
アルは苦笑いした。
には笑ってほしい。
にはなにより、笑顔が似合う。
涙はもういらないんだ。
たとえそのとなりに立てるのが、自分でなくても。
ハイネがそのとなりにいようとも、の笑顔を見る権利は、俺にだってあるはずだから。
太陽と見まがうような閃光が、すべての機体に降り注ぐ。
「ジェネシスが・・・・。」
激しい閃光の中にも、崩れていく巨大兵器を見てとれた。
時間をおかずに、停戦を告げるアイリーン・カナーバ議員の声が宙域に流れる。
「終わったな。・・・一応。」
ハイネの声が聞こえた。
「うん。」
涙のあふれた顔のままで、が笑った。
アルも負傷した腕をかばいながら、モニターでそんな二人を見ていた。
泣いたり、笑ったり、忙しいヤツ。
けど、そんなでさえこの戦争の中に感情を殺されたことがあった。
仲間の死に、涙を流せなかった。
それを取り戻させたのは、まぎれもなくハイネ。
自分が尊敬して止まない、ハイネ・ヴェステンフルス。
「似合ってるよ、お前ら。」
やっぱり苦笑いになりながらもアルが言うと、がとたんに赤くなった。
そのとき。
ピ――――――――。
アルの機体に異変を告げる警告音が鳴った。
「「「 え? 」」」
それまで和やかな笑顔で会話をしていた三人の顔がこわばる。
「どうした!?今の音はなんだっ?!」
ハイネがアルに呼びかけると、アルは苦痛に顔をしかめて声を絞り出した。
「酸素、供給ポンプが・・・・やられていた・・・っ」
「えっ・・・・?」
呆然とするをよそに、ハイネがアルの機体の正面に回りこむ。
「なら脱出しろ!俺の機体に移ってこい!」
力強いハイネの言葉に、アルが弱々しく笑った。
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【あとがき】
原作エンドはキラとアスランにおまかせです。