ストライクダガーとの戦闘を繰り返し、ハイネはちらりと振り返る。
背後ではが、危なげなく敵を撃ち落している。
だが、そのコックピットの中で、心優しいは傷ついているに違いなかった。

「終わらせてやる。」
ハイネは固く心に決めた。
愛おしいが、もうこれ以上、傷つかなくていいように。










〔 オレンジへのあこがれ −種編・ACT.11− 〕










ボアズを墜とされたことで、プラント本土の守りが消えた。
ザフト全軍によりプラント守備隊が結束され、ヤキン・ドゥーエがその拠点となった。
やがてそのヤキンから、宙域のモビルスーツに打電された内容は。

「敵編隊のなかに、核ミサイル搭載を確認・・・?!」
の驚愕した声が、ハイネのコックピットに届いた。
「くそっ・・・あれか?!」
プラント寄りに隊を構えていたこともあり、ハイネは肉眼でもそれを確認した。

おびただしい数の光が、まっすぐにプラントへ進んでいる。
聞きなれた声が聞こえてきたのは、まさにそのときだった。

「あのミサイルを落とせぇっ!プラントをやらせるなァ!」
その声が合図となり、ハイネとアルがメビウスの編隊の中へ突っ込んでいく。

「イザーク!」
はイザークの機体へ身を寄せた。
連合の新型機、レイダーが執拗に攻撃を繰り出してくる。
イザークのデュエルは、その機動性の高さを生かして攻撃をかわしていた。

か!いけるか?!」
めったに聞くことのない、焦りを含んだイザークの声。
「うん。でも・・・っ」

他の機体をなぎ払ったカラミティが、こちらへ転進してくる。
トリッキーなこの2機を相手にするのは、いくらイザークでも難しいだろう。
の考えを察したイザークが、に罵声を浴びせた。
「早く行けっ!こんな新型の1機や2機、俺が抑えてやる。」

つながれた通信のモニターで、イザークがいつものように笑っていた。
人を見下すような笑い方が、どうしてイザークに限っては嫌味にならないのだろう。
は変わらぬ様子の同期に、笑みを漏らす。

「イザーク。・・・・じゃあ、あとで。絶対!」
「あぁ。」
力強く言葉を交わすと、はバーニアを加速してその場を離れた。


飛びこんでいく先に、数え切れないほどのメビウス。
そのどれもが搭載したミサイルに、ある特定のマークをつけている。
プラントの数をはるかに上回るそれは、すべて核ミサイルだった。
すでにハイネとアルにより墜とされているメビウスだったが、それでもまだ消えない。

彼らは、いったい自分たちをなんだと思っているんだ・・・?!

はビームライフルを撃ちながら問いかけた。
隊を組み進むメビウスは、1機被弾すれば誘爆を引き起こす。
それに巻き込まれないように、3機は一定の距離を保ち攻撃を仕掛ける。

当然、それでは防ぎきれない。
やがて攻撃の網をくぐり抜けた1機が、プラントを射程距離におさめる。
ゆっくりと放たれたその核ミサイルに、の目が釘付けとなった。

「プラント―――・・・!」
トリガーを握る手が、小刻みに震えた。
そのとき。

の背後から幾すじもの光が迫り、追い抜いていった。
それらは確実に核ミサイルを撃ち落した。
が振り向くよりも早く、その横を2つの機体が通り過ぎていく。

「ジャスティス・・・・。フリーダム?!」
青白い光がすべて消え失せてもなお、そのむこうにあるプラントは失われていなかった。
援軍とは言えない、この新たな勢力によって。


「地球軍は、ただちに攻撃を中止してください!」
三隻の戦艦が近づいてくるのと同時に、凛とした声が宙域に響き渡る。
にとっては、パーティーなどでたびたび顔を合わせた、仲の良い友人だった。
プラントの平和の象徴と称えられた、ラクス・クラインは。

「あなたがたは何を撃とうとしているのか、本当にお解かりですか?!」
ラクスの声。
それに何かを考えている余裕などなかった。
そうしている間にもなお、核ミサイルを搭載したメビウスが次々と射出される。

「とにかく行くぞ!迎撃する!」
ハイネが声を張りあげた。
アルとがそれに続いていく。
3人はプラントの前面に、身体を張って立ちはだかった。

「こんなの・・・・正気じゃない・・・ッ」
は歯を食いしばる。
それでも、ぽろぽろと涙があふれた。

自分たちは軍人だ。
討たれる理由も、覚悟もある。
けど、プラントにはそうじゃない人たちが、平和に、ただ暮らしている。
のような少女も、それよりももっと小さな子供も。

そんな人たちをも脅威と、討つというのか。連合は!

涙があふれたままで、それでもは核ミサイルを撃ち落していった。





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