朝からやけに視線を浴びる。
それを、わかっていてまったく気にしていないのが、ラスティとニコル。
迷惑だと、いつもより2倍増しで眉間にシワがよっているのがイザーク。
まったく気づいていないのが、アスラン。
すれ違う女の子に、さりげなくアピールしているのがディアッカ。
今日から制服どおりの“赤”を、軍服でも得たエリートパイロットとなった。
5人は与えられたばかりの軍服に着替え、彼らのお姫さまを迎えにきた。
〔 オレンジへのあこがれ −種編・ACT.1− 〕
「・・・・・どうしろっていうの?」
その頃、彼らのお姫さまこと・は、その軍服を前にして悩んでいた。
アカデミーの制服も赤を着用していたは、総合成績もトップ10を死守した。
軍服も、当然赤を支給されていた。
だが、問題はその制服のスタイルにあった。
アカデミーの制服は女でもズボンであったのに、軍服についてきたのは上着と同素材のミニスカート。
しかもご丁寧に、黒のガードパンツがついている。
「見せパン前提ってこと?!」
さすがに普段着はスカートが多いだが、こんなに短いものは着たことがない。
見せパンなど、もってのほかだ。
だが、これが正式に支給されてしまっている以上、あがいても仕方のないことだった。
「何考えてんのよ、総務部は!」
怒りの矛先は、当然支給先へ向かう。
宇宙配備となれば無重力。
CICとは異なり、駆け回ることの多いパイロット。
タイトスカートでないことはホッとしたが、これはこれでやりすぎじゃないの?!
というのが、正直な意見だった。
数分後。
部屋から渋々出てきたに、全員が呆気にとられた。
さらには、鼻血を噴いた者が、いたとかいないとか・・・・・。
プロムでは、の姿が誰よりも目を引いた。
会場唯一の軍服姿もさることながら、幼少の頃から社交界に慣れ親しんでいるその身のこなしの優雅さ。
さらにエスコートする男性陣も、全員が同じような立場で赤服だ。
目立たないわけがない。
今日を境にアカデミーを卒業し、入営を控える同期生たちの何人かは、そんなを目にして焦っていた。
今までにも何度かアタックを試みた者もいたが、核心に触れる前にことごとく阻止されている。
自称『守る会』のメンバーに。
まさに彼らは、のナイトだった。
今日もかならず誰かがの傍を離れず、周囲に目を配っている。
緑の軍服を着る彼らは、ため息と共にを諦めることしかできなかった。
そんな周囲の雑踏をよそに、の心中は別のことに揺れていた。
実は、配属先がまだ公表されていないのだ。
好成績を修めた者だけに与えられる、赤の軍服。
その者たちは、ザフトの部隊の中でも功績のよいところへ引っ張られていく。
赤服着用者が決定した時点でその協議に入るため、緑の者より遅く発表されることが常だった。
例年通り、今年の赤服着用者もまだ、配属先の通達を受けていない。
は、総合成績発表のときよりも自分が落ちついていないとわかっていた。
頭の中に描くのは、オレンジ。
オレンジの彼と出会って、彼と別れたあの日から、の目指すところはひとつだった。
彼の傍にいきたい。
そのためにこの赤を着た。
それが、彼のいる場所へいける近道だったから。
「赤服着用者、前へ。配属先が決定した。これより通達する。」
のとなりにいたニコルは、その瞬間、がピシリと固まったことを感じた。
「いきましょう、。」
今期アカデミー生最年少コンビは、手を取り合って前に進み出た。
ラスティはそんな2人にほほ笑ましさを覚えながら、のとなりに立った。
「・。君にはホーキンス隊への配属を命じる。」
「はい!」
アスラン、イザーク、ニコル、ディアッカ、ラスティがクルーゼ隊配属となった。
はひとり、ホーキンス隊配属となる。
彼らと別れてしまった不安は予想以上に大きかったが、の願いが叶った瞬間だった。
これで、あの人にまた逢える。
すぐにでも心は、飛んで行ってしまいそうだった。
そんなの様子を、守る会のメンバーたちは複雑な思いで見ていた。
もう、のとなりで彼女を守ることが出来ない。
は守られているだけの少女でなく、自分で力を持つ者であったが、彼らはいつもに寄り添っていた。
その役目が終わることへの、淋しさ。
そして、ホーキンス隊にいるであろう、オレンジの男への嫉妬。
そんなものが複雑に混ざり合う彼らであった。
意外にもそんな憂鬱から一番に抜け出したのは、ニコルだった。
「がんばりましょうね、。毎日だってメールしますからね。」
「私もメールするね。がんばろ、ニコル。」
の落ち着いた様子に、安堵の表情をうかべる彼らだった。
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【あとがき】
種編とかいいながら、まだアカデミーにいるという失態。
種編とかいいながら、ホーキンス隊が種原作に出ていないという失態。
・・・・ハイネ寄りだから(苦笑)