1999.10.23

     朝ちょっと遅くなって大分待たされたので、山鳥重の”ヒトはなぜことばをつかえるか”を再読した。この人は失語症の臨床をやっているので、その観点からである。失語症の観点から見ると、言語はまず比較的機械的な部分である、発語と聞き取りについての一連のメカニズムの部分と発語を統率し聞き取りを意味に投影するメカニズムがある。それぞれを考えれば失語症に4種類あることが分かる。これらのそれぞれのメカニズムは全体から部分へという原理で行われる。文章全体の把握から文脈、最後に単語の認識に至るが、この段階でまた元にフィードバックされる。話すときも同様で、まず表現したいことがあり、それに適した文章構造が浮かび単語が出てくる。複雑な構造になると、これらの過程は発語に至らずループを廻るが、これが思考である。それらの機能が更に高度になる所に前頭葉前部が絡んでいる。すなわち言語の社会的文脈である。

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