2016.0.2.22

アルパークの109シネマに中島みゆきの夜会vol.18.「橋の下のアルカディア」が来ていたので、どんなものか?と思い、観に行った。観客は少ない。僕と同じくらいのオジサンが多い。ちょっと音が大きいし、あまり良い音とは言えない。時々台詞があるが、殆どは歌である。まあ、ミュージカルと思えば良い。

場面は地下街で、中島みゆきの演じる水晶占い師と中村中の演じる立ち飲みバーの女給が階段を挟んで店を構えているが、客は居ない。やがて石田匠の演じるガードマンが階段から降りてきて、この地下街は使用停止して、放水路になる予定だから早く出て行ってくれ、というが、2人は何か忘れているものがあるから、と無視する。彼はこの3年間水晶占いの隣に収めてある誰かの位牌にお参りしているが、その意味は判らない。女給がガードマンに一目ぼれしたりしてドタバタしたあと、舞台は突然過去になり、ここが昔洪水に悩まされた河だったことが判る。人々は河の怒りを鎮めるために、若者の恋人(妻かもしれない)を生贄に差し出すように言う。若者は逆らえず、そうしてしまう。その恋人には可愛がっている猫が居て、一緒についてくると死んでしまうので、籠に閉じ込めて、彼女自身が橋の下で入水する。ここまでで、来歴が判る。つまり、その猫の生まれ変わりが女給であり、恋人の生まれ変わりが水晶占い師であり、若者の生まれ変わりがガードマンであった。

また、現在に戻って、ガードマンが暴漢に追われて地下街を逃げ惑うが、2人でうまく追い払う。その後、大雨の夜、地上に登る階段が閉じられてしまったことに気づく。女給は昔恋人(?)から多くの手紙を受け取っており、その中に何か脱出のヒントが隠されている。その辺はよく判らなかったが、ともかく、地上への獣道を探し出して、3人で開けてみると、現れたのは航空服を着た兵士であった。実は位牌というのは、戦争を忌避してここに逃げ込んで(多分)死亡した兵士であって、ガードマンは彼を知っていたのであろう。兵士は戦闘機に乗ってやってきた。兵士は去っていくのであるが、ガードマンは飛行機に乗って、一緒に逃げようという。女給(猫)は私は重すぎるから、占い師と2人だけで逃げてくれと、ゴミ籠の中に閉じこもってしまう。最終的にはガードマンがゴミ籠にロープをつけて飛行機で飛び立つ。

・・・飛行機が出てきたのは奇想天外で驚いた。そういえば、暴漢に襲われて額に包帯をしていたガードマンは血が染み出していてまるで日の丸の鉢巻をしているように見える。いったいこの中島みゆきという人はどういう思想の持ち主なんだろうと思った。社会の動きに翻弄され、理不尽にも命を絶たれた人達の怨念とでもいうべきものが表現されている。大学時代に寺山修司の天井桟敷や唐十郎の状況劇場・赤テントや土方巽の暗黒舞踏があった。どうもそれらの延長上にあるような気がする。昔の全共闘が比較的裕福になって、その情念を託す対象として中島みゆきを選んだのではないだろうか?しかし、中島みゆき自身は情念というよりは、その卓越した音楽性と作詞能力や演技力や構想力で成功していると思う。それにしても、今回共演の石田匠は素晴らしい歌手である。また中村中もなかなか熱演だった。WEBで調べてみたら、戸籍上は男性だそうで、それを公表して性同一障害に世間が注目する切っ掛けも作った人らしい。紅白にも出たらしい。知らなかった。ところで、中島みゆきはいつ聴いても素晴らしいと思うのだが、ちょっと敬遠している。ユーミンの方が気楽に聴ける。まあ、クラシックでいうとベートーヴェンとモーツァルトという感じである。

・・・もっと詳しい解説のページを見つけた。ご参考まで。
http://soiree.txt-nifty.com/blog/2014/11/vol18-b369.html< /A>

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